生体魔力
ホワイトセージを無事に倒して、恒例となりつつあるリザルトのチェック。
シュヴァエモンが鑑定してくれるので非常にありがたい。
それで肝心のドロップ品はというと。
【賢者の指輪】と【死霊秘宝(断片)】と【ネオ・エリクサー】
ネオ・エリクサーとは何ぞやと思う私を無視して、シュヴァエモンが死霊秘宝と呼ばれる本の断片を珍しく欲しいと言ってきた。
特に本に興味なんて無かった私は承諾して本をシュヴァエモンに譲り渡す。
それから気になっていたネオ・エリクサーの鑑定結果を確認する。
ネオとつくのだからエリクサーより凄いのかと思いきや、エリクサーの大量生産品の廉価版で効果は生体魔力の大幅な補給ということだ。
「この説明事項の生体魔力ってなんだろね?」
回復ポーションとは違う説明事項について疑問に思い、思わず口に出して呟いてしまう。
するとシュヴァエモンが、今更何言ってんだこいつみたいな顔で私を見てくる。
「えっ、なに? 私変なことを言った?」
「いや、そうだな暢世達の世界ではまだ研究が進んでいないのだったな。よかろう、ここはひとつ講義といこう。まず汝のいうヒットポイントも魔法力も活性化した
「えっ、体内魔力? 生体魔力とは違うの? あっ、でも元が同じならモンスターを倒した時にヒットポイントとか回復したりするんじゃないの」
「うむ。そうならないのはヒットポイントや魔法力は体内魔力から直接消費されるわけではなく、一度体内で生命力と結びついてオドと呼ばれる生体魔力に変換される必要があるからだ」
生体魔力なんて授業でも習わなかった。
どこまで本当か分からないけど、規格外のシュヴァエモンが説明するだけで真実味がある。
「じゃあ、その生体魔力ってなんなの?」
「簡単に言うならば汝ら
「ああ、だから少し休んでいるとヒットポイントと魔法力が少しづつ回復するのね。あっ、でも今の説明だと元は同じって事でしょう、それなのに回復ポーション使った時はヒットポイントしか回復しないのはなんで?」
「うむ理由は二つある、ひとつ目は回復ポーションが
魔法職としては魔法術の深淵なんて言われると気になるけど、そんなものを一日そこらで説明しきれるはずが無い事も分かる為、ここは流しておく。
「次に、汝らはシーカーとやらになる時、職種に応じて生体魔力を蓄える為の器の割合を、パーテションで分割してリソース管理を行っている事が理由だ」
器をパーテションってなにと思っていると、それを察したシュヴァエモンが更に細かく説明してくれる。
「つまり、器が百あるとすればヒットポイントに七割の七十。魔法力に三割の三十と言ったように強制的に分割させているのだ。つまり前衛職のヒットポイントが多いのは魔法力にリソースを割いていないからだな」
「ああ、なるほどそれじゃあ私のヒットポイントが低いのは魔法力の方に比重が高いからなのね」
「そうだ。暢世はさらに極端でヒットポイント二割の魔法力八割と言ったところだな」
シュヴァエモンから比率を聞いて納得する。
そりゃあ二割のヒットポイントならコブリンの一撃で半分削られる訳だ。その上第一位階の召喚魔法しか使えないのに魔法力だけあっても意味がない。
「はぁ、つくづく私って面倒い奴だったんだなー」
レベルが上がってもステータスが向上しない上にヒットポイントが低く死にやすい、召喚魔法も微妙となれば誰もパーティを組みたいとは思わないだろう。あの二人以外は
ふと顔を合わせていた二人の顔が思い浮かぶ。
二人はどうしてるかな?
私が死んだと思ってるかな?
情報デバイスは相変わらず機能しておらず、ライブカメラが付いていたタクティカルヘッドセットは損傷して使い物にならない。
恐らくこの状況なら外は死亡認定している可能すらある。
「ねえ、シュヴァエモン。外と通信したり出来ないかな」
親友二人に対する哀愁というか、少し寂しい気持ちになった私は、ダメ元でシュヴァエモンに聞いてみた。
「そうだな、もう少し迷宮の解析が進めば通信くらいなら取れるようになるだろう」
「そっか、分かったわ。通信できるようになったら教えて、友達には生きてるってこと伝えておきたいからさ」
せめて二人には私が無事だと伝えて安心させたい。じゃないとゴウなんてなんか無茶しそうだし。
「うむ、心得た」
「ありがとうお願いね」
私はシュヴァエモンにお礼を言うと、次の戦いに備えて充分な休息を取る。
体内魔力が十二分に蓄えられている今の私ならフルチャージするのに問題ない。
次に賢者の指輪をやらを身に着ける。
シュヴァエモンによると魔法の威力を高めてくれる代物で、ようは魔力出力を上げてくれるものらしい。私は元から出力が高いがさらに出力が上がったことにりよ銃の威力も増すはずだ。
あと、副次効果として魔力出力が高いと生体魔力の変換量も増えるため貯蓄率が早くなるらしい。
いままで比較したこと無かったので分からなかったが、これも私の強みになる。
つまり、これで着実に前よりは強くなった。
だから次はどんなボスだろうと………。
もちろん主人公気質ではない私はワクワクなんてしない。
いつものようにビクビクしながら次のフロアに続く道をイヤイヤ進んでいくのだった。
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