第21話 虹色カブトムシ

 虹色に光るカブトムシを捕まえた。


「父、捕まえた」


「うお!?」


 父タブラと魔の森に来ている。

 前回は魔の森の前の森だったけど。

 今回は中に入っている。

 さっそく捕まえた珍しい虫をタブラに見せびらかすと凄い驚いている。


「ワングアンカブトじゃないか!? ……どうやって見つけたんだジン?」

 

 虹色に光るカブトの角辺りが大冠のような紋様が浮かんでいる。

 イケメン父は興奮しているようだ。

 ハンターはやはり子供のように珍しい物が好きなのだろうか?


「ん、擬態してた」


「……そりゃ、そうだろうな? だからどうやって……」


 この虹色のカブトムシ、捕まえる前は周囲に溶け込んでた。

 見た目も気配も。 擬態してたんだろうね。

 でも普通に・・・生命力は見えたから簡単に捕まえられたけど。


「まぁいいか、たまたま移動するところに出くわしたんかな? 運がよかったなジン」


「そうなんだ?」


「ああ。 かなり高ランクの採集物だぞ? このデカさなら200万ギルはするだろうな」


 本土ならなと父は言う。

 しかし200万ギルは多いのだろうか?

 この間もらったお小遣いは銅貨3枚。

 団子なら10本だ。

 

「200万ギル?」


「金貨20枚だぞ」


 あ。 凄い大金な気がする。

 この異世界でも金の価値は高いのだ。

 

「まぁ売るにしても本土のギルドでもいかないと、買いたたかれるけどな」


 預かっといてやると、虹色カブトムシは父の手へ。

 俺の手の中ではジタバタしていたのに、父の手の上ではぴったりと動きを止めた虹色カブトムシ。

 なんだろう……コツでもあるのかな?

 チャラいけど流石はハンターなんだろう。


「……」


「ん?」


 ジッと父タブラが俺の瞳を見ていた。

 あまり顔を合わせようとしないので珍しい。


「くはは、狩人ハンターには運も重要だからな。 ジンはいいハンターになるぞ?」


「僕は魔法使いになるよ」


 そういうと余計に笑いながら父は先に進みだした。


「よっと」


 待ち伏せしていた角兎の突進を軽く躱しながら。

 角兎は首を切られていた。

 なんとなく見せた動きだったが、凄く軽やかだ。

 武術なんてしないくらいに言っていたのに。

 とても素人ではない。

 まるで暗殺者のような身のこなしだった。


「……ずいぶんと奥に移動したな」


 森を歩きながら何かを確認し呟いたタブラ。

 熟練のハンターなら森の様子で色々わかるのだろうか。

 父の森の歩き方を真似しながらついていく。

 口数は少ないがゆっくりとした移動。

 木々の説明や使える薬草を教えてくれる。

 意外と面倒見が良い。


「父、コレは?」


「あー、これも毒草だな。 野草を見分けるのは結構難しい。 最初は木の実と茸類がいいかもな」


「キノコも?」


「そうだ。 ここの、メルケン村付近の魔の森ならあまり毒茸はないな。 少ない毒茸だけ覚えておけばはやい」


 なんか茸って毒持ちが多いイメージ。

 まぁ前世とは違うってことか。

 あっ、擬態キノコ? なんかぼんやりと朧なキノコが生えてる。

 んんっ!? 

 おばけみたいに移動してる!


「おいっジン!?」


「捕まえた!」


 ふわりと実態のなかった朧なキノコ。

 まるで幽霊のように移動して逃げようとした。

 捕まえたらちゃんと実体になって手の中に納まった。


 これもレアなんじゃないか?


「っ、ばかな!?」


「?」


 父タブラにドヤ顔で見せつけたら、めちゃくちゃ驚いてた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る