女神様に責任とってと言われました

夏っ至ー

第1話 プロローグ

(ダメ・・・戻って)


 幻聴か?きれいな声だけど、ドラマかアニメの台詞であったけ?


「だめよ~だめだめって」


 連想で思い出した昔のギャグをつぶやきながら、バイト先のコンビニへの道を急ぐ。

 夏休みの短期のバイトでなるべく稼ぐために、親父の友人の店長に無理言って長時間のシフトにしてもらったってのに、初日に遅刻とかありえないだろ。


(戻りなさい・・・)


 何の台詞だっけ?

 戻ってたら遅刻しちゃうでしょ。

 しっかり稼いで最重要ミッション遂行の為の資金を貯めなきゃならんのだから。


 それにしても、今日はあんまり人通り無いなぁ・・・

 っていうか、全然人居ないんだけど?

 オリンピックかワールドカップの試合でもやってたっけ?

 スポーツ全っ然興味ないからなぁ・・・

 それでも朝の10時ちょい前に人通りまったく無いのはおかしいか?

 まぁ、くっそ暑ぃから、みんな外出たくないんかね?


 っていうか、全然店に着かないんだけど?

 さっきから歩いてるのに、2ブロック先に見える店に全然近づけてない・・・

 さすがにおかしいよな?超常現象ってやつか?

 それとも暑さで頭沸いたか?


「こーちゃん?」


 話は変わって、俺『橘 太陽たちばな こうせい』には、男子の誰もが羨む『美少女の幼馴染み』がいる。

 所詮『ただの幼馴染み』だろって?

 ノンノン、相思相愛(たぶん!)の『美少女の幼馴染み』がいる。

 うちのおかんに「おばあちゃんになる覚悟できてるからね」って揶揄われてた時の、「まだ早いですよぉ」の返しと照れ顔は思い出す度に・・・ふぅ・・・


 その相思相愛(きっと!)の『美少女の幼馴染み』がコイツ、『喜重よししげ ほのか』だ。

 なんかいきなり現れた様な気がしたが、暑さによる幻覚ではないよな?


「こーちゃん、どこに行くの?」


 5m程前方に居たほのかが歩み寄ってくる。


「俺はバイトに行くとこ、ほのかこそなんでいるの?」


「わたしはちょっと用事があって。バイトってそこのコンビニ?」


「そそ、ほのかの用事って?」


「う・・・ん、そういえば急にバイト始めたけど、なにか欲しい物でもあるの?」


 なんか急に話を変えてきた?


 気になったけど、そのまま話を続ける事にした。

 遅刻しそう?そんな些事わすれたわ!


「あー、まぁ内緒」


 おまえを『某ランドへ誘って告白する計画』の資金なんて言えねぇ・・・


「せっかく今年は帰省しなくて良くなったから、いっぱい遊べると思ってたのに・・・」


 ほのかは毎年長期休暇の際は帰省していて、なんでも将来本家の家業を継ぐ為の勉強をしているらしい。

 何の仕事かは未だに教えてくれないけど。

 今年もそうだろうと思ってバイトのシフトを目一杯入れてしまったんだ。

 「今年は帰省しない」って夏休み入ってから言われたってさぁ・・・

 もっと前に言ってくれよと、俺だって一緒に遊びたかったよ・・・


 その時、ほのかの背後で破砕音(?)がして緑色の何かが動くのが見えた気がした。


「あ・・・こおに?~~~!」


 ほのかが小声で何か呟いた様だが、聞き返す余裕はなかった。


「ほの!」


 俺は音に反応してとっさにほのかへ手を伸ばした。

 直後、頭から足先へ電気が流れたようなショックと、足下からあふれた白い光が世界を塗りつぶすように広がるのを、なぜか知覚しながら俺の意識はなくなった。

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