最下層へ
三十七階層。
ダークゾーンが多く迷いやすい構造になっていたが、慧の正確なマッピングのおかげで無事にボスエリアまで到達。
ボスはフルアーマーオークロードなる全身武装の巨大なオークだったけど、ゴウが敵を上手く引き付けてくれたおかげで、私と慧が遠距離から攻撃でき比較的安全に倒すことが出来た。
三十八階層。
ここはボスオンパレとは違い、中ボス大量発生的なエリアで、カッパー君の同類と思われるファイアドレイクを三体同時に相手したり、アンダンキマイラと連戦させられたり、そこそこ手強い敵と複数、若しくは数回戦わされるようなフロアだった。
ボスエリアもバトルドールと呼ばれる動く人形五十体と延々に戦わされた。
三十九階層。
ここは久々の罠多めのフロアで慧の腕の見せ所となった。慧のステータスを見たせいで罠解除に不安もあったが、慧曰く「罠解除は運ではなく技術です」との言葉を証明し一度も罠を発動させることなく切り抜けた。ちなみにフロアボスはソーサリィデーモンで以前戦ったブルータルデーモンとは真逆の魔法特化型だった。ただ、魔法は私が反射して防いでいた為、ゴウの火力で押し切る事ができ、思ったよりは楽に倒せた。
四十階層。
シュヴァエモン曰く、ここが最下層ということもあり、雑魚もパワードオーガやイビルレイスといった脳筋特化から魔法系悪霊まで多種多様に散りばめられ、途中も中ボス的にオーガロードやフェイルリッチなどが行く手を阻んだ。
しかし、すっかり下層に馴染んだゴウと慧の力もあり、問題なく切り抜けると、遂に最下層を守っていると思われるフロアボスの部屋まで到達することが出来た。
奥から伝わる圧倒的な威圧感はケルベロス以来かもしれない。
「やっとここまで来たね」
「ああ。長いようで短かったかな?」
「日数的には合流してから一ヶ月は経っていますが、攻略スピードで言えばかなり早いですね」
「そっかー、二人が来てくれたおかげでかなり楽になったからね」
あと、モンスター的にも一番しんどかったのはボスオンパレ階で、二人には流石に言ってないが他の階のフロアボスはそれより弱い気がした。
ただ、この扉の先から来る威圧感はケルベロスかそれ以上で、きっとひとりだったらシュヴァエモンに泣きついていたと思う。
だけど私は泣きつかない、だって頼りになる二人がいるから。
「それじゃあ、行こうぜノブヨ」
「行きましょう暢世さん」
二人も覚悟を決めたようで私を見る。
私は頷くとゆっくり殺気漂う玄室の扉を開き中へと入る。
ボスエリアはいくつもの支柱が整然と並び、正に神殿と呼ぶにふさわしい作りを見せていた。
支柱に身を隠しながら少しづつ奥に進むと、ハッド上に敵性反応が表示される。
数は一つ、どうやら複数体のボスではないらしい。
「まずはわたくしが先行して敵を確認してきます」
そう言って、スニーキング能力の高い慧が先行して相手を確認しにいく。
サイバーなゴーグルは見た目通り、機能満載で仲間と通信して会話も可能なので慧からの情報を直ぐに受取ることが出来る。
「暢世さん。ジャーコさん。確認できました……相手は人型、大きさ的にはオーガロード級です」
オーガロード並となると五メートルは越す巨体である。魔獣やドラゴンに比べれば小さいがうちら人間からすれば十分デカくておっかない。
「それはいい知らせだなケイ。すぐ行くからまってろよ」
しかしゴウはビビるどころか、人型と聞いてテンションが上がる。
戦闘好きのゴウからすると格闘戦に近い形で戦闘が出来る人型のモンスターの方が好きらしい。
ただし魔術師系は除くだけど。
「ゴウ先行しすぎないでね」
「わーてっるて、まあ、ここにきてオーガロードは無いだろうし、それより格上の相手なのは気配からして間違いないだろうからな」
どこか嬉しそうなゴウが慧に合流するべく駆けてゆく。
少し遅れて私も続く。
それにしても強敵と戦えることが嬉しい気持ちは、やつぱり私には理解できない感覚だ。
それから私は二人と合流すると作戦を練る。
まあ、今のところ作戦と言っても呼び出す召喚魔を決める位だけど、支柱の大いこのエリアでは大型なカッパー君とかヌベーは動き辛い。
ここは取り敢えずガーゴイルチームのゴイルズを呼んで様子を見ることにする。
相手の強さにもよるけど上手く撹乱してくれると有り難い。
「良し準備もできたし、二人共行こうぜー。あとシュヴァちんはバフをお願いな」
いつものようにシュヴァエモンにバフを要請するゴウ。
しかしシュヴァエモンは首を振ると言った。
「いや、もう、豪姫も慧もバフは必要ないだろう。実際このフロアに入ってからバフは掛けておらんしな」
「そう……やっぱりそうでしたか、このフロアで動きがいつもより鈍いと感じていましたけど」
「ああ、アタシもそう感じてのは気の所為じゃなかったんだな」
「うむ、しかし、今はもうそういう事もあるまい」
「はい、今は問題なく百パーセントのポテンシャルで動けますわ」
「アタシも全然問題なし、むしろ調子が良いぜ」
「では、見事暢世と共に打ち倒してみせよ」
「おう」
「ええ」
二人がシュヴァエモンに頷く。
私もシュヴァエモンを見る。
「暢世よ。これを」
シュヴァエモンから手渡されたのは俗に言うパイナップルと呼ばれる手榴弾、マークIIを四つ。
「それには中級クラスの爆炎魔法を封じてある。味方を巻き込まないように気を付けるが良い」
どうやら私の魔力に依存しない、使い捨てのアイテムのようだ。魔法力回復の丸薬と同じできっと役に立つはずだ。
カール・グスタフもまだ三発残ってるし、ケルベロスも召喚可能になっており抜かりはない。
これから全身全霊を掛けた決戦が始まる。
絶対に三人で生き残って凱旋してやるんだから……。
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