第五話
「おお。お?」
ウキウキしながら店内を巡っていたが、なにやら、数字が書かれた札がずらりと並んでいる。
『千円と千円で二千円。...それはいわば、なんとでも交換できるチケットのようなものだよ』
頭の中で、先ほどの神様の言葉がぼんやりと再生される。
「チケット...つまり、ここにかかれている数字の合計が2000になるようにしか、買えないと言うことか...?」
手元の、『1000』と書かれた紙を眺めながら、私は店内を巡った。
「んん...やはり、コンビニ弁当は必食モノか?色々あるな。ハンバーグ、唐揚げ、豚のしょうが焼き...でも、どんなにたくさん食べたくても三つまでが関の山...しかしこれからも京都を巡らねば...」
迷いに迷い、結局、1つだけ選んでレジに運んだ。
ハンバーグ弁当だ。
「お会計、598円でーす」
ええっと。これで、どうすればよいのか。
「あっ、現金ッスか?貰いますよ」
目の前の若い男性はそう言って、私の1000円を受け取った。そして、なにやらそれを機械に入れながら、こう聞いてくる。
「あっ、暖めます?」
あたため...暖炉にくべるということだろうか?いや。
『羊さんのお弁当、好きだったんだけどな』
『ええ。温めるのがすこし大変ですが』
『あっ!もしかして、電子レンジ知らない?』
『ええ。』
『だったら、俺たちの思い出、共有しとくよ。あのね、電子レンジっていうのは...』
そうか。あの、箱が多分、電子レンジなのだろう。
「お、お願いします」
「はぁい。」
電子レンジの温めは実に早い。外に出ると迷っていた時間が長すぎたようで、もうすっかり雲が流れ去って晴れになり、太陽も昇っていた。
「こっちの天気は、無秩序に変わるわけではないはずだ。さて、今は...」
周囲を見渡し、大時計に目をつける。
「惑星時計と同じ読み方なら、今は9時。さて、どうしたものか」
その辺りに座り、ハンバーグ弁当に着手する。
「おっ、美味しい...!思い出で共有されてきた食べ物と比べて、はっきりと実感のある味だ!!」
なにやら、色々と視線が痛いような...わからない。いったい何が原因だ?
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