パラレルワールドの日本に来てしまった

 ごく普通のサラリーマン佐藤幾多郎さとうきたろうは有給を消化するため、羽田から沖縄へ向かう飛行機に乗っていた。しかしその途中、謎の乱気流に巻き込まれ、激しく揺れる機内で意識を失った。


「ミスタル゛、クム゜スタッヤー?」

 不意に、何語ともつかぬ言語で声をかけられて彼は目を覚ました。

「え?」

 彼は椅子に座ったまま、ただ寝ぼけ眼でその女性を見つめ返した。そこにはすらっとしたフライトアテンダントが立っていた。

「ビンヴィンドゥ・サ・伊波イナム゜・インタル゛ナシナル゜・エル゛ポル゛ト゜!」

 彼女は真っ赤なリップの塗られた唇を大きく動かして、ニッコリと笑った。次第に意識を取り戻してくる中で、彼はやっと異変に気付いた。

(沖縄って、こんなに言葉通じなかったっけ)

「すみません、日本語ができるスタッフの方はいらっしゃいますか? 外国語は苦手でして……」

 佐藤幾多郎としては、ごく普通に話したつもりだった。

 しかし、彼女は彼の日本語を聞くなり怪訝な表情で黙ってしまった。

「そんなまさか、聞き取れないのか? アー・ユー・ジャパニーズ?」

 よほど私の訛りが聞き取りづらかったのか、彼女は少し顔をしかめたが再び笑顔で答えた。

「イェス、アム゜・ニーズ。ワ゛ー日本人リップンランザイビーン」

(なんだこの言語は。ウチナーグチと似ているが、なんだか違う感じもする)

 彼はますます困惑した。

「ソーリー。アイ・ドント・スピーク・イングリッシュ」

 なけなしの英語でそう言うと、彼女は仕方ないと言わんばかりに肩をすくめて、今度は別のスタッフを連れてきた。

 その人はで話し出した……のだが。

最終さいしゅー起󠄁きゃすてな、貴樣きーさま大亊でーじざすけ?」

(やっぱり聞き取れないや)

 仕方なく、佐藤幾多郎は再び英語で話すことにした。

「ウェア・アム・アイ?」

「ディス・イズ・伊波イナム゜、サル゛」

「ウェア??」

ン、サル゛」

 どうやらここは、らしい。

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