第15話 男


「騒がしいな・・・」


 男は山を見上げると、ポツリと呟いた。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 後方から轟音を立てつつ、猩々たちが追いかけてくる。


 時々振り返りながら、『二口女』と『九尾の狐』は山中を逃げ回っていた。


「!ここに!」


 『九尾の狐』は猩々たちの死角にあった木に登る。


 『二口女』もそれに続く。


「・・・さて、どうしますか?」


 猩々たちを見下ろしつつ、『九尾の狐』は問う。


「どうしたもこうしたも・・・まず、こうして木の上にいる間にサクラが食べられることはないのかい?」


「大丈夫かと。先ほど、猩々たちの後方に、サクラを食べようとしていたやつを見つけましたので。あいつが大将とみていいでしょう」


「で?」


「そいつが食べるはずなので、こうして逃げ回っている間は食べられることはないですね」


「そうかい・・・」


 『二口女』はため息をつき、幹にもたれかかった。


「そう言えば、あんたは誰を呼んだんだい?あの少年に手紙まで持たせて」


「来れば判りますよ。多少荒っぽい奴ですが、根はいい奴なので」


「お前の俺に対する評価はそんなものか」


 突然、頭上から声が降ってくる。


「!うひゃあ!」


 それを受け、変な声をあげながら『二口女』が落下する。


「・・・やっと来ましたか」


「悪いなぁ。脅かすつもりはなかったが、落としてしまった。これで居場所がバレるだろ」


「判っているならしないでくださいよ・・・」


 仕方なく、2人は木から降りる。


 地上では、猩々たちが鼻息荒く、今にも襲い掛かろうとしていた。


 『二口女』は腰から落ちたらしく、そこを押さえて悶絶している。


「・・・5分で終わらせますよ」


「言わずもがな」


 『九尾の狐』は尻尾の1つから日本刀を取り出し、男は弓を構えた。


「で、結局あんたは誰!?」


 『二口女』のその叫び声を切り目に、乱闘が始まった。


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