第5話 束縛
「んぅ...貴様何を」
これほどのことをされても起きなかったハナクソ狼が、ようやく起きた。
「ふはは...あっはははははは!!ようやく起きたかこの、寝坊助!」
「貴様っ、俺の尻に...」
「もう遅い。既に注ぎ込み終わった。お前は怪物化した後にこの街を滅ぼす」
「何!?」
「掛かったな、ばかめ。すでに、俺の体液がお前の尻を通って、全身を巡っている。お前は終わり...」
「やはりそういう事か。かかったなばかめ」
「何!??」
!!!
「クソッ、また魔力制限と攻撃力制限が...まさか!」
「そのまさかだ。」
振り替えって風呂の扉の方を見ると、驚いた。ハナクソ狼が全裸で風呂場から出てきやがった!
「そう。布団で寝ていたそれは分身だ。やれやれ、君が冷静さを失っていて助かった。看破されるのではないかと焦ったよ」
「これが分身!?実態を伴う分身としては、類を見ないほどの正確さだぞ。あり得ん!」
「言っただろ?俺は只者じゃないと。お前ももうわかっているとは思うが、最初に風呂に入った瞬間に分身し、本体は透明になって風呂の天井に潜伏していた」
「天井...ということは貴様まさか!」
「そうそのまさかだよ。お前が泣いて独り言ってるのも聞いたよ。城でなんかあって出てきたんだな?ほぼ見立て通りだ」
「そっ、そんなことより!魔力が切れていた筈だろう?それはどうした!?」
「ああ、それはな。そういうフリだ。方向音痴になったところから仕込んだ」
「てめぇ、謀ったな...なんのためにこんなこと」
「欲しかったんだよ、おまえの精液が。しかも、新鮮なやつ。ついでに、手口の確認もしたかった。一石二鳥だな」
「なっ...」
見てみれば、ハナクソ狼の分身は煙を立てながら萎んで行き、小さな袋になってしまった。その袋の中には、先程出した精液が、たっぷりと入っている。
「威勢が良くて助かるよ。その方が、俺にとっちゃ都合がいい」
クイッ、と指を動かすとその袋は浮き上がり、奴の手元に飛んでいく。奴はその袋を、分厚い革袋に大事そうに仕舞った。
「とても、普通の精液とは思えないな。尋常じゃない魔力量だ。ま、それはそれとして...お前が城を出た理由が聞きたい。魔獣も家畜も無差別に襲って怪物化させ、計画性もなく村を襲った。城のボンボンであるはずのお前が...何故、そうなるに至ったのか。俺に教えろ」
「誰がお前なんかに」
「今、お前が目の前にしているのは、勇者候補...いや。」
奴は、剣を構え、まだ汁が垂れる俺様の股間に一度それを向け、それから、胸に向け剣を構える。
「勇者ロウだ。さあ答えろ、分かっているはずだ。俺と、お前には決定的な力の差がある。自覚しているはずだ」
「ちっ...。わかったよ。答える答える。」
「素直でよろしい」
「いちいち一言多いんだよ」
奴は剣をしまい、分身に着せていた服を着始める。そこは魔法で作らないあたり、なんだかケチだ。
「お前もさっさと下着を着ろ。そのブツなんぞ、拝みたくもない」
「拝ませるためにあるんじゃねえよ。ふざけたこと言うのも大概にしろよ」
生意気なやつだ。方向音痴も、唯一見せた弱みも、嘘だったのか?嫌味にも程がある。嘘...嘘か。
「嘘...」
「何だ?ごにょごにょと」
「なんでもねぇよ。それよりお前、読心術とか使わないのかよ。どうせできるんだろ」
「読心術は対抗者の閉心によって防がれる。魔力の無駄遣いだ。それに、読心術で心を読み合うのは疑心暗鬼に繋がり、お前が本当に心を閉ざしかねない。別に良心とかじゃなく後々面倒だから」
「本気で俺様と旅をするつもりなのか」
「ああ。この世界に安寧をもたらすその時まではな」
「ちっ。...わかったよ。お前、『愛の束縛(ラヴバインド)』って魔法、知ってるか」
「知らないな」
「そうか。そうだろうな。これは、魔族に伝わる古い魔法。俺様を苦しめた魔法...地獄に落とした魔法だ」
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