第3話 『女神様』の説明回(手抜き風)

「ほのかが死んだって、どういうことだ!?」


 俺にとっては、自分が死んだという話よりも受け入れ難い話だった。


「そのままの意味ですよ。貴方の所為で世界が崩壊し、貴方の幼馴染みも死にました。」


「死って、俺の所為でって・・・?」


 「なんで」、「どうして」そんな言葉しか思い浮かばない。


「その説明の為に喚んだんですけどね。うーん、今の様な質問に答える形式ですとなかなか話が進みませんので、一旦ある程度まとめて『情報』を渡しますね。」


 そう言って『女神様』は俺の足下のタブレット状のモノへ手を伸ばし、指先で何か操作を行った。


「っつ!・・・」


 途端、俺の頭の中に大量の『情報』が流れ込んできた。

 その『情報』の量に、俺は立っていられなくなり、尻餅をついた後そのまま動けなくなった。


「それでは、今お渡しした『情報』の把握が終わりましたら、続きのお話を致しましょう。」


 その言葉を後に、俺の周りは全て白い壁のようなモノで覆われ、『女神様』の声も気配もしなくなった。

 白い球の中に閉じ込められた様な感じだ。


 ・・・・・

 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 どれくらい時間が経ったか解らないが、なんとか渡された『情報』を把握することができた。

 まぁ、『情報』の把握より、感情の整理の方が時間が掛かっているけど。

 内容としては以下の様なものだった。


・俺達の世界の名前は『第2世界セカンダリア』。

・命名理由は『女神様』が創った『2番目の世界』だから。

・世界は『魔素』を循環することで『神力』を生成し、回収するために創られる。

・人間を含む『魂』を持つ生物は、『神力生成の為の魔素循環経路』の一部に組み込まれている。

・生物全てが『魂』を持つわけでは無い(基本的に一定以上の知能がある生物のみ『魂』を持つ)。

・その中で、俺の『魂』は『神力生成の効率』を上げる超レアとのこと。

・俺達の世界にも『魔素』があり、それに関する法則である『魔法』や、『魔法』を使用する『魔術』があった。

・『魔術』は一般社会に対しては秘匿されていた。

・ほのかの家系は『魔術』を継承する一族だった。

・その中でも、ほのかは天才だった。

・ほのかは一族の偉い人たちに勝手に許嫁を決められそうになり反発した。

・ほのかは両親に相談し、俺と婚約し結婚することに決めた。

・俺の両親、姉、妹にも話は通して承認済みだった。

・ちなみに俺以外の俺の家族は、ほのかの家系が『魔術』を使えることを知っていた。

・あの朝、ほのかは俺に『魔術』の事と婚約の話をするため、『人払いの結界』を張って待っていた。

・あの場所が選ばれたのは、偶然前日にあの場所で小鬼が発生したので、俺に証拠として見せる為に『封印』していたから。

・ほのかの計画では、あの場所では『魔術』の説明と証明だけして、婚約の話は家に帰ってからする予定だった。

・俺に話を切り出す直前に第三者(ほのかの許嫁候補)から干渉され、『封印』していた小鬼が解放された。

・小鬼はその場で一番弱いと思われる俺を攻撃しようとしたので、即座にほのかに討滅された。

・討滅された小鬼は『特殊個体』だった。

・『討滅された小鬼の魔素』が『神力生成』の為、討滅したほのかだけで無く俺の体内も通過した。

・ほのかと俺の体内を通過した際に生成された『神力』は共に、通常通り『神力の貯蔵設備』へ送られた。

・『神力の貯蔵設備』へ送られた『特殊個体の小鬼に影響を受けた魔素を基にした神力』は、他の『神力』と反応して爆発した。

・俺の『魂』の『神力生成の効率』の影響により、爆発の規模が大きくなった。

・『神力』の大規模爆発により『第2世界セカンダリア』は崩壊した。

・直前に聞こえていた幻聴は、『世界を管理していた神からの警告メッセージ(神託)』だった。


 ほのか・・・

 好きだった相手と相思相愛だった喜びもあるが、事情があるとは言え交際を飛ばして結婚を計画して、さらに家族への根回し済みだったと言う情報に微妙な気持ちになる。

 いや、嬉しかったよ・・・

 しかも俺以外の家族が皆『魔術』のこと知ってて、俺だけ知らされて無かったなんて・・・

 ・・・


 情報整理する為に回想してたけど、また泣けてきた。

 この状態でも大分落ち着いたと思う。

 慟哭って、自分ですることになるとは思わなかった。

 『魂』だけだからか、寝ず飲まず食わずでも大丈夫だったからずっと泣いてたけど、良く心が壊れなかったと今更ながらに思う。

 そういえば、『魂』だけって言われたけど、この透けてる身体ってなんだ?『魂』の形なのか?


「それはわたしとコミュニケーションを取る為のアバターですよ。『魂』に残っていた記憶を元に作成されています。」


 久しぶりに自分以外の声を聞いた気がする。


「『女神様』?」


 ふと気付くと周りの白い壁が無くなり、元の部屋のローテーブル上のタブレット状のモノの上で『女神様』の方を向いて胡座をかいて座っていた。


「大分落ち着いたようですね。」


「お待たせしましたか?」


 自分としては、感覚的にかなりの時間が経っているので、怖々聞いてみた。


「『貴方の居た空間』は時間加速していたので、わたしとしては数秒程度ですよ。」


「そうなんですか・・・」


 なんか拍子抜けした。


「ちなみに貴方の時間だと、2億3千万秒位ですかね。」


「2億3千万秒・・・」


 とっさにどれぐらいか解らないな・・・


「7年ちょっとですよ。」


「7年・・・」


 まぁ気持ちの整理をつけるのには、それぐらいかかるのかな・・・


「ちなみに定期的に『魂』への修復処置はしていたので、『自傷衝動』に駆られたり心が壊れる様なことはなかったはずですよ。」


「それは・・・ありがとうございます?」


 なんと返して良いか解らなかったので、お礼を言ってみた。


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2023/10/15 『魔素』、『魔法』、『魔術』に関する記述を修正

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