魔法少女とリボン(後編)
変身した明を見て、
「なんで! なんで!」
と興奮する茜に対し、
「どうして、ねえ、どうして」
と困惑する麗だ。
「うるさいな! 当事者の私が一番驚いているのだから、静かにして」
ツノの化け物がじりじりと近づいてくる。
「とりあえず、これはどうすればいいの」
明の問いに、
「シュパッとやって、バババッって必殺技を出せばいいよ」
と茜が答え、
「雲を固形物にするようなイメージよ」
と麗がアドバイスした。
「いや、どちらもわからない。あんた(茜)は何も考えていない感覚派で、おじょー(麗)はそれっぽく言う直感派でしょ。どちらもコーチにしたくない」
『手を前にだして、排泄物を捻りだすようにしなさい』
「いや、謎の声さん。汚いな」
明は昔読んだ漫画の登場人物をイメージして、ツノの化け物に向かって右手の平を向けた。
「くらえ。ビック〇ンアタック」
すると、円形の黒い空間がツノ化け物の下にでき、そこから無数の手が出てきた。手は化け物をがっしりと掴み、異空間に取り込んでいった。
「ん、これ、勝った……の?」
「多分」
麗は虚を突かれた顔をしていた。
「すごいよ! 先輩!」
茜は嬉々とした。仲間ができたことが嬉しいのか、新しい術者を見て嬉しいのか。おそらく両方だ。
* * * * *
「ふーん、あなたたちも変身して、魔法が使えるんだ」
麗がストーリーテラーになり、現在までの経緯を話したところ、明が言った。
三人は簡易テーブルを挟んで床に座っていた。テーブルには開封されたポテトチップスの袋、茜の500ml.ペットボトルのオレンジジュース、麗の紅茶カップ、明のコーヒーカップがある。
「なんで、私が変身できたのだろう。学園から離れるとできないんだよね」
「そうなのですわ。そこが謎で……」
「強さによって、変身できる距離が違うのかもね」
明はニンマリと笑った。努めて明るく喋っているようだが、陰鬱さはとれない。
「そんなはずはないと思いますけど……」
麗は考え込んだが、よい解答は思い至らなかった。
「化け物の距離はどうなるの? 学園長は半径ごひゃくめーとるくらいって言っていたよね」
茜は首を捻った。
「それなんだけど」
明が部屋の天井を見上げながら言う。
「おそらく、化け物たちが、連鎖したのではないかな」
「「連鎖?」」
茜と麗がハモった。
「うん。パラレルワールドのほうで、化け物たちにリーダー格が現れて、そいつが先導して、みんなが数珠つなぎか連鎖かして、行動範囲を広めたんじゃないのかな」
「あ、なるほど。そのパラレルワールドの影響で、この学園から離れた場所でも突発的に化け物をだすことができたということでしょうか」
「そう」
「え、でも、それって」
茜は困惑していた。
「これからも、学園から遠くで化け物がでる可能性があるってこと?」
「そうなるね」
「対処する方法はないでしょうか?」
麗が凛とした眼差しで言った。
「私にはわからないことだらけだよ。それこそ、あなたのおじさまにヘルプしてもらえば」
明は目を伏せた。
「うーん。難しいことわからないけど、とりあえず、先輩!」
「はい?」
「明日から、学校来ませんか?」
「まだ魔法研究会のこと、諦めてなかったのか」
「学校くるまで、毎日迎えにきます!」
「うざっ」
明はか細い声で拒否反応を示した。
「おやおや、楽しそうね」
いつの間にか、茜の背後にお婆ちゃんがいた。
「ばあちゃん、恥ずかしいから、あっち行って」
明は追い払うように手を動かした。
「はいはい」
お婆ちゃんは退出していった。
「あー、びっくりした」
茜が胸を撫でていた。
「妖怪かと思って、殴りそうになった」
「妖怪って、人の祖母のことを、失礼な子ね」
明は怒るというより呆れた。
「人間だと認識して、殴らなかったから、そこは褒めてあげてくださいな」
麗はよくわからないフォローをいれた。
「凄いでしょ。私の千里眼」
「意味がわからない」
明は頭を抱えた。
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