第17話 頭


 巨大な猩々が戻ってきたのを見て、私は激しい絶望感に襲われた。


 折角猩々たちが一斉にいなくなって脱出のチャンスだったのに、何もできないままそれを逃してしまった。


 もう食べられてしまうんだ。


 死ぬんだ。


 そう判ると、体が恐怖で震え、今にも泣きだしそうになった。


「・・・待ちなさい!」


 猩々が私を持ち上げ、食べようと大きく口を開けた時だった。


 『九尾の狐』のその大きな声が響いた。


 猩々は唸りながらその方向を見て、睨む。


 そこには肩で息をしている『九尾の狐』と『二口女』がいた。


「その娘を、放しなさい!」


 場違いにも、どこかのスーパーヒーローのような発言だなと思ってしまう。


 まぁ、この場合、私にとってのスーパーヒーローということに間違いはないのだが・・・


 猩々は私を皿の上に置くと、ノシノシと『九尾の狐』に近づいていく。


 やがて2人(?)の距離が1メートルも離れていないほど近づいたとき。


 猩々が咆哮をあげた。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「よし、サクラ、逃げるよ」


 刀を振るう『九尾の狐』と腕を振り上げる猩々をよそに、いつの間にか近くにいた『二口女』は言う。


 彼女は持っていた短刀で私の腕を縛る縄を切った。


「ほら、行くよ」


「え、でも、『九尾の狐』が・・・」


「あいつは大丈夫さ。放っていくよ」


 そうして私と『二口女』は、洞窟を脱出した。

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