暇つぶ詩

朝原シュン

よだかの月

あれが宙を飛ぶんなら

あれが星になるんなら

光を僕に射してくれ

ぼんやりとした剣を刺してくれ


吼える。

月に向かってただ吼える。

怯える。

月に負けるからただ吼える。

やがて吼えるのを辞めた途端、

僕の狼が吼え始める。

今は無理だがやがて喰らうと言う為に。

僕もあれになりたい、

今、断崖絶壁から身を出し月を喰らう狼のように。


見てるんだろう。

弱い僕をただ見てるんだろう。

白い世界だとよく分かる。

黒い僕を覗いてる。

許してくれと願っても

何も言わず見続ける。


お祭り

カンカンカンと鉦の音。

トテトテトテと歩く音。

付いて行ったら林檎飴。


。がないと心が騒ぐ。

。がないとざわざわする。

。がないのはみすぼらしい。


後悔は刹那の如く付き纏う。

もしもが遠くで嘲笑う。

消え去る為に頑張るが、悉く空振っていく。

過去は消えないと誰かが諭す。

涙の色は決して見せぬ。

そう思って心を穿つ。

あの時、どうすれば良かったのだ。

貴方に何を言えば良かった。

ただ、子供が独り立ちの日になけなしの金を捩じ込むように、

言葉を言えば良かったのか。

僕の満ち満ちた弱さを思いっきり見せびらかせば良かったのか。

あの日以来、胸に石ができた。

もう二度と壊せぬ石ができた。

その石が貴方との思い出を閉じ込める。

貴方に会いたいと言った。

僕はそりゃ無理か、とも言った。

後悔は次々増える。

だが時が次々奪う。

だが貴方への後悔だけ失せない。

もう何年も前の事なのに。


オリオン

僕は行くんだ

ぐっと手を伸ばしても届かないオリオン座へ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

暇つぶ詩 朝原シュン @asaharasyunn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る