第2話 モブの俺 主人公に告白される

 突然だが、誰かに愛の告白をされたことはあるだろうか?


 ちなみに俺はない。いや、なかった……つい、数秒前までは。


 俺は今、学校1の美少女、川北かわきた莉愛りあに告白されている。




 遡ること4時間前。


「あの、佐藤君だよね」


 昼休み中。


 俺が圭介とどうでもいい話で盛り上がっていると、あの川北莉愛が話しかけてきた。


「はい、佐藤ですッ!」


 クラスの別の佐藤が話に割って入ってくる。この状況はどう見たってお前じゃないだろ。


「あ、ごめん!そっちの佐藤くんじゃなくて佐藤りょうくん!」


 このシーン、ついさっきも見た気が……デジャヴというやつか。


「はい……なんでしょうか」


 俺は萎縮しながら返事をする。


「あはは、敬語はやめてよ同い年なんだし!あの、放課後少し時間あるかな?」

「はい…」


 時間があるのは当然だが、わざわざ放課後俺に、なんの用だろうか…。


 ここで俺は、今朝のことを思い出す。


 まさかあの時・・・俺を呼んでいたのか…?


 となると、本当に掃除当番を任される可能性が高そうだな。


「よかったぁ。じゃあ、放課後またね!」




 そして放課後。


「私と付き合ってください!佐藤くん!」


 ・・・・・・・・。


 いや分からん分からん!!どういう話の流れだよ!!


 というか4時間前の回想必要だったか?


 自分でもこの話の流れについて理解できていない。


 あのあと、教室を出て、しばらく無言が続いた状態で歩き、誰もいない空き教室に入って、なにかの準備でもするのか?とか思っていたら、気づいたら告白されていた。


「あ、あの……本気ですか?俺と付き合いたいって」


 否!絶対におかしい!


 あり得ない!


「もちろんです!……ダメ…ですか?」

「うん、いや。……というかなんで今は敬語なんですか?」

「さっきは……みんなの前だったので……つい」

「かっこつけたと……」

「ち、違います!!今は、私の目の前に好きな人しかいないので…だから…緊張してて…ただ、それだけです…」


 川北は顔を赤くしながらそう答える。


 クソっ……可愛い……。


「なるほど…」


 俺は先ほどから頭をフル回転させることなく、一つ考えていることがあった。


 これはもしやウソ告なのではと……。


 この結論に至るまでに1秒もかからなかった。


 普通ならこの考えは失礼そのものに値するが、今回に至っては正常な判断だと思う。


 この俺に、あの川北莉愛が告白してくるなんて、宝くじ7億円が当選するよりも確率が低いといっても過言ではない。


 ひとまず今はこの告白に男としてガツンと答えよう。


 ウソ告をされる方は傷つくんだ。


 もちろんフッてやる。


 ウソ告白をしたこと……後悔させてやる


 俺はこの時、久しぶりにモブらしくないことをしようとしていた。


 モブならばここは告白をOKするところだろう。


 もしもフれば、学校1の美少女をフッた男として悪目立ちするし、OKをしても、悪目立ちすることになる。


 だからと言って、選ばないわけにはいかないこの状況。正に究極の二択。


 だったら俺は……


「よろしくお願いします」


 俺は気付けば、思っていることとは正反対のことを口にしていた。

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