第11話 ルーナVSシャルル

 ルーナはすらりとした美人だ。

 身長は成人女性とほぼ変わらないし、綺麗な顔立ちで十二歳には見えない。 言葉遣いは変だが、落ち着いた雰囲気もあって二十歳くらいにも見える。

 種族によって成長の速度が違うのかもしれない。


「ボッコボコにしてやるにゃ!」


 シャルルも僕より背が少し高い。

 百二十センチくらいだろうか。

 猫耳をあわせればもう少し高い。

 といっても、体系的に子供にしか見えないのだけど。


「変態だの年増だのと……、少しお仕置きが必要かのぉ?」


 変態女に気を付けろ。

 と、母によく気を付けるように言われることがある。

 どうも強い女ほど、可愛い男を欲する傾向があるらしい。

 ショタ好きの武術女子による可愛い男の子誘拐事案が発生することがあるらしい。

 普通に怖い。

 筋肉ムキムキ女に攫われたらトラウマ必須なのだけど……。

 

「いつでも、かかってく――」


「――ぃにゃ!」


 シャルルの突撃。

 間合いの図り合いなどない。

 一瞬で二人の距離を消した踏み込みの鋭さ、思い切りの良さ。


「やぁあああああああああああああ!!」


 雄叫びとともに無数のパンチが、ルーナ目がけて襲い掛かる。

 

「……ふむ」


 しかし、ルーナはそのすべてをかわしている。


「まるで暴風のようじゃのぉ~~」


 そう、あのパンチの連打に巻き込まれると、首がねじ切れそうになるほど危険だ。 

 僕の覚醒のきっかけになった原因にゾッとする。


「にゃッ、にゃりゃりゃりゃ!」


 フック気味の左右の連打。

 下からルーナの細いアゴを狙っている。


「――っはぁにゃあああああああああ!!」


 ルーナにいなされ左右に体勢を崩されても。

 すぐにシャルルは立て直す。

 柔軟な体、バランス感覚、猫人族の脚力が追いかける。

 大きな瞳は、獲物を狙いまっすぐ見つめている。


「ふふ」


「にゃ?」


 これまで構えは見せていなかったルーナが構えた。

 足を少し左右にずらし、上げた片手の甲を相手にみせる。

 まるで相手にかかってこいと、挑発するようにも見える。


「なめるにゃん!」


 その挑発に乗るように、頬を膨らませたシャルルがさらに速度をあげて突っ込む。 

 さらに距離をつめて、超近距離でボディを狙うつもりだ。


 でももう、シャルルの連打は始まらなかった。


「ふにゃ? あにゃにゃにゃ!?」


 暴風は嵐を生む。

 打ち込んだはずの猫耳幼女は、宙を舞った。


「――――ぎにぅゅッ!!!!」

 

 地面へと叩きつけられたシャルル。

 一瞬だった。 ルーナの腕がタクトのように振るわれ、人形のようにシャルルが操られる。


「ありゃ、もう終わりかのぉ?」


 受け身を取れなかったシャルルは気絶してしまった。

 暴風は嵐に飲み込まれてしまったようだ。

 


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