第23話 金貨100枚は……1000万円?

 「キノコで金貨100枚……」


 父タブラから金貨100枚をポンともらった。

 銅貨1枚100円としたら、金貨1枚は10万円くらい。

 金貨100枚は……1000万えん?


「ま?」


 ハンター目指そうかな?

 ちゃんとしたところで売ればもっとするらしいけど、面倒ごともついてくるらしい。

 普通は触れることはおろか見つけることすらできない、超特殊素材らしい。


「まぁ最終目標は大魔法使いだけど」


 魔術書とかきっと高いだろうし、お金を稼ぐ手段はあったほうがいい。

 魔道具とかもほしいし。


「ふんふん♪」


 書斎いっぱいに魔術書を詰めて魔道具に溢れたお屋敷。

 魔術研究をするための施設に美人眼鏡メイド兼助手。

 ああ、早く魔法に触れたい。

 魔術カモン!


「フンフンフン!」


「ほっほぉーー!」


 ああ、町をあるけば武術しかない。

 そういえばこの町の名前『メルケン村』っていうらしい。

 武神国家ケイネンのラルーア領メルケン村。


(ラルーア領かぁ……)


 面倒ごとの予感しかないね。

 僕は早く魔法を使いたいのに。

 とりあえずはシャルルに勝てるように修行に励もう。

 母様の知り合いの魔術師を紹介してもらうんだ。


「あらぁジンちゃん! いっぱいお買い物したわねぇ?」


「……うん」


「ほらほら、今日もリコの実がいっぱい生っていたから、一個あげるわぁ。 うーん、ほんとジンちゃんは可愛いわぁ!」


 リコの実は結構いい値段のする果実だ。

 よくくれるおばちゃんの目が怖い。

 ベタベタ触ってくるし。


「うふふ。 お家にいっぱいあるのよ~? 寄っていかないかしらぁ~?」


「急いでるから」


「あらぁ、残念。 修行頑張ってね、ジンちゃん」


 誰がいくかババァ!

 怖いからなるべく近づかないようにしよう。

 イエスショタ!ノータッチ!でお願いしたい。



◇◆◇



 「おお! 師匠に差し入れとは気の利く良い弟子じゃ!」


 父と森で取ったビノの実を持ってきた。

 蜥蜴の皮膚のような外殻を向かなければ長い間保存できるらしい。

 中は茶色いソラマメでこの国の主食だ。

 他にもキノコをたくさんと野草も少々。

 それに角兎の干し肉。 胡椒がないのでハーブ漬けにしてある。


「毛皮ー! 最近寒かったから、嬉しいのじゃ~♪」


 もうすぐ冬だからね。

 毛皮のマントを買ってきた。

 薄手の胴着しか着てるのみたことないし。

 鬼人は寒さに強いのだろうか?


「この大工道具は……まさかッ!?」


「家、直す」


「神弟子っーー!!」


 ルーナのお屋敷……風が吹けば飛びそうなボロ物置小屋である。

 柱は腐ってるし穴だらけだし傾いている。 作り直したほうが早い気さえするぞ?

 まぁ時間がないので穴を埋めて補強していくしかない。

 家の周囲に風よけの壁を作ろう。

 それを支えにボロ小屋を立て直す。


 それと、ボロ小屋の中のガラクタは全部断捨離するから。


「鬼弟子ぃいい!?」

 

 汚師匠は黙っていて欲しい。

 というか……。 


「……臭い」


「むっ」


「師匠、くさ――」


 俺の手は師匠の手に遮られる。

 鬼の手。

 いや、結構ゴツゴツしてるんだね。

 鍛えられた手だ。


「待つのじゃジンよ。 わらわもまだピチピチの12歳の乙女じゃ。 その先は言ってはならぬ! ……よいな?」


 あまりの鬼の気圧力に俺はコクコクと頷くしかなかった。

 ていうか師匠臭いんだけど?

 

「ぬぐう!? 目で語るでなぁい! ……仕方ないじゃろ? 最近、井戸の水が冷たいのじゃ……」


 武術家なら水浴びくらい冷たくてもしようよ。

 よよよ、としなだれるルーナ。

 すらっとしている彼女は無駄な脂肪がない。必要な脂肪も絶壁なのだけど。

 ひょっとして寒いの苦手なんじゃ?


「お風呂いく?」


「行くのじゃーー!」


 飛び跳ねて喜んだルーナに手を引かれてお風呂に向かう。

 この間いったばかりだけど、お財布は暖かいのでいいだろう。

 上機嫌のルーナは跳ねるように市場を突っ切っていく。

 たくさんの微笑ましい物をみるような視線の中で、ドロドロとした増悪の視線が向けられていることに僕は気づいていなかった。


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