救援

 ボスオンパレードゾーンを攻略し降りた先は罠オンパレードゾーン。

 敵は大したこと無かったものの即死罠だらけで面倒なエリアだった。


 まあ、罠の解除なんて出来ない私は結局シュヴァエモンに泣きついた。


 シュヴァエモンも当然その事は理解していたので今回はと言うことで、道すがらの罠を全て解除してくれた。おかげてフロアボスまで一直線だったので思ったよりは楽だった。

 そこのボスもケルベロスに比べれば小物とも言えるヘルハウンドの群れ、ここはガーゴイル達ゴイルズと連携して見事に殲滅。

 モンスターの強さ的には、正直上のフロアが異常だったなと実感させられた。


 そして見つけた次のフロアへと降りる階段。

 いざ降りようとした時、シュヴァエモンが突然変なこと言い出した。


「暢世よ。汝が親しくしていた友人がいたであろう」


「ええっと、もしかしてゴウと恵のこと?」


「うむ。その二人だがどうやら危険な状況だぞ」


「はぁあ? 意味分かんないだけど、どうして地上に居る二人の動向がわかるのよ」


「ふむ、何故なのかまでは分からぬが、我の解析に引っかかったのだ。二人はこの迷宮に居て、いま十八階だな、状況からしてかなり危険だぞ」


「えっ、だったら、そんなの直ぐに助けに行かないと……」


 今回ばかりはシュヴァエモンがなんと言おうと助けに行く。そんな強い意思を込めてシュヴァエモンを見る。


「分かっておる。そのフロアまでは解析済みだからな、座標を指定して飛べる」


「じゃあ、飛ばして」


「……まあ、良かろう、相手はネクロマンサーだ。今の汝なら心配いらぬであろうが油断はするでないぞ」


 シュヴァエモンは私に向けて杖をかざす。

 すると一瞬浮く様な感覚に襲われ、気づくと見知らない場所、そして目の前には見知った顔が目に写る。


 それと同時に二人と視線が合う。

 重なるように聞き慣れた声が響く。


「「ノブヨ(さん)」」


 久しぶりに会えたことが嬉しくて、同時にボロボロの二人を見て怒りがわきあがる。


 目の前にはボーンゴーレム。

 こいつらが二人をここまで追い詰めたのだと理解する。


 かなり酷い状況の二人を匿うため、直ぐにヌベーを呼び出し壁を作る。


 ホーンゴーレム共は抑えられない怒りに任せ、バントラインスペシャルとオートナインを乱れ撃つ。


 本来、ゴーレムを物理攻撃で倒すにはコアを破壊しないと倒せない。しかし魔法弾は魔法攻撃と同等、なのでコアに関係なくダメージを与える事ができる。おかげであっという間に殲滅出来た。


 今回に関しては、物理しかない二人と相性が悪かったという事だろう。

 そうでなければあの二人がこんな奴らに負けるはずないのだから。



 ボーンゴーレムを殲滅した後は、シュヴァエモンが言っていたネクロマンサーを探す。

 するとサイバーゴーグルに敵性反応が示される。奴は後方に隠れており、そこから無数のホーンゴーレムを呼び出し戦わせていたのだろう。

 私は安全距離を確認してから、オービタル達を飛ばし配置させる。そこへ怒りに任せたトリニティショットを放つ。


 オーバーキルなのではと思わなくないけど、どうしても許せなかった。

 だって大切な親友二人を傷つけたのだから。


 案の定、ネクロマンサーは発生したヴォーテックスに巻き込まれると、新たに呼び出そうとしていたゴーレム共々呆気なく消滅する。


 その後は周囲に敵性反応が無いことを確認し慌てて二人に駆け寄る。


 二人共意識はあるが酷い有り様だ。

 どうやらヒットポイントが底をついていたらしく生身の体にもダメージを負ってしまっている。


 直ぐにでも病院に運ばないと。

 そのためには……。


「シュヴァエモン、見ていたんでしょう、直ぐに来て」


 私が大声で叫ぶと、空間が揺らめき一瞬で黒尽くめの男が現れる。


「なっ」

「あなたは」


 見るからに怪しいシュヴァエモンに二人が警戒を強める。


「二人共大丈夫よ。彼は味方だから」


「やれやれ、戦いを見ていたが酷いな。格下だから良かったものの、戦闘はもっと冷静にならねばならぬぞ」


 早速の小言はスルーして直ぐに本題を伝える。


「そんなことより二人が大変なの、直ぐに外へ連れ出して病院に運んで、お願い急いで……」


 血まみれの二人を見て冷静でいられない私をシュヴァエモンがなだめてくる。


「そう、慌てるでない。この程度の傷なら直ぐに治せる」


 シュヴァエモンはそう言うといつもの漆黒の杖を二人にかざす。


 すると見慣れた光の粒子が二人を包み、二人の体を癒やして行く。


「なっ、なにこれ スゴッ」

「こんなことって」


 見る見るうちに自分の体が癒やされていくのを実感し驚きの声が零れ出る。


 二人が癒やされていく様を見て、安心感と共になんだか慌ててた私が馬鹿らしく思えてきた。


「はぁ、今更だけど本当にシュヴァエモンってなんでもありね」


 分かっていた事だけど第三者的な立場に立つことで改めて実感するシュヴァエモンの規格外さ。


「あの、ありがとうございます」


 あっという間に傷の癒えた慧がシュヴァエモンに頭を下げる。

 あのお嬢様で気位の高い慧が、素直に頭を下げるという珍しい光景が見られた。


「いや、スゴイよ黒い人。うん、助かったよ、サンキュ〜」


 対照的に軽い感じで礼を言うゴウ。

 あれで真底感謝しているのは、シュヴァエモンの手を取ってブンブンと振っている事で理解できる。


 そんな二人を見て、とりあえで無事で良かったと私は胸をなでおろした。

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