今後の方針
「あのさ、じゃあ一度……」
地上に戻ろうと言いかける途中でゴウがとんでもない事を言い始める。
「なあ、シュヴァちん。ここのダンジョン攻略アタシ達にも参加させてくれないかな〜」
「へっ?! なに言ってるのよ、やっと脱出出来る目処が立ったってのに」
私が反論すると、私寄りの考えだと思っていた慧から思わぬ言葉が飛び出す。
「私もジャーコさんの意見に賛成です。今戻っても私とジャーコさんの責任問題は拭えません。それにシュヴァエモンさんの事を説明しても信じてもらえるかどうか怪しいですし」
「でも、それがどうしてダンジョン攻略に繋がるのよ」
「簡単です。このダンジョンを攻略すれば実績になるからです。
「いやいや、だってまだ私達正式な探求者じゃないんだよ」
「だからですよ、このまま学園に戻れば良くても退学は免れません。でも実績を上げて戻ったとしたらどうでしょうか? 上の方々は処罰したくてもできなくなるのではないですか」
確かに慧の言う通り、ダンジョンを攻略しオープスを持ち帰ったとすれば、それは探求者としての最大の功績と栄誉。学園側もそんな人物を探求者失格として学園から退学させるわけにはいかなくなる。
確かにこれで学園側はなんとかなるかもしれないが問題はまだある。
「でもね。私は死亡扱いだから誤魔化せるとして、二人はどうするの、きっと探索部隊が組まれるわよ、特に慧のおじさまなら、それこそS級のパーティを数組雇い兼ねないわよ」
「ええ、問題はそこですね。でも安心して下さい。黙って侵入したので学園の備品は持ち込めませんでしたけれど情報デバイスなら個人の物を私が持っていますので」
思わず「えっ」と言いそうになった。
だってダンジョン仕様の情報デバイスなんて一般に流通することなんてないから。
入手経路を聞くのは怖いのでスルーしつつ話の続きを慧から聞く。
「なのでこのデバイスでお父様とは連絡がつきます。経緯を伝えておきますのできっと上手く収めてくれるはずです」
「って、丸投げかよおい」
思わず我慢できずにツッコんでしまう。
まあ、確かに鬼垣の力を使えば大抵の無理は通せそうだけど、それならその力で二人の処遇をどうにかしたほうが良いのではと考えてしまう。
「暢世さん。金と権力はいざという時に使うものですよ、粗雑な事に使えば安く見られてしまいます」
「はぁぁ、そうなのね」
つまり慧的には学園の進退問題程度で権力を使えば、格が落ちるといったところなのだろう。
それならばもっと大層な事柄で使う。
それこそ、オープスを手に入れるために、それが鬼垣の家にとっても得策だと慧は判断したのだろう。
つまり慧はすでにダンジョンを攻略する気満々なのだ。
「ふあぁぁ、難しい話はおわった〜」
そして、言い出した当人にも関わらず、話は蚊帳の外で聞いていた人物。
考えるより思いつきで話すタイプのバカが呑気に口を開く。
「あぁもう、だいたい二人は勝手に決めてるけどシュヴァエモンの了承も取らないとなんだからね」
私としては、シュヴァエモンの目的は私を鍛える事なので、二人の助力は必要ないと言ってくれると期待した。
「うむ。そうだな我は別に構わぬぞ」
「そうそうシュヴァエモンも別に構わないって言ってるし……って良いのかよ!」
期待は裏切られた。
「ああ、われの目的は暢世を最高の探求者にすること、ならばいずれにせよ共にする仲間も必要になるであろう。ならば気心が知れた仲間の方が良いというものだろう」
うん、まあパーティを組むならこの二人は外せないけど、こうも簡単に決まるのもなんだか釈然としない。
だいたい二人は下層の恐ろしさを理解していないから簡単に言えるのだ。
「あのね。下層ってかなり半端じゃないところよ、それこそボスクラスしか居ないフロアとか、即死罠ばかりのところとかさ、もうヤバいって」
私は必死になって下層の危険性を二人に伝える。
「おお、凄いじゃん。アタシもボスフロアだらけのフロアには行ってみたいかも〜」
しかし、戦闘バカにとっては逆に興味を引く事になり。
「ふっふ。即死罠だろうと解除してしまえばどうということはありませんから」
傲慢お嬢様には無駄な自信で回避された。
本当に二人は私の心配なんて無視して勝手に決めて……学園に入学の時もそうだ。ゴウが真っ先に決めて、恵も自分を試したいからって決めて、私は二人が行くならと、結局二人に流されて……明確な目的は無くて、それでも二人と一緒に、同じ道を歩いてみたいという気持ちは間違いなく自分の気持ちだったから。
「ああ、もう、分かったよ、分かった……それじゃあ目指そうじゃない。私達三人で」
改めて思い出す私が強くなりたいと思った理由。
シュヴァエモンが言っていた私の願い。
「ノブヨは、いまさらすぎだよ〜」
「全くです。私は探求者になると決めたときから思い描いていましたよ」
私に笑いかける二人。
本当にどうなっても知らないよと思いつつ、やっぱりどこかで喜んでる自分がいるのだった。
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