召喚の理由

 気がつくと、私は魔法陣の真ん中に立っていた。

「来たれ、異界の者どもよ!」

 長い髭をたくわえた老人が詠唱を始め、刻まれた神聖文字が金色に光り出した。

「何だ? 何が始まったんだ……?」

 訳も分からず周囲を見回すと、私と同じように召喚された人々が困惑した様子で立っていた。主婦に学生、サラリーマンなんかもいた。

「我にその命を捧げ、我が血肉となるがよい!」

 老人がそう叫ぶのと同時に世界が暗転し、私は延々と肉の塊が続く無間地獄に放り込まれた。

「イッテ……、なんだこれ?」

 突然、私のうなじから血が流れ出し、私は傷口に手を当てた。するとそこには神聖文字の烙印があった。そしてそれは、その場にいた全ての人々にもあるようだった。   

 しかしそれが「」を意味するなど、日本人の我々には当然知る由もない。

 そしてそれに気づく前に、私は湧き出した怪物に頭からかぶりつかれた。

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