35章

第556話 帰郷①

 総括の方は相変わらず自信過剰が先に来て、部下らに期待するしかない。後進の育成という点では多少楽になるが、そもそも彼のような者を頭に据えておかねばならない状況が腹立たしい。


「『ルッサ』に関しても私達の指示があるまでは手出し無用。よろしいか?」


 マイアたちは頷くしかない。実際に裏切り行為を受けたの暴走をゲーマンは危惧して釘を刺したが、どうやらこれは取り越し苦労のようだった。隊員の間にそれほどの執心は見受けられない。


 各々肚の底は明かさぬままに、その詰問は終わった。



 怒り心頭のマイアに口を利いてもらえず、ジョウはそれからしばし居心地の悪い生活を強いられた。『レンハイン』との戦い、治安維持活動、モノら『直属部隊』への指示と多忙ではあるが、どうしても美女の事が気になって集中できない。


 ようやくそれが解けたのは、呼び出されて『仕立て屋』に赴くと先んじてクラハの姿があった時である。


「ジョウ、まず言うことは?」


「あ、ごめん。もうしねえよ。でも、こいつらのことは………」


 ヒャンナとマキシーを一瞥する。長女次女はすでに己が『避難所』へ退いていた。


「まだここにいるって………」


「二人も『参加者』よ」


「なぬ?」


「当然、クラハもね」


 詳しい説明はしなかったものの、例の『計画』ことを指しているのは明白だった。意外だったのは、4女と5女を同棲させた上でそれを話していることだ。


 奇妙な話だが、少年は自身がになることとマイアの『計画』を別物と認識している。『兄』としての自分と『黒龍団』の自分が異なるように、あくまでも自分と他は分けて考えていた。戦いの場における機転や考え無しの幼稚さ、『覇王』の残虐性等が同居していることも含め、ジョウ自身妹を喪ってからは自らを見失っていると言えた。


「これから『黒龍団』はさらなる発展を目指すのよ。あんたもしゃんとするの」


「わーった、わーった」


「しっかりとね。あと、クラハの言うことは必ず聞くのよ」


「ん、クラハ? なんかあんのか?」


「少し考えがあります。その時が来たら教えます」


「二人もそれでいいわね? まずは生き残るのが大事よ」


「承知なのだ」


「わかった」


「あ、そうだこれ葛藤解けお前ら。動きにくくて仕方ねえよ」


「………いやなのだ」


「おい、聞いてなかったのかよ? 『避難所』に戻んのが一番―」


「ジョウ、悪いんだけどもうしばらくそのままでいてもらうわ」


「なんだよお前まで」


「御二人に残ってもらわないといけないのです」


「はあ?」


 当然のように納得できないジョウであったが、やり取りをしてもその理由は後ほどと譲らない美女と丸顔少女に見切りをつけ、そのまま娘らと行動を共にすることになった。ただ、二人の人柄と『計画』のこともあり粗末な扱いはしまいとの信頼がある故である。


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