第4話 コラボ開始
スタジオ内はさながら戦場のようだった。V-GATEのスタッフ達が一丸となって1つのイベントを成功させようと努力をしている。そこは華々しい表舞台とは異なり、泥臭くもキラキラとした世界だった。
俺としては自分が主役に立つより脇役、もとい裏方から眺める、所謂後方腕組みをしていたい。まぁ今回は導入や前提として表に出ないといけないが、普及したなら俺は必要ないからな。
「VRドームよし、インストールよし、配信準備よし、トラッカーは平気か?ゲームが始まるまでは椅子に座って疲れないようにしておけ。」
「言われなくてもそうするわよ!ま、若い私はそこらの雑魚おじと違って疲れないけどね!」
「ネズちゃん、それって私が若くないって言っているのかしら?」
モーの背景にゴゴゴっと文字や音が響きそうな雰囲気にスタッフも硬直していた。
「あ、いや…私が言っているのはリスナーというか男限定であって…モーさんのことでは…」
「ネズちゃん…リアルではあたしよりポンだよねー。なんで配信だと平気なんだろ?」
演者が3人で盛り上がっているが配信時間が迫っているので位置についてもらう。
「キャリブレーションは大丈夫か?それと各自の配信とは別にゲームが始まったら公式アカウントでの配信で3人の姿を写してもらう。リスナーが見たいのは3人の姿であって俺は解説に徹する。」
ここまでは予定されていることだ。そもそも箱に所属する女性ライバーに男が絡むのを良しとしない者は多い。しかもオフで顔を合わせるのだ。絡みは最低限に済ませる必要があった。
「オッケー!あたし達の別視点で性格が現れるのもVRの醍醐味だもんね!」
キノがそう言い、他のライバーも頷いたことから配信開始のカウントダウンが始まる。ゲームが始まるまでは公式アカウントで説明をする。
「皆さんおはこんばんにちは、V-GATE1期生の土宮モウです。今回は新作ゲームを特別に先行体験させてもらえることになったのでご紹介します。」
「水野ネズだよ!今は公式アカウントからの配信だから我慢してるけどキモおじが視線だけで孕ませて来るからさっさと次にいこ!」
「タイガーキノです!VRもここまで来たかぁってすっごく楽しみで寝坊するくらい熟睡しちゃいました!
あたし達が正式サービス前に体験できるなんてV-GATE様様!」
「今回アドバイザーとして進行する初風ナギサだ。リスナーの心配している今後とも絡む予定かという質問に対して最初に言っておく。俺としてはゲームの宣伝が出来ればいいだけなので今後は絡む事がないだろう。これだけ見てくれる人が多いならアドバイザーも必要ないしな。」
『マスターの補助のセレナーデです。セレナと呼んでください。と言っても私は基本補助なのででしゃばるつもりもありませんが。』
:きちゃぁぁ!
:モーさんの司会は安心して見れる
:オフコラボだからネズちゃん心配
:男マジ寄ってくんじゃねぇ!
:いっぱい寝れて偉い!こういうのでいいんだよ
:えー、ナギサキュン見に来たのに
:弁えてるのは安心する
「とりあえずサーバーの設定をしていくか。」
スタッフを促し画面を替えてもらう。
「基本はデフォルトで大丈夫。変更が必要な部分は時間進行、難易度というお手軽にしてある。ちなみにNPCには不死属性がついていないから気をつけろ。」
『時間はデフォルトの等倍がいいです。早くすると敵の行動も早いですし。ただ、農業、行商プレイをする場合は1.2倍くらいがお勧めです。
難易度は敵の強さの上昇率。時間経過もしくは参加者のレベル平均のどちらか。ゲームにログインをしていなければ時間は進まないので安心してください。』
「ソロなら途中変更はし易いってことね。でもゲームだからってリセットは出来ればしたくないわ!」
「ネズちゃんは根っからのゲーマーだもんね。あたしは冒険者になってみたい!」
「皆さん方向性決めるの早いわね。私はどうしようかしら…運動苦手だし皆でするなら生産とか。」
「モーさんが生産って牛乳??あたし牛乳苦手なんだよね、すぐお腹壊すし。」
:さすがゲーマー妥協はしない
:モチーフ的には間違ってはいないんだけど…
:おい!もうSNSに絞られるモーさんあがってるぞ!
:お腹壊すのわかる、でもやめられないんだ
「今回はお試しサーバーなので箱ごとに鯖は相談して決めてくれ。等倍、時間経過に今回はしておく。これであとはゲームにログインをすれば完了だ。
複数人でする場合はIPアドレスが必要なのとポート開放が必要だ。これは鯖を建てるマルチゲーに良くあるから知ってる人はいるだろう。まぁ、これがオープンワールドとして機能したら一種のメタバース空間だね。」
この後、全員がログインの準備が完了したとのことで早速ログインを済ませる。
「ここからは各ライバーの配信もスタートするので気になる人はそちらへ。全体が見たい方は公式アカウントをオススメする。」
:ぐう有能
:解ってるじゃねえか
:洞窟っぽい所から開始?動画では草原だったけど
『初回ログイン箇所はランダムですよー。それに基づいてシナリオが出来ます。牢屋スタートでもキチンとシナリオありますから安心してくださいねー』
:安心できる要素がねぇ…
:初回ログインでランダムに身分が決まるってことか
:シナリオ自動生成凄いな
「ちょっとなによこれ!貧弱な装備で洞窟っておかしいわよ!もっと貢がれて良い装備しててもいいじゃない!」
「でも、田舎から出てきた人って考えたら普通じゃないかしら?それにしても、私の服やけに胸元あいていない?」
「わー!すっごく雰囲気のある洞窟!ヒンヤリとしてて鍾乳洞なのかなって思っちゃう!」
:くっ…俺が一緒にプレイしてたら全財産渡すのに!
:見返りに何を要求するんだこの変態!
:ちょいまて!モーさんの画面が胸いっぱい!
:足元見えん…巨乳ってこんな感じに見えるのか
:ヒンヤリしてるのか
:確か幽霊とかオカルトに遭遇する際も冷気を感じるんだっけ
:ゾクッとするやつ
「このゲームは一応敵に対して残酷描写あるから注意ね。自分に対してはないよ。四肢切断とか血を吐くとかね。その代わり、大きなダメージをもらうと切断の代わりに服が破損するから。」
『良くある大破差分ってやつです!』
:うっほ!まじか!!
:盛り上がってまいりました!!
「な、なによそれ!」
「ん?ゲーマーならそこまでダメージうけないでしょ?まずは服を脱いで重量軽くしてプレイする人だっているんだし。」
「あんな変態プレイする人といっしょにしないで!ま、私だってゲーマーなんだしそのくらいやろうと思えば出来るけどw」
:フラグ乙
:これは分からせられる予感
「まぁ、R-18にならないようにキャリブレーションしたでしょ?あれで破けない箇所を設定したはずなんだし。流石に股間や胸は設定したよね?まぁしなくてもインナーか露出するくらいだから大丈夫だろうけど。」
「え??あのキャリブレーションって全身動かせるかの確認かと思って適当にしたんだけど…」
「キノちゃん、ちゃんと説明は読みましょうね…設定し直してきなさい。」
「はい…」
:あぶねぇぇ!
:流石アホの子
:保険をかけてる開発者偉い
:インナーだし下着じゃないから恥ずかしくないもん!
そう言いキノは一旦ログアウトをして設定を変えに行った。
「ちなみに破損は見た目のデザインで変わる。鎧と服が同じ破損なわけないからな。」
『服モデルは既存の防具に上書き可能です。所謂見た目アバターってやつです。なのでライバー達の衣装チェンジもしやすいです!』
「VRオブジェクトの需要をあげるための施策だな。破損差分は自動で設定されるからどんどん衣装を替えて平気だぞ。武器もユニークな見た目にできるから試してくれ。」
:なんぞそれ!!
:あ、これ絶対楽しいやつ
:普通、見た目悪いけど性能良いとかあって妥協する必要あるもんな
:お、キノちゃん戻ってきた
「私は普段の衣装に愛着ありますし、そこからアレンジした物があればでしょうか…これは運営さんと相談案件ですね…」
「ねぇねぇオジサン達、私に何着てほしいの??水着?ざんねーん!せっかくなんだしファンタジーっぽいのがいいわ!え、死んだらバニー?ふん、この私がやられるわけないじゃないの!」
「んー、鎧ってガチャガチャしそうだよね。あたしは武道家っぽいのが似合いそうじゃない?ほら、種族的にもさ。手乗りタイガー?いや、そこまでちっさくはないよ!ネズちゃんのが色々と小さいでしょ。」
:この趣向が違うの、いいよな
:皆違って皆いい!
:ママやパパの案件増えるー!
:ネズちゃんフラグ立てまくりw
:キノちゃん、悪気はないんだろうけどネズにクリティカルヒットw
「あ、見た目によってもシナリオ変わるから楽しんでね。」
「「「そうなの!?」」」
『そりゃ村人姿と騎士姿で同じ依頼が来るわけないよー。町中で水着姿とかバニーなんて娼館娘に思われても仕方がないかと。』
この一言で露出が激しい衣装は見送られたが、罰ゲームなどで短時間ならありという方針を運営は決定した。
ちなみに個人勢はいろんなシナリオを見たいがために衣装モデルを大量に購入したため、VR業界が盛り上がっていくのだった。
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