第6話 魔法と冒険者

 夜が明け、小鳥のさえずりが響く中、村の広場にはオーガ討伐に参加する者が集合した。人数およそ50人、エリスの護衛や村の若者にて構成されている。


 その中に一際目立つグループが居た。男3人女2人で構成され、手には風変りな武器を持っている。彼らはいったい何者なのだろうか。


 好奇心から声をかけてみることにした。




「御機嫌よう。君たちもオーク討伐に参加するのかね」


「ああ、もちろん参加するぜ!」


リーダー格と見られる陽気な人物が答えた。


「この村の人間では無いようだな」


「おうよ。俺たちは冒険者さ」


 彼が言うには、国を転々としながら、クエストや達成して報酬を貰い生活する冒険者であるらしい。そのパーティーの名は『シュバルツ』と言った。


 メンバーはリーダーで剣士のジョエル、盾使いドルジ、槍使いジョン。そして、女性陣の魔導士アン、弓使いリーネである。彼らは、ルシタニア人では無く外国の生まれであり、魔法を使用することが可能であるらしい。


「ところで兄ちゃん達も見ない恰好をしているが、どこから来たんだ?」


「我々は遠い地からやってきた旅人だ。訳あって、この討伐に参加している」


「なるほど。どおりで珍しい恰好をしているわけだ。ところで名前は?」


「私は秋山真之あきやまさねゆきだ」


「アテナです。よろしくお願いします~」


「おうよ。今日はよろしくな」


 こうして、異世界で初めて冒険者と出会った。ぜひ魔法という代物を見てみたいものである。

 



 広場に集まったメンバーに集合の声が掛かる。


 壇上にエリスが上がり、オーク討伐の説明が行われた。


 要約すると、オーク討伐のため最低でも5人以上のチームを作って森に入ること。森の深い部分まで行かないこと。異変があれば黄色い狼煙をあげること、である。


 そして、チーム編成が始まる。我々は『シュバルツ』に同行出来るか聞いてみた。


「俺たちと一緒に行きたい? もちろんさ。足を引っ張るんじゃないぜ」


 ジョエルは気前よく了承してくれた。


 が、弓使いのリーネが反論した。


 長い黒髪に赤い目が印象的な彼女であったが、なかなかキツイ性格らしい。


「私は反対よ。オークなんて、私たちだけで片付けることが出来るわ。それに、あなたたち魔法使えないんでしょ? 足手まといよ足手まとい」


 まあ、パーティーに見ず知らずの人間を加えることを警戒する気持ちは分かる。


「まあまあそう言わずに」


 ジョエルがなだめようとしたが逆効果であった。


「黙りなさい。あんたはいつも甘いのよ」


 その赤い目は烈火のごとく燃え盛っているように見える。ジョエルの大柄で筋肉質な身体は、彼女の説教により徐々にしぼんでいくようであった。


「私はね、見ず知らずの人間をパーティーに加えるなんて大反対よ。百歩譲って男の方はおとりに使えるかもしれないわ。でもね、もう片方の金髪巨乳女! あんたは絶対にダメよ」


 アテナを指さしてそう言った。


「第一、こんな武器を持ったことも無さそうな女がオークと戦うなんて100%無理よ。家に帰って料理でも作ってなさい」


 彼女は是が非でも我々をパーティーに加えたくないようである。果たして虎の尾を踏んでしまったのだろうか?


「ご、ごめんなさいなのです~」


 アテナも気迫に押され、なぜか謝罪する。




 騒ぎを聞きつけてエリスがやってきた。


「まあ落ち着きなさい。この者たちの実力は私が保証しますわ。オークを一撃で仕留めたのをこの目で見ましたから」


 機転を利かせて助け舟を出してくれた。


「うぅ…。王女様が言うのなら…」


 流石のリーネも折れたようである。ひと悶着ありながらも、我々はシュバルツのパーティーに参加しオーク討伐へ向かう。



「良い、私の後ろから離れたら絶対にダメよ! オークを倒しただか何だか知らないけど、私は全く信じてないから」


 森へ向かう道中でもリーネの説教は続いた。しかし、魔法を知るには絶好の機会である。我々とて引き下がれない。



 後ろを歩いていた魔導士のアンに聞いてみた。


「我々は、魔法というものに疎いんだ。この機会にぜひ教えていただけないかね」


「は、はい! 魔法についてですか。何からお話しましょう…」


 まとめると、まず、魔法には火・水・木・光・闇の5属性があるらしい。これらは、ジャンケンのように互いに相性があり、例えば火魔法の弱点は水魔法、木魔法の弱点は火魔法となる。


 魔法を使用するには魔力が必要である。魔力については、魔法を使用するごとに減少する。時間が経てば自然回復するが、戦闘中などはポーションにて回復を行うらしい。


 魔法には階級があり、下から初級・中級・上級・超級・聖級というものがある。上級を習得出来れば地域でトップレベルの実力であり、超級は国に数人、聖級は世界に数人といったレベルらしい。




 アンから説明を聞いていた時、前方から唸り声と足音が聞こえてきた。


「皆! 静かに」


 ジョエルはそういって、皆にかがむように指示した。


 どうやら、オークのお出ましらしい。


 さあ。シュバルツのお手並み拝見といこうではないか。

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