第12話 最終目標は……


 ルーナの道場から林の抜け道を行くと。

 風が吹けば吹き飛びそうなボロ小屋があった。


「ここが、ルーナの家?」


「うむ。 わらわの城じゃ」


「……」


 僕の目の前には使わなくなった物置小屋、いや朽ちたボロ小屋がある。 柱は所々腐ってて、穴の開いたところは草で塞いである。 なんか若干傾いてて、いつ倒壊してもおかしくないとおもう。


「うわぁ……」


 中はさらに酷い。

 整理整頓という言葉は彼女の辞書にはないのか?

 前世のホームレスの城ですらもっとまともだったぞ。


「これ、なに?」


「わからぬ! 落ちていたので拾ってきたのじゃ」


「……」


 何かに使えると思ってな! とのたまうルーナ。

 片づけられないタイプの人種か。

 メリサ母がこの惨状を見たらなんというだろうか。

 母は綺麗好きだ。


「竈もないけど、食事はどうしてるの?」


「うむ、露店ですましておったのじゃが、路銀も尽きてしもうたのぉ……」


「……」


 だから腹が減って倒れてたんですか。

 ダメ人間なんですか? ダメ鬼人なんですかぁ?

 僕はあまりのわが師のダメっぷりに冷めた視線をむけてしまった。


「っ、そんな、瞳でわらわを見るでないのじゃ~~」


 倒されたシャルルのように捨て台詞を吐きながらルーナは尻尾をまいて逃げていった。


「はぁ……」


 とりあえず、片付けでもしよう。

 母譲りの綺麗好きの血が騒ぐのだ。



◇◆◇



 僕の最終目標は『大魔法使い』になること。

 当面の目標は母の知り合いにいるという魔術師に会うこと。

 そのためにはシャルルを倒さなければならない。


「ふぅ……こんなもんかな?」


 ボロ小屋の中の不要な物は問答無用で捨て去り、埃を払い小石をどかし虫を捨てた。 穴の修理と小屋の傾きもどうにかしたいけど、今日は無理だな。

 大きめの石を集めてかまども作った。

 

「しっかし……どうやって冬を越すつもりなんだ?」


 この村にも冬はやってくる。

 さほど長くは無いが厳しい冬だ。

 こんなボロ小屋では凍死しちゃうぞ……。


「う~ん……」


 知り合ってしまった以上、美少女に凍死されるのは目覚めが悪い。

 なによりルーナの格闘スタイルは僕にぴったりな気がする。

 母の脳筋格闘術と違って簡単な・・・感じだし。

 女の子を殴るのって抵抗あるんだよね。 まぁ……みんなかすりもしないんだけどさ、僕の攻撃なんて。

 

「合気道てきなやつなんだろうか?」


 ルーナに投げ飛ばされたシャルルは、自分が投げられているとわからずに、受け身がとれずやられていた。 反射神経の化物である猫人のシャルルがだ。 

 あの技が僕にもできれば、勝てるはず!


「なんとかしますか~~」


 僕は目標を達成するため、まずは師匠の身の回りの世話からすることにした。


 


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