第37話
無力化した敵を護送するための県北支部の車両が到着した。
「どうする?あいつらこのまま行っちまうぜ」
「かまわねぇよ、県北支部ごと皆殺しにすりゃあいい」
一部始終を見ていた牙らしき男が2人、物騒な会話をしていた。
その場を離れようとする牙の男2人に斬りかかる人影があった。
2人は最初、最小限の動作で避けようとしていたが何かに気づき、大きく回避する。
「テメェ等のターンは永遠にこねぇよ。ここで終わりだ」
威勢良くあらわれたのは
彼の斬撃は軌跡を残し、それが広範囲に広がる。
もしギリギリで初撃をかわしていたらこの攻撃にうけていた。
「県北のエースのご登場か」
「前菜には丁度いいか」
2人組の1人は中肉中背のこれといった特徴のない男。
もう1人は身長は同じくらいなのだが痩せこけており、目にクマのある不健康そうな見た目だ。
「手を出すなよ
中肉中背の男が言うと死季と呼ばれた痩せこけた男はああ、とだけ言う。
淳は左手に日本刀を持ち右手はフリーの状態。
一方、対峙する男は今のところ素手のようだ。
向かっていく淳に対し動かない男の周囲を黒いモノが囲む。
「影?いや、闇そのものか」
そう言ってまだ距離のある段階で刀を振るうと銀色の軌跡が残り、それが無数の矢となって放たれる。
男の闇が伸びて銀色の矢を迎撃するのを確認すると、淳は拳を打ち出す。
拳の前の空間が歪み、それが放射線状に広がっていく。
それを見た闇使いの男はまずい、と一言だけ言うと闇に包まれ姿を消す。
「あの闇は転移の入り口にもなるのか?!」
周囲の気配を探るが、闇使いの気配は無い。
「無駄だ、アイツはもうここには居ない。そして俺もな」
そう言うと痩せこけた男は自分の影にズブズブと沈んていく。
「しまった、逃げられたか」
「人聞きの悪いことを言うな。俺達が受けたノルマはあの小僧の始末だ。お前と戦う事じゃない」
声だけ残して痩せこけた男は消える。
淳はあわてて通信機を取り出し蒼馬と行動をともにしている瞳に連絡をとる。
「すまん、逃げられた。敵の1人は闇を使う。その闇を使って空間転移ができるみたいだ。それと、やはり奴らのターゲットに深崎 蒼馬が入っているようだ。気をつけろ」
「了解です。引き続き彼の護衛を行います」
通信に出た瞳とのやり取りを終え、淳も県北支部に向かう。
「逃げられちゃったね」
淳に近づいてくる女性が言う。
「挑発すれば食らいついてくると思ったんだが。案外、冷静だったな」
女性の名は
「急いで追うぞ、あいつら県北支部を襲うつもりだ」
2人は停めてあった軽乗用車に乗りこみ県北支部に向かう。
「お前がひくとは珍しいな」
「アレはメインディッシュだ。ついででつまみ食いする様な相手じゃねぇ」
戦場から離れた場所で死季の問にもう1人の牙の男、
「まぁ、戦えばタダでは済まないのは確かだ。ノルマを優先するのは賛成だ」
空き地での戦闘終了後、蒼馬は自分が狙われている可能性があると瞳に告げられて一度県北支部に向かうことになった。
「捕らえた牙の下っ端さんが蒼馬さんの事、調べていたみたいなんですよ」
車中で双羽は蒼馬が狙われている可能性の根拠を話す。
『御堂の恨みを勝ったか』
アオマがポツリと呟く。
一方、蒼馬は紅音の変化が気になっていた。
アオマはそれをかつて紅音と契約していたマスターの魂が影響しているのでは、という自分の考えを蒼馬に伝えていた。
紅音の前のマスターとはどんな人物だったのだろうか。
黒川の説明で名前や素性は知っている。
しかし、どんな人間だったのかは不明で今も、今後も紅音の中に在り続けるのならば気になるところだ。
ちなみに紅音はアイカとイヅミのそばにいたいという事で、彼女たちと共に別の車両に乗っている。
紅音が自分から蒼馬と別行動をとるのは非常に珍しい事で、その違和感に瞳と双羽も気づいていた。
「え、あれって?!」
急に大声を出して驚く双羽。
その声に反応して双羽の視線の先を追う蒼馬。
「県北支部が燃えている?!」
視界に入ってきた県北支部から火の手があがっていたのを目視し、蒼馬も声をあげる。
『上から来るぞ!』
アオマが叫んだ直後、車両が輪切りにされる。
車両に乗っていたのは蒼馬、瞳、双羽、それに運転をしていた男性局員の4名。
全員とりあえず無事に脱出していたが、進行方向に1人、輪切りにされた車両のそばに1人牙らしき男達を確認できた。
蒼馬達を襲ったのは身長2m近い大柄な男で右手に自分の背丈より長い、本来なら両手で持つようなグレートソードを持ち、左手は腕から肩まで鉄甲に覆われている。
一方、進行方向で待ち伏せしていた男は身長160cm程度と小柄でなんとも対象的なコンビだ。
「出歩いてたネズミが戻ってきたか」
小柄な男が言うと、
「ハッハァ、管理局員は皆殺しだァ!」
大男が
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