第40話
『一応言っとくが、下であった転移使いと大男。あいつら普通に強かったからな』
移動の最中にアオマが話しだす。
『極論、人間を倒す呪因ってのはナイフ1本分の威力があれば十分なんだ。後はいかに上手く、スキ無くそれを当てるか。そういう意味ではあの転移呪因の使い手は理にかなっていた』
「でも、割とあっさりやっつけちゃったじゃないですか。それだけ自分が凄いって言いたいんですか?」
『あっさり倒したように見えたのならば、それは運が良かったからだ。初手であの大男を転移させてくれたおかけで転移呪因の可能性が考えられた。アレが無ければこっちの被害はもっと大きかった』
「実際、大男が暴れてその後ろからナイフを転移呪因で飛ばされていたら、ただじゃすまなかったでしょうね」
アオマの解説にチャチャをいれる双羽と納得する瞳。
『何が言いてぇかって言うと、この先にはあのレベルかそれより上の奴が待ちうけているって事だ』
先頭で階段を登りきる手前でアオマが叫ぶ。
『来るぞ!』
巨大な剣圧がアオマのいた場所を吹き飛ばす。
剣圧を放ったのは剣と右腕が一体化した男によるものだった。
男が2撃目を放とうとする直前に庸助が斬りかかる。
よく見れば右腕だけでなく、右半身が剣に侵食されている。
「なんかヤバそうな奴だな」
感想を口にする庸助。
『別のがくるぞ!』
アオマが言うと別の圧が周囲をなぎ倒す。
『あの女か』
アオマの視線の先に居る顔の右半分を仮面で隠した女の手には鞭が握られていた。
『達人の使う鞭は音速の域に達すると言うが、呪因絡みとなればなおさらだな』
双羽がなにか言おうとしたのを察し、釘を刺すように敵がどれほど危険かを語るアオマ。
直後、無数の氷虫を従えた縁が女に仕掛ける。
氷傀儡を操る際に用いる氷の糸で女を拘束する。
反対側から迫る牙の集団を英司は壁でさえぎり、光二と里穂が迎撃する。
「3階にも多くの局員が居るのに……」
状況に不安げな瞳。
1階、2階に突入したときとはあきらかに敵の圧が違う。
「大樹……」
「俺を置いて逃げろとか言わんでくださいよ。陣さん」
支部長室では脇坂と牙の男が対峙していた。
周囲には牙らしき者たちと管理局員が数名倒れていた。
県北支部長
「噂通りの実力だな、《脇坂
「半分ぐらいは奏美ちゃんがやっつけてくれたんだけどね。おかげでオヂさん、体力温存できちゃったよ」
お茶目な口調とは裏腹に、牙の男からは絶対に目線をはずさない脇坂。
「ふん、面白い男だ」
男の名は
骸は両腕から牙とも骨ともとれる物体を生やして脇坂に襲いかかる。
脇坂は軽くステップを踏むと高速で骸の右側に回り込み左ストレートを脇腹に打ちこむ。
が、その脇腹から腕から生えているのと同じような物体が数本伸びて、その部位をガードする。
それを見てもひるまず打ちこむ脇坂。
骨のような物は四散し拳が脇腹にめり込む。
「くくっ、刻因拳の前に防御は無駄か」
男はこうなる事がわかっているかのような態度をとる。
なんとも不気味な相手だ。
これは脇坂のこの男に対する感想のまとめだった。
身体から出す骨状の物体もそうだが今の攻防もワザと刻因拳を受けたように思えた。
愛用のサングラスをとる脇坂を見て骸は歓喜の声をあげる。
「嬉しいな、それがお前の本気スイッチなんだろ?さぁ、全力で殺し合おう!!」
なんともヤバい奴に絡まれたもんだな。
ため息をつきたくなるのをこらえる脇坂だった。
瞳と双葉が対峙していたのは突入前に遭遇した大男よりもさらに巨体の男だった。
両目を包帯でグルグル巻にしており、どうやら嗅覚だけで敵の位置や動きを感知しているようだ。
武器は右手に持った棍棒1つ。
パワーはありそうだが動きは
「せぇい!」
という掛け声とともに双羽は錫杖から衝撃波を発し、巨体の男に食らわせる。
まともに衝撃波を食らう男。
しかし、若干ひるみはしたものの、ユックリとした歩みで双羽に接近してくる。
「わわわわわっ、何ですかこれ〜。ふっ飛ばすどころか足止めにもならないなんて!」
取り乱す双羽。
「受けたそばからダメージが回復している」
驚きながらも瞳が解説する。
「くぉのおおおぉ!」
「待って、双羽!」
双羽は波動の出力を上げて対抗しようとするが瞳がそれを止める。
「アイツ、今アンタの波動を吸収していた」
エッ?!と驚く双羽。
男は上半身の服を破り捨て、その身体をあらわにする。
普段の双羽なら面白リアクションの1つもとるのだが、その姿を見て絶句する。
腹部にもう1つ、大きな口がありそれが波動を飲み込んでいるのだ。
アオマの進行先。
そこには黒が渦巻いていた。
闇ともペンキの黒ともとれる「黒」がそこにはあった。
『何者だ、名前ぐらい名乗れよ』
「
十魔がそう言うとアオマの周辺にいくつもの黒い渦が出現する。
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