第483話 拡張①

 事実、情報収集に関してはリオウは中々の腕を持っていた。伊達に長い間、傭兵や賞金稼ぎらを相手にしてきた訳ではないらしい。


「それじゃ、そっちはあんたに任せるわ。あんまり動かないで、杖が取れるようにしなさい」


「わかってら。エモルとかジークにも手伝わせっから」


「俺はマイアとだな」


 もたげる嫉妬心をジョウは押しとどめた。宝石青年に美女を《取られた》ようで面白くない。


「うちの兵も選ぶのだぞ」


 城の出入り口で別れ、それぞれが果たすべき命へと向かい合うのだった。



 ジョウは新たにあてがわれた『黒龍団宅』へと向かった。城からそう遠くないところにあり、『トット』で拠点としていた住居と同じく『リクルチュア』が外からの客人用に用意している邸宅群だ。


 一般的な民家と同じく風通しと湿気対策を重視して建てられた木造のそれは、それほど上等な造りでないものの、防虫用の花を含めた家具一式は揃っており、取り決めで食事はすべて用意してくれるということもあって、生活するうえで不自由はないのだった。


ただ、仕立て屋に部屋を持つマイアたちを除いても、『黒龍団』全員を押し込められるほどの余裕はなく、あぶれた者達は未だに城の護衛団室で寝泊りをしていた。


 その《城組》となったジシルとその団員たちは不満を募らせ、ジョウが約束した《ねぐら》を案内してみても、希望通りの物件でないと突っぱねて来た。少年は気分を害したものの、それ以上ジシルらはごねず、次に物件が手に入ったら自分たちに優先権があると留めたためその場は収まった。


「あ、お帰りなさあい」


「話ってなんだった?」


 ジョウの家には、必ず何名か団員がいた。護衛と宅整備のためという名目であるが、宅が一番上等というか清潔であるため居心地がいいからというのが本心だった。一軒だけ二階があり、間取りも広く風呂も大きい。ジークやサクラは素早く寝具を空き部屋に置いて、しれっと自分の領地だと周囲に示していた。


 さらに、仕立て屋の時と同様に、覚えを良くしようと貢物を持ってくる輩もいた。どこからか、『黒龍団』はマイア、ジョウ、ハレニーの3本柱が動かしていると噂が流れ、実力者かつ幼いジョウなら与しやすしと見なしたらしい。


 少年はあまり関心がなく、大抵はエモルやジーク、でなければ手近な者にそのまま流した。そのうち、彼の家に居れば先んじて貢物を手に入れられるとなって、見苦しい争いの末交代制で『護衛と宅整備役』が決められたのだった。


 仕立て屋を中心としたマイア、土地を借りテントを広げているハレニー団、『黒龍団宅』のジョウ、そして《城組》、この時期の団はこうして4つに分けられていた。


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