第14話 猩々の住処


「失礼します。お手紙を持って参りました」


 少年は森を抜け、海へと少し歩いたところにある巨木に話しかけた。


「・・・そこに置いておけ。後で読んでおく」


 巨木から声が返る。


「しかし。急ぎですので」


「・・・誰からだ?」


「主様。『九尾の狐』からでございます」


「・・・待っていろ」


 暫くすると、巨木の後ろからゆらりと男が現れた。


「・・・寄越せ」


 男は少年から手紙を奪い取ると、


「整える。少し待て」


 言って、再び巨木に消える。


 すぐに出てくると、弓矢を担ぎながら、


「行くぞ。場所は何処だ?」


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「うわ・・・結構いるよ・・・」


 『二口女』は洞窟を覗き込んで言う。


「数百・・・数千と言ったところでしょうか・・・流石に多いですね」


 『九尾の狐』も苦々しい顔をする。


「これの全てと相手をするとなると・・・面倒ですね。であれば、奴の到着を待つほかないですね・・・」


「助けてー!」


 叫び声で見ると、今にもサクラが食べられそうになっている。


 巨大な猩々が朔良の服を摘み、大きく口を開けている。


「・・・なんて言っている暇ないですね!」


 『九尾の狐』は自身の尻尾の内の1つに手を突っ込むと、そこから先端を鋭く削られた枝を取り出し、猩々に向かい、思い切り投げた。


 投げられた枝は、奇麗な放物線を描いて飛んでいくと、猩々の指に突き刺さった。


「グオオオオオォォォォォ・・・!」


 巨大な猩々が声を上げ、『九尾の狐』の方を睨む。


「あぁ~・・・これは、ミスったかもですね・・・」


 朔良を置いて、ノシノシと近づいてくる巨大な猩々と、それを取り巻く小さい猩々。


 その両方を見やってこぼす。


「・・・自分であからさまな攻撃を加えてはいけないと言っておいて、なんて様なんだい?」


「いやぁ・・・反省してます」


 こうなればすることは1つ。


「逃げますよ!」


「結局!?」


 猩々たちが雄叫びを上げながら追いかけてきた。

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