第13話 朝市はおばちゃんリンクでおやつを稼げ
僕の町では早朝に市場が開かれている。
その日に取れた野菜や果物が山で積まれ、新鮮な川魚や卵、それに肉が並ぶ。 日用品を売っているおばちゃんや、露店を薬草だらけにしているおじいさんなどもいて、色んな物が売られている。
人が多く活気がある。
市場の喧騒は長閑な町の目覚ましなのだ。
(冬を越すのに必要な物……)
大量の薪と毛布と食料……。
僕のなけなしのお小遣いではどうにもならない。
「あら、ジンちゃん! 今日も可愛いわぁ!」
市場を散歩すると毎回僕はおばちゃん達に猫のように可愛がられる。
体育会系が多いからかスキンシップが激しい。
「はぁはぁはぁ!」
息がクサ荒いんだよ、ばばぁ!
「今日はリコの実がいっぱいなのよ~、一つあげるわね!」
一人がくれると皆がくれるおばちゃんリンク。
精神的ダメージを負ったが、僕はたくさんおやつを手にいれた。
この村の主食は豆だ。
茶色いソラマメのような大きな豆。 とても栄養があって保存もしやすい物らしい。
僕の家でもよく食べる色んな種類の豆を混ぜた雑炊のような、オートミールのような物がこの町のソウルフードだ。
町にパン屋は一つだけで、趣向品扱いの高級品である。
町の近くの森では森の恵みがたくさんとれるらしい。
魔の森が近くにあるとそういった傾向が強くなるのだとか。
森にも魔物が入ってくることがあるから危険だと、メリサ母様には絶対に入るなと忠告された。
(薬草採取が定番だよなぁ~~)
RPGで言えば、最初は薬草採取のクエストをこなすだろう?
特にこの町の市場では結構な値段で取引されている。
その理由はどうも薬草茶にあるらしいが……。
みんなが独自の薬草茶を作るブームでもあるのだろうか。
町の市場でおばちゃん達におもちゃにされながら、僕はこの町の情報を手にいれていた。
◇◆◇
「父、遊ぼう」
「ん?」
僕は休日の父親タブラに遊びをせがんだ。
二日目の午前中は装備の整備や補充、夜は飲みにでかけて賭博にいくらしい。 この町の昼は武の熱気が包み、夜の町は賭博の熱狂に包まれる。
三日目はまったりと過ごしているようなので家族サービスをしてもらおうと思う。
もっとも今まで僕は父タブラに遊んで欲しいなどとせがんだことはないので、イケメン親父は少しびっくりしているようだ。
「別にいいけどよ~~。 ジャラコでもやるか?」
「……タブラ?」
「冗談だ、メリサ。 そんな睨むなよ」
ジャラコとは町で流行っている賭博ゲームだ。
前世でいうところのマージャンみたいなやつ。
賭博ゆえに子供は出入り禁止なのだ。
「ジャラコも早いうちから鍛えておいたほうがいいんだがなぁ……」
酒に女にギャンブル好きな父。基本的にみんなが武術を嗜むこの町で、武術の訓練に参加しない父タブラの評判はあまりよくない。
特に見た目がいいから同性からやっかみが多いらしい。
まぁ母メリサの人気が高いのも原因があるようだけど。
「森に遊びにいこ?」
僕は子供らしく森で遊びたいと父親にせがむ。
子供は元気に森で動物採取でもするのだ。
ついでに薬草とか需要のありそうな物を
「ん~~? ……まぁ、いいか」
タブラは一度メリサを窺いつつ、微笑む彼女を見てうなづいた。
父との初めてのお出かけが決まった瞬間である。
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