苦戦?

 境界の地下神殿三十六階層。


 私達は三人パーティになってから、初めといって良い苦戦を強いられていた。

 呼び出したカッパー君の攻撃も全く歯が立たず。

 ゴウが懐に飛び込んで強力な斬撃を数発加えるもビクともしない。


「おいおい折角【剛燐剣】装備出来るようになったのに攻撃通らないじゃん」


 ゴウが愚痴ってる間に雷撃で反撃され、カッパー君共々ヒットポイントが削られる。


「こちらも駄目です。毒矢も【ヘルファング】による攻撃も無効化されますね」


 慧は巧みに雷撃を避けつつ、陽動を兼ねて弓と短剣で近距離、中距離で牽制攻撃を仕掛けている。しかしそれも効果が見られない。


「それって物理攻撃無効ってこと?」


「多分な、だから……」

「ここは魔法攻撃ですね。ですから……」


「「ノブヨ(さん)後は任せた」」


 二人の声が重なり、私の肩に重すぎる期待が乗せられる。

 期待を集めた私の目の前には、立ちはだかる巨大な竜のような姿。

 でも全身は鱗ではなくテカテカのメタリックボディ。

 こんなのアリかよと思うけど、目の前に居るのだから仕方ない。


「暢世よ。そのガーディアンドラゴンは見ての通り全身金属のロボだ。生半可な攻撃ではダメージが通らんぞ」


 シュヴァエモンにしては今更、そんなこと『言われなくても』なアドバイス。

 ん?

 でもシュヴァエモンがそんな分かりきったアドバイスを今更するのかと思い、考えてみる。


「なるほどね。ゴウ、慧、これからデカいのブチかますから、なるべくというより、うーんと距離を取って」


「りょ」

「分かりました」


 二人は私の指示通り相手から間合いを取ると私の近くまで後退する。

 


 私はそれを確認しマグ、ドグ、メグを展開させると呼び出していたカッパー君を帰還させ準備を整える。


「ふっふっふ。久しぶりに行くわよ。必殺トリニティショット」


 必殺技を叫ぶヒーロー宜しく、私も自分の攻撃を声に出しつつ三連射。


 三人になってからは、フレンドファイアが怖くて使ってなかった私の最強攻撃技。

 生半可な攻撃が駄目なら超強力な一撃を放てば良い、シュヴァエモンのアドバイスはそういう事だったのだろう。


 実際、トリニティショットから発生したヴォーテックスがガーディアンドラゴンを包み込み激しいダメージを与えている。


 そしてこの技はチートな所がある。

 それは……。


「くらいなさい、もう一発」


 ヴォーテックスが終息しそうなタイミングで私が再度最速の三連射を決める。

 すると再度トリニティショットが決りヴォーテックスが発生する。


 つまり、この技はノーリスクで連発できるのだ。

 さすがのロボットドラゴンもヴォーテックスを二度もまともに食らえば耐えられなくなり崩壊していく。


 その様子を隣で見ていた二人が呟く。

 

「ズルくね」

「卑怯ですわね」


「……そりゃ私も思う所がないわけでもないような気もしないけど」


 正直、あんな化物とタイマンで撃ち合ったら命いくつ会っても足りないから。

 そんな私をシュヴァエモンがフォローする。


「あれは、あれで運も実力のうちということだ」


「ん? シュヴァちんどいうことだよ」


「いや、あれは本来連発した所で発生しない可能性だってある、いわゆる確率判定を伴う攻撃だ」


「ああ、なるほど。そこで暢世さんの幸運度の高さが生きてきているのですね」


「えっ、そうだったの」


 今まで必ず発生していたので、必ず発生するものだと思っていたけど違っていたらしい。


「うむ。なのでアテにしすぎると肝心な時に失敗する可能性もあるぞ」


「なら、なんで生半可な攻撃は効かないなんてアドバイスを」


「うむ。だからこそコレを新たに授けようと思っていたのだが不要だったようだな」


 そう言ってシュヴァエモンが取り出したのは無反動砲の中でも有名なカール・グスタフという代物だった。


「なっ、なんで、先に渡さないのよ」


 私はシュヴァエモンに文句を言いつつカール・グスタフをひったくる。

 横目で見ていたゴウが口を開く。


「アタシとしては、そっち使ってた方がドン引きだけどな」


「ええ、薄々思ってましたけど、暢世さんの武器に関しては何でもありですわね」


 追従した慧共々、二人がジト目で私とシュヴァエモンを見てくる。


「そう言うでない。これだって欠点はあるのだ。ます暢世の魔力出力の最大値分を消費するから撃てて一発づつが限度でな。あと魔力を拡散させない為に特殊な砲弾を使用する設計になっているので再装填する必要もある。取り敢えず六発分を渡しておくから必要に応じて使うが良い」


 なるほど銃とは違い威力重視なため利便性を犠牲にして火力を高めているようだ。

 砲弾を使うのもそのためらしい、魔力を拡散させない為と言っていたが、理屈は私では理解不能だ。


「ねえ、再装填は手動なの?」


「うむ、そこは手間だが砲弾を使う以上仕方ないと考えてくれ。銃と同じコンセプトでは威力に限界があるのでな。状況に応じて使い分けるがよい」


「了解。取り敢えずありがとね。今後のボス戦とかに使うよ。二人も私達のパーティには強力な攻撃魔法の使い手はいないんだから、魔法面での火力補強は必要でしょう」


 現代兵器を当然のように持ち出し運用する私とシュヴァエモンに対して、ジト目を送る二人に必要性を伝える。


「うーん、確かにな。見た目が現代兵器だから違和感あるけど、特大の魔法攻撃と思えば別にいっか」


 すぐにゴウは私の説明に納得してくれる。


「私も暢世さんの言い分には納得です。ただ暢世さんはそんなロケットランチャーみたいなもの扱えますの?」


 慧も納得しつつ疑問を呈してくる。


「あー、問題ないわよ動画で見てたりしてたから使い方は分かるんだ」


「なるほど……じゃあシュヴァエモンさん。この武器は使い方がわかれば私でも扱えますの?」


「うむ。使う分には問題ないが、これらの武器は魔力出力が高い暢世向けに調整してあるからな、汝や豪姫では大した威力にはならぬぞ」


「なるほど、そういうことですか。では魔法職の者が扱えば多少は様になるということですね」


「そうだな。ただ攻撃魔法が使えるのならそちらの方が手っ取り早いと思うぞ」


 シュヴァエモンの答えに、慧は指を顎に当て考える仕草をする。しかし首を振って頭を下げると。


「確かに、暗愚な質問でした忘れて下さい」


 そうシュヴァエモンに伝えて話は終わる。

 少し気になったけど、慧が良いなら私は別に構わないなのでそれ以上はツッコまないようにする。


 その後は倒したガーディアンドラゴンのリザルトをチェック。


 手に入れたのは【機竜の装甲胸具】と【雷召の宝珠】の二つで、胸当てはゴウが装備することにはり、雷召の宝珠は慧が使うということになった。










 

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