第228話 お引越し③
「確かに、では、わたくしの提案は無意味と?」
マイアはしばし考え込んだ。何事も表裏一体、備えられた資金や
「ジョウとクラハで、お嬢さんを護衛しなさい」
「おっ」
「後悔させませんわよ」
「ええ、わたしはダメなんですかあ?」
「あんたは留守番よ……いいわね、クラハ」
「はい」
マイアはクラハに目で合図をした。その後、彼女と二人きりで、避難所での資源類への《対処》について協議を重ねた。
「強引にやれって訳じゃないの、色々あれな流れだったら、ね」
「一ついいですか? マイアさんご自身で向かうのが確実だと思います」
美女の授けた策はかなり複雑かつ、その場での判断、瞬発、柔軟性が必要なものだった。ジョウとまた旅に出れるのは良いのだが、キャコという余分もおり、聞いているうちに、少女は美女自身が担った方が確実ではないかと思った。
「独り立ちの練習よ、それに、あたしだって色々やることがあるの。まさか、このままここで、ずっとのんびりできるなんて思ってないでしょ?」
マイアが蛙男リオウらと、やり取りのために外で出ていることは知っていた。交流を怠ればそもそも依頼を受ける機会すら与えられない、クラハもそれはわかっているため、それ以上の疑問を口に出すのは止めにした。
「ジョウが連中を殺して、名は売れたはずよ。『ミノフ』にだって、まだまだ利用価値があるって思わせなくっちゃ」
《それ》を出せば丸顔の少女は反論できぬとわかっていたためではあるが、美女は自分にも言い聞かせていた。困窮してはいないが、依頼が途切れているのは事実である。バニャンを逃したことで『ミノフ』に思ったよりも好印象を残せなかった。
何をするにしても、金を稼いで食っていかねばならない。稼ぎをほどほどで止めていなどというのは、底なしの阿呆か億万長者に限った話だ。賞金稼ぎ崩れの自分たちは、依頼を受けるのが生きることと同義だ。仕立て屋も建てる必要がある。
無論、そこまでの本心を皆に明かすことはない。無意味であるばかりか、動揺を誘うだけだからだ。何よりマイアは、弱音を素直に他者に明かすのをひどく嫌っている。
豪邸に執着を見せるエモルをあしらいながら、マイアはそれぞれに出立の準備をさせた。といっても、避難所の確認が主だったものであるから、運ぶものといえばせいぜいが食糧程度。療養でなまったジョウの復帰補助に時が費やされた。
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