第553話 北の謀略⑬
「………マイアさんに言いますから」
「いいぞ、俺悪くねえもん」
帰還の流れが出来ると、動揺する他の隊員らにもその準備に勤しむだけの冷静さが戻って来た。それぞれが、改めて副団長の力の凄まじさを目の当たりにして動揺が隠せない中、モノと娘たちはまた別の光明と憤懣を見いだしていた。
改めて召喚された『
そんな中、ジョウは冷気と戦いつつ冷静に先ほどの一戦を反芻していた。結果だけ見れば力押しによる圧勝であるが、その実は全く別の感慨を少年へもたらしている。
『
周囲からの話を聞くに、この世界にはゼタ、ムードなる『
真正面からのぶつかり合いではなく、裏をかき相手の力を利用する。それが自分の生きる道であろうと確信に近いものがあった。敗北、苦戦ではなく何のことはない戦いでこの思考に至ったのは、それが『ルッサ』の裏切りと『兄』としての覚悟が同時に訪れたためかもしれなかった。
『リクルチュア』へ帰還した後、ジョウ、クラハ、ジシルたちと娘らは報告のために登城を命じられた。同盟相手の裏切りという重大ごとでありながら、あっさりとその場は流れ、少年はいぶかしみつつも『黒龍団宅』へと戻った。
しかし、本番は後日であった。まず、マイアに呼び出されて殴られた。理由は無論、『ルッサ』兵らへの宣言である。
「このバカ! あんたも何してんのよ!」
「すいません」
「な、何そんなに怒ってんだよ?」
「本当に………バカ! いい? もう何も言うんじゃないわよ!」
その言葉から程なく、城からの使いが来た。先日同様に『ルッサ派兵隊』の一同と、マイアとジーク、それから『エスセナリア家』の娘が顔を突き合わせて、ゲーマンらからの詰問を受ける羽目になった。
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