第6話 最初の目的
とりあえず、落ちているガラス片と飴玉を拾おうと地べたへ手を伸ばすと、ガラス片は浮かび上がり瓶の形へと戻った。
その中へと飴玉が一個ずつ入っていく。
これは……ベクーラガルルの魔法だろう。
思いっきり彼の手から謎の光出てるし。
「落ちた飴玉は食べない方がいい。バイ菌が付いてる」
「いやいや、動物とかが踏んだら怪我すると思って」
「ああ……それもそうだな」
ベクーラガルルと別れ、荷物を両手で抱き抱えて家へと戻る。
家の扉をノックすると、ゆっくり開いた。
ベクーラガルルのことは、家族には話せない。
話せばまた、呪いが発動する気がした。
なんだか、悪いことしてないのに悪いことしてる気分だ。
「帰ってきたか」
机の上に置いた紙袋の中身を、父が覗き込む。
「しかしまた量を多く買ってきたか……うーむ。腐る前に食べ切れはするが」
「いいじゃない♡ 今日は豪勢にいきましょ♡」
父はじっと俺の方を見てきて、悩ましそうに小さく唸った。
「マヴ。この町に好きな子でもいるのか?」
「いませんけど」
「そうか。この町に滞在し続けたいのか知らんが……買い物を人に任せるのはいい。ただし一緒に渡した小遣いは、手間賃としては多いぞ。あとでその辺を話した上で、しっかり教えてやろう」
お見通しだったのか。
ベクーラガルルのことは知らないみたいだけど、なんだか信頼できそうな父親だ。
暗殺業以外でも食っていけるのではなかろうか。
「それじゃあ料理するわね♡」
母によって荷物から取り出されたものは、塩、胡椒、白い脂の小瓶が2つずつと、あとは葉に包まれた肉だった。
それと、ベクーラガルルから貰ったナイフが取り出される。
「あら♡ この珍しいナイフ、マヴくん自分で買ったの?」
「父さんの言ったとおり買い物を人に任せてて、その人がくれたんです」
「そうなのね♡ 頂いたものは大事にするのよ♡」
母が食材を石窯の近くへ運んでいく。
「ふふ❤︎ オニクはアタシがぜーんぶ食べちゃうからね❤︎ まさかパパとお兄ちゃん、育ち盛りのアタシの前でオニクを食べるなんて情けないことしないよね❤︎」
「ハハ、肉ばかり食ってると痛風になるぞ? 父さんみたいにな……」
ホントに暗殺者なのかってくらい家族してんな。
そういやマヴがチャプター主人公たちと争うきっかけって、いろんな人を暗殺してきた両親がチャプター主人公によって殺されたから、なんだけど。
こんな雰囲気の家族壊されたらそりゃ、どんなに正当な理由があっても恨むわな。
よし決めた。
手始めにこの両親をチャプター主人公から殺されないようにするため、ことの発端となった暗殺の邪魔をする。
そうしたら万が一呪いへの対処ができなくても、この両親を守ることはできるかも。
既に手遅れでチャプター主人公から殺される未来が決まっていたとしても、やってみる価値はあるはずだ。
不安な気もするけど大丈夫だ、暗殺の仕事がなくてもこの家族はきっと生きていける。
「じゃ、そろそろ父さんは出かけてくる」
「行ってらっしゃい♡」
「パパ、急いで帰ってきてね❤︎」
早速、暗殺へと出掛けるようだ。
何としても阻止しなければ。
「父さん、俺はもう3歳です。暗殺のお手伝いをさせてください」
「はぁ〜? あんさつって何よお兄ちゃん❤︎ あいさつの間違いじゃないのお?」
煽る妹をよそに父と母は、こちらが青ざめるほど冷たい目線を俺へと向けていた。
俺はまた、下手なことを口走ってしまった訳だ……。
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