第四幕 ラジオは好きですか?
校内放送が流れ、放送委員会の女子が挨拶をしてラジオが始まる。
「学園の皆さん、こんにちは! 皆様のアイドルこと咲で~す。趣味は一日一善ではなく一日一回はアイアンクローをすることです❤」
「(嫌なアイドルだ!)」
「はろはろ! こんな姉をもってしまった妹こと未久で~す。趣味はきわどいラインの噂を流すことです❤」
「(嫌な姉妹だ!)」
この放送を務めるのがこの学園のアイドル姉妹(自称)と、放送委員会が給食時間に放送をしている。コーナーの中では近々開催される学園祭の紹介がされる。
「今月の各週の金曜日には放送だけではなく、皆様の教室にあるテレビも使用して映像でお届けすることになっておりますので見たい方はテレビの電源をONにしてお待ち下さい」
校内放送で説明が終わると、各教室はテレビの電源をONにする。
「今回もスペシャルということで各学年のクラスの誰かをゲストにお呼びして放送させていただきます。今回はこの方々です。」
各学年、一年生、二年生、三年生と順番にゲストとして呼ばれている(拉致られている)。前回は一年生がゲストだった為、今回は二年生が拉致られる番である。
放送委員会が今回のゲストにカメラを向ける。
「どもども! 皆様のアイドルこと……」
ガシッ
「マネしちゃ、嫌よ❤」
そう言い放ち、鈍い音が聞こえたと同時にアイドル(自称)の手が恭介のこめかみをつかんでいた。
「すんません……手を離していただけると嬉しいです」
次は無いと釘を刺されながら解放されたアホ毛が自己紹介をする。
「改めて、この中に宇宙人、未来人、超能力者が…… えっ、それ以上言ったらダメ? とっ、毎回こんな感じに止められる、恭介です」
「(そりゃ、大人の事情だけでは解決できないでしょうからね……)」
「えっと……なぜか教室で弁当を食べようとしたら、強制的に拉致られた悠斗です」
前回の放送と同様に放送はスタートされた。
「今回はいつものコーナーを一つと学園祭の紹介をしていきたいと思います。それでは、コーナーの紹介をします」
① お悩み相談
② 学園祭のみどころ
③ 学園祭の醍醐味といえば?
「この順番でお贈りしていきます」
「まずはいつもの『①お悩み相談』からいきますね。ペンネーム:初音ミ○たんは俺の嫁さんからの相談です。はい、まずは人生やり直しましょうね❤。次の相談です」
「ペンネームで決めつけないで、相談に乗ってあげて!」
僕は思わず突っ込んでしまった。アイドル(自称)の妹は不満そうに、相談を読み上げる。
「仕方ないですねぇ……、ペンネーム:初音(略)さんの相談は『気になる子がいるのですが仲良くなるにはどうすればいいですか?』とのことです」
「これは、ちゃんと考えるべきだな……」
珍しく恭介が真面目に考えている。
「そ、そうだな。ほら、そこのアイドル(自称)達も考えましょうよ」
放送委員会は仕事をしているのだろうか?
「でっ、相談だが……、悠斗よ……」
「ど、どうした?」
「ミ○たんは俺の嫁ではないか?」
「お前は何を考えていたんだ!」
「そうだな……ミ○たんはみんなのアイドルだな!」
親指を立てて俺に向けて『グッ』をしてた。
「(お前は、良い笑顔をしているよ……)」
「恭介よ……話し合う所はそこじゃないからな……」
「はい、『アホ毛』はさておき、話を戻しましょうか」
「(あなたも十分ふざけていたと思いますけど)」
今度は姉が進行を進める。
「(僕らは拉致られたけどゲストですよね? 扱いがいいとは思えませんな)」
「気になる子ですか……、どうしましょうかね? 簡単にその子の趣味を調べて話しかけるというのはどうでしょうか?」
「いやいや、それは調べるまでが大変でしょ。そこまで何を行動するかじゃないの?」
「よし、こうしよう!」
恭介が何か閃いたのか挙手し案を述べる。
恭介案
①下駄箱で張り込み
②その子を追跡
③その子の家を視察
④何度か足を運び様子観察
⑤そして、学校で趣味の話を持ち込む
僕にはこう聞こえる。
①下駄箱で待ち伏せ
②その子を尾行
③その子の家を把握
④何度か足を運び(ストーカー)、その子のネタを探す
⑤全部、把握したうえでの脅迫
はい、逮捕。
「(ラジオで犯罪を促していますよこの学園は……)」
「あ~、こんなこと言えた義理じゃないかもしれないですけどいいかな?」
このままでは犯罪行為を出し兼ねんので制止しとかなければ。
「「どうぞ、どうぞ」」
姉妹は両手でジェスチャーをしてマイク使用の許可を出す。
「僕は『好きな人』という特定に分類する人はいませんが、大切にしたい人達はいます」
ハガキの生徒に届くかわからないけど僕の気持ちを伝えたかった。
「『好きな人』イコール『付き合いたい人』になりがちかもしれませんが、別に付き合わなくても大切な人、人達はいると思います」
「僕はその人達の笑顔を見るだけで嬉しく、楽しくもなります」
「だから、このハガキの生徒はその子の笑顔が見たいのであれば、その子の事を想って何かしら行動すればその想いもちゃんと伝わると思いますよ」
上手く伝えられたか、解らないが僕の率直な想いだ。
妹「さっきの『アホ毛』とは違って良いと思います」
姉「やっぱり『アホ毛』はダメですね」
などと、姉妹は恭介を口でズタボロにしていた。
恭介はショックを受けているように見えるが、恭介の顔は少し赤らんでいた。
「(そんな、趣味も持ち合わせているのか?)」
その他に、『おじいちゃんのボケ予防はどうすればいいか?』、『最近、近所の男の子が可愛くて仕方がないです。』など色々、僕達にどうしろという質問が届いていた。
「質問コーナーはこれぐらいにして、次にいきましょう」
妹の方がバッサリと切り、次の話へ進める。
「次ですが『②学園祭のみどころ』ということでゲストさんのみどころは?」
姉が質問をする。
「俺はやっぱり、色々な模擬店が気になりますね」
姉妹と恭介は模擬店についてあれがいい、これがいいなど話をしている。
すると、放送委員がカンペで「話を進めて」と伝える。
「(ちゃんと、仕事をしている人もいたんですね)」
「私達の話はさておき、みどころを話しましょう」
「ハガキの集計によると『フォークダンス』、『美少女コンテスト』などなど、挙げられていますね」
挙げられた二つは変わらず上位に挙がっている。『フォークダンス』は歴代から行われている物で『美少女コンテスト』は過去の生徒会長が権力をいいことに開催した物で、男子からの人気があり無くなることがない。
しかし、学園の男子はその代償としてコンテストの商品を購入するための『美少女❤募金』を行っている。この募金が無くなるとコンテストが無くなってしまう為、男子は募金活動を余儀なくされている。
『美少女コンテスト』に参加する女子は、学園の人気投票順で上位十名は強制参加であり、不満が無いわけではないが景品が豪華な事がある為、断る人が少なかった。
『フォークダンス』は全員参加のため、運が良ければお目当ての男女と踊れるだけあって人気がある。
「これが、青春ってやつですな」
「(こいつの笑顔は、女子の事になると大安売りだな)」
「さて、次の『③学園祭の醍醐味といえば?』ということですが。ハガキを読むのが面倒くさいので、そこの鈍そうな男子君が読んでください」
そういうと妹は、俺を指さしていた。
「何に鈍そうなんですか?」
俺は、指を指されているのがよくわからず首をかしげる。
「『①の質問コーナー』の回答といい、そこがダメなんですよ……」
「こいつに言っても、わからないですって」
妹と恭介は僕の顔を見て、何かを納得したかのように頷き、ため息をつく。
「(なんだ、この雰囲気は?)」
僕は、納得いかないがハガキを読む事に意識を向ける。その頃、クラスでも大きく頷く女子がいたとかいなかったとか。
「(放送委員が読むのが面倒くさいというのは、いいのだろうか?)」
「えー……、理不尽ながら読ませていただきます……」
その後も、アイドル姉妹(自称)とアホ毛に流され話が脱線してしまったのは言うまでもなく、放送時間が終了するまで解放される事はなかった。
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