第二幕 こんなクラスは好きですか?

 予鈴が鳴り、先生が教室へ入ってくる。

「ほら、お前ら席に着け。それじゃ恭助、前に出ろ」

「へぇ~い」

 担任からの声掛けに、返事をして恭助は教卓の前に立ち、黒板に字を書き始める。

 黒板には学園祭と書かれていた。

「それでは、まもなく学園祭ということでクラスの出し物を決めないといけないんだが何か案はありますか?」

 案の定、クラスメイトは恭助の話を聞かずに騒がしかった。

「みんな、がやがやうるさいよ」

 恭介がクラスメイトに向かって注意をする。

「「「「「がやがやがや」」」」」

 それまで話していたクラスメイトが、効果音『がやがや』を一致団結。

がやがやの中で「ほにゃ~」が聞こえる。

「本当にがやがや言うなよ! 先生も注意してくださいよ……」

 恭介は、クラスメイトに呆れながら先生を見る。

「がやがやがや……ごほんっ、んっん、お前ら、静かにしなさい」

 僕達クラスの先生は、クラスメイトと一緒に『がやがや』するらしい。

「あんたは教師だろ、混ざって『がやがや』してんじゃねぇ!」

恭助はクラスと一緒に混ざっている担任をつっこむ。

「だって、みんなで楽しそうだったんだもん……」

「だもん、じゃない可愛くない!」

 やれやれと首を横に振り、話を再開する。

「んじゃ、みんなは意見が無いみたいなんで、俺の案を提供しよう」

 呆れた表情で恭介は呟く。

 なんだ、なんだ?、何々?と興味を持ったのか、クラス全体が恭介に目を向ける。

「聞いて驚くなよ、それは……」

 恭介が間を空けながら、発言しようとする。

「それは……これだ!」


 バンッ!


 恭助は勢いよく黒板に模造紙を張り付けた。

「メイドさんとハーレム補完計画だ!」

 その瞬間、歓声と疑問が出ていた。

 男子全体が何かを悟ったのか、歓声をあげる。

「「「「「うおぉ~!」」」」」

 心の叫びと感情的叫びが出ている。

 女子全体が疑問をあげる。

「「「「「はあぁ~?」」」」」

 拒絶反応に近いほどの疑問が出ている。

 男子と女子は同じタイミングで反応したが違う反応をしていた。

 恭介の考えはタイトルの通りメイドさん(クラス女子)を男子が愛でるものらしく、腹黒いもの感じる。

 男子は盛り上がっているが、女子はブーイングの嵐とともに一斉に恭介に色々と物を投げていた。

「い、いて、いて、痛いって。消しゴムとか定規、痛いって」


ブンッ!


 何かを投げる音がしたと同時に、黒板に何かが刺さっていた。

「えっ、え~~~、なんでコンパスが?」

 恭介は黒板に突き刺さったコンパスを見て目を疑っていた。

「さすがにコンパスは冗談にならないから……どこからコンパス?」

 恭介は引き攣った笑顔で訊くと、女子全員が口をそろえてこの言葉を送る。

「「「「「死んでしまえ……」」」」」

 女子は黒い影をまとい手当たり次第に凶器になる物をもう一度、投げようとしていた。

 その中で「ほにゃ~」の女子は頭に? を浮かべて隣の女子の指示通りに物を投げる。

「タンマ、タンマ、冗談だって。俺が女子に酷い事するわけないだろ…… あはっ、あははは」

 恭介は今にも泣きだしそうなっている。

「(逃げたな、このチキンめ)」

「(逃げたね、このタンドリーチキンめ)」

 恭介はもう一枚の模造紙を先ほどの模造紙の上に張り付ける。

「え~、先ほどの冗談はさておき……」

 女子の目線が痛い。

「うちのクラスは演劇をやりたいと思います」

 男子は、感情が醒め残念がる。

「演劇かぁ~、さっきの方が良かったな」

 女子は一斉に男子を向く。

「さっきよりは全然いい。ねぇ?」

 一人の女子が言うとクラスの女子は男子を睨みつける。

「「「「「は~~~い」」」」」

 男子は渋々と返事をさせられていた。

「……それなら演劇までに当たり障りなくメイド&執事喫茶でもやればいい」

 見かねたのか、樹はぼそっと喋り提案をする。

 それだと言わんばかりに、男子が立ち上がった。

「「「「「樹! い・つ・き、い・つ・き」」」」」

 教室全体が樹コールになっていた(男子だけ)。

「……でも、大変なんじゃない?」

 クラスメイトの女子が、男子もやるならと呟くが、心配をしていた。

 女子が悩み始めていると、そこへ華恋が勢いよく喋る。

「いいじゃない別に! みんなで助け合って頑張れば! ねぇっ、野郎ども」

 野郎どもはどこぞの貴族に言い放つように腕を前に出していた。

「「「「「イエス・マイ・ロード」」」」」

 男子(漢)とは、自分を犠牲にしてでも手に入れたいものがある。

 華恋は、クラスの女子を説得してくれている。男子の思惑を知らずに…

「私が恭介と一緒に把握もするし、進行もするからさ。一度きりしかない思い出を華やかにしようよ」

「華恋がそう言うなら……」

 女子が話している横で恭介をはじめ数人の男子が椅子に座り、円を組み机の上に肘をつけて手を組み、あごの前に置きながら話していた。なぜかその横には樹が立っている。

 一人の男子が質問する。

「恭介君、キミはなぜここにいるか解っているね?」

 その質問に、樹の眼鏡をつけた恭介が口を開いた。

「大丈夫です。そのためのオレですから」

 そう、言い終わると恭介の口は笑っている。男子は口がゆるみニヤついていた。

 そして、恭介は机や椅子を片付け樹に眼鏡を返して黒板の前に戻ると進行役を再開する。

「んじゃ、樹の案が採用したところで十時から十四時までメイド&執事喫茶で十五時から演劇ね。それで、演劇は男女の役が誰になるかわかんないから。これは、決定事項なんで。よろしこ☆」

「「「「「はい~~~?」」」」」

 クラスメイトが疑問を浮かべる。

「恭助、それはおかしいだろ? なんでわかんなくするんだよ?」

「おもしろいから☆」

 満面の笑みで答える『アホ毛』がいた。

「「「「「おもしろいから、じゃねぇだろ」」」」」

 クラス全員からつっこまれていた。しかし、一人を除いて。

「俺もおもしろそうだから決定事項で」

 僕達の担任は満面の笑みで指示する。

「……先生」

「……恭助」

 二人は見つめ合うと近寄り、抱きしめ合う。

「はぁ……もう、いいや。逆に言い合うのが馬鹿らしい。それでいくとして恭助、役決めはどうするの?」

「おうよ。俺があみだクジを作ったから、それで決めるから。そんじゃ、各自に名前を書いてちょ」

 恭助は学ランから模造紙を取り出して黒板に張りつける。クラスメイトは各自に名前を書いていた。

「ほら、悠君もいっちゃんも行きますよ」

 らんは楽しいようで満面の笑みで僕らを引っ張る。

「(こうなったら、止められないかぁ…)」

 各自に名前を書き終わり、恭助があみだを確認する。

「んじゃ、ヒロインは誰かなっと……」

 恭助は赤ペンでなぞっていく。

「誰が出るかな? 誰が出るかな? それは運任せよ、どんっと。」

「(そのリズムはどこぞの放送ネタだな、おいっ!)」

「あれ、悠斗じゃん」

「はい~~~?」

「だから、お姫様の役が悠斗」

「いや、待て待て」

「ダ、ダメだよ。ゆ、悠斗。決定事項だから。あはははっ」

 華恋は笑いながら足をバタつかせる。

「らんは、らんならわかってくれるよな?」

「決定事項ですから」

 らんは満面の笑みで俺を見ていた。良い笑顔だよ……。僕に味方はいないんだろうな。

「……悠斗」

 樹は僕の肩に左手を置く。いた、まだ僕には味方が。

「……樹」

 僕は唯一の味方を見つめる。すると樹はゆっくりと右手を挙げGJと僕に向けてくる。

「お前もか~い」

 僕にはやらないといった選択肢は無いらしい。

「……わかったよ。やればいいんだろ」

 クラスは僕を見て笑い、皆で次々と役を決め始めた。

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