第15話 代償と願いと
「絶対に持ってた方がいいですよ」
カラフィナの口を塞ぎ、意味深に目くばせしながら、ヨムはくり返しジョウを説得した。今更だが、ヨムにも何か隠し事があるのは明白だ。少なくとも、話している内容を鵜吞みにするのは危険そうだ。
「ったくよお……」
それでも、ジョウは二人から離れようとは思わなかった。妹とカラフィナを重ね、襲撃者たちから彼女を救った後、一時の昂奮が冷めてもその死を恐れていたのだ。怪しげなヨムにしても、それだけで疎外しようと至らない。全てを失ってから、初めて得た繋がりだった。
せめて、日常が遅れるようになるまでにはしてやりたい。そのためには
「他のる……ル……?」
「
「そうそれだ」
並べられた
「入れ替えたりはできないのか? やっぱり、何かあるたんびに肉持ってかれるのはつらいぜ」
水を得たりとヨムは身を乗り出した。どうやら、ジョウのその言葉を待っていたらしい。やはり何かあるのではと少年は疑ったが、表情には出さないでおいた。
「ですよね。もっと楽に使えるのがあるんですよ」
「……なら、なんで最初にそっちを出さなかったんだ?」
「いや、それは慌ててたのと……ほら、あの時は『
「ん……」
どうにも納得はいかなかったが、ジョウは
「あ、それとかどうですか? 『
「剣が豹みたいに出て来るのか?」
「いや、それは現具の型じゃ」
きょとんとするジョウを見て、衒学趣味が刺激されたのか、カラフィナは得意げに『
「『
「召喚……現具?」
「
ヨムは『
「召喚、現具、憑身……せっかくだから試してみましょうか」
ヨムが札を持って小屋から出るのでジョウも続き、カラフィナものそのそと這い出て来た。
「まずは、『
「待てよ、こいつは使っても大丈夫なんだろうな? 肉抉られたくねえぞ」
「大丈夫ですよ。ささ、これもジョウさんのものです」
ヨムに勧められるまま、さし出された札の所有を認めようと手を伸ばしたジョウだが、はたと思いとどまって疑わしそうに札と彼女を見比べた。
「カラフィナが言ってみたいに、何か代償とかがあるんじゃねえか?」
素早く少女の口をふさぐと、ヨムは陰りのない笑顔で答えた。
「そうでしたそうでした、確かこれは少しだけ熱いんですよ。炎を纏ってるから」
「少しだけなあ……」
胸の傷に目を落とすジョウだった。『
「なんで、その代償を隠すんだ」
「えっと、隠してるんじゃなくてですね、私もすっかり覚えてるわけじゃ……」
ずいと、ジョウはヨムに顔を近づけ、抉れた胸の肉を指さした。
「あのな、これは仕方ねえ。あの時は急だったからな。お前らにも、他に色々俺に言えねえことはあるだろ。でもー」
『
「これを使って本当に大丈夫なんだな?」
カラフィナ、そしてヨムを助けるために使い、秘した代償で倒れ、それが叶わなかったらどうする。とは言わなかった。それはあくまで自身の都合であり、二人から乞われたものではなかったからだ。
真剣味の感じられる強い口調であったが、そばで聞いていたカラフィナには動揺が見えず、むしろより一層興味を深めて二人を見やっていた。
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