第2話 『女神様』に会いました

「起きなさい、このお馬鹿ぁ!!!!!」


 すぱぁぁぁぁぁん!


 小気味良い音と衝撃が脳に響く共に俺は覚醒した。


「っつ・・・あれ?ほのか?」


 周りを見回してもほのかの姿はない。


 ・・・。


 が、それよりも周りの景色に違和感がありすぎた。


 なんだここ?


 そこはさっきまでほのかと居た路上ではなく、庶民の俺でも見て解る高級インテリアが配置されたリビングだった。

 しかもサイズが巨大な。

 近くに置かれているティーカップが俺の腰より高いから、推定1m位の高さがある。

 俺はローテーブルの上にあるタブレット端末の様なモノの上に立っている。


 ・・・


 俺は見たくないモノから目を逸らすように、再度周囲を見回す。


「巨人の家?」


「誰が巨人ですか!?」


 すぱぁん!


 またも良い音と衝撃が脳に響く。


「った、だれ?・・・」


 叩かれた頭をさすりながら声の方へ視線を向け、そこで初めて先ほどから話しかけてきている相手と思われる存在を見上げて絶句した。

 まさしく絶句。

 現実、テレビ、映画、アニメ、CG・・・今までに見たどんなモノより美しい、というより『美』の概念を人の形にしたモノ、『美の化身』?

 とにかく絶句する程の美(巨)人が俺の正面にあるソファに座っていた。


 ・・・


 すぱぁん!


 三度みたび良い音と衝撃が脳に響き、目が覚めたような感覚がした。


 魅了の状態異常にかかってた?


「はぁ・・・馬鹿なことを考えていないで、説明してあげるから落ち着いて聞きなさい。」


 美(巨)人さんが現状を説明してくれるというので、大人しく話を聞くことにした。


「まずは自己紹介から、わたしはロクサーヌ。貴方に解りやすく言うと、貴方達の世界の『創造神』です。あ、名前を呼ぶのは危険ですから『女神様』と呼びなさい。」


「って、危険ってなに?」


「この部屋は謂わばわたしの『神域』ですから、『わたしの名前を呼ぶ』、つまりわたしに『干渉』しようとすると反発が起きて、貴方の様に『神力』のない方は最悪の場合、消滅しちゃいます。」


「承知しました、『女神様』!」


 露出の少ない服の上からでも解る、恵まれたお胸を反らして名乗り説明してくださる『女神様』。

 部屋着だからなのか、お顔の印象よりも地味目なお召し物であられる。


 ぱぁん!


 痛っ!

 お胸へ注目したから?不可抗力だと思うのですが・・・

 っていうか、心の中読まれてる?


「・・・『女神様』、質問よろしいでしょうか?」


「なんでしょう?」


「さっきからぱんぱんぱんぱん、何で俺は叩かれてるんですか?」


「何でって、whatなら『神力』で創ったハリセンですよ。

 直接叩いたら消滅しちゃいますから。

 whyなら、畏敬の念もなく失礼なこと考えてるからですよ。

 ちなみに貴方は今、身体が無い『魂』だけの状態ですから、考えてることダダ漏れですよ。」


「え?身体?『魂』?」


 さっきは目を逸らしたが、自分の身体を見下ろすと、やっぱり透けてる・・・


「そう、身体なし、『魂』だけです。」


「『魂』だけ・・・」


 それってつまり俺は・・・


「死にました。」


「・・・」


 声は出なかった。

 なんとなく納得できてしまっているし、時間と共に自覚も出来てきて、自分の事ながら驚くほど落ち着いてるなと思った。

 でも・・・


 一つの事実に思い至り、明るい気持ちになった。


 ・・・あぁ、でもここに俺だけしか居ないってことは、ほのかは無事なんだ・・・

 ・・・良かった


「いいえ。」


 え?


「いいえ。」


 え?何が?


「いいえ。貴方の所為で貴方の居た世界は崩壊し、貴方の幼馴染みも死にました。」

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