単にイヤ。
異世界転移者が多すぎて受け入れ態勢が割と整っている
再び目が覚めたとき、俺は他の転移者たちとともに長蛇の列に並んでいた。
(なんだこれ、なんかこれどっかで見覚えがあるような……)
来たことがないはずの場所なのにデジャヴュを感じていると、職員らしき女性がこちらへ向かって歩いてきた。
異世界人「こちらの世界は初めてですか?」
俺「え? あ、はい」
異世界人「まずは転入届けを作成していただきたいので、こちらの申請書にご出身・ご年齢・元の世界でのご職業等必要項目をお書きになってお待ちください」
俺「役所か」
異世界人「すみません、後ろが詰まってしまいますので、私はこれで」
乱暴に紙だけ押し付けて去ろうとする職員に、俺はなぜか必死になって食い下がった。
俺「私みたいに異世界から転移してきちゃった人って、そんなにたくさんいるんですか??」
彼女はいかにも不機嫌そうに答えた。
異世界人「去年の国勢調査によりますと、我が国全体の転移者人口は王都だけでも500万人に上るそうです」
俺「多っ」
異世界人「毎年11万人ほどが転移してくるのですが、アジア系の割合も年々増えてますよ。飲食業や食品小売業に従事していることが多いかと。中華料理屋とか、アジアンマーケットとか」
俺「アメリカですかここは。っていうか、異世界に来てまで中国人扱いされるなんて……」
異世界人「これはこれは、失礼しました。では私はこれで」
彼女は無表情で謝ると、すぐに行ってしまった。
その後、流れ作業のように身体・荷物検査、職員による必要事項の確認、顔写真撮影・指紋登録などをこなし、俺はようやく解放された。
「やっと入国できた。これで俺も……って、空港かな」
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