第12話 『九尾の狐』


「主様!」


 背後からの声で『九尾の狐』は足を止めた。


「・・・サクラは?」


 振り返らずに、『九尾の狐』は返す。


「・・・申し訳ございません。突然巨大な影に襲われて、連れ去られてしまいました」


「そうか。特徴は?」


「見上げるほど巨大で、腕が異様に長く、力も相当なものでした」


「行き先」


「判りません。しかし、恐らくは上かと・・・」


「だろうね。私もそれには賛成だ」


 黙って聞いていた『二口女』が相槌を打つ。


「お前はどう考える?」


「・・・見当もつきません」


「違う」


 『九尾の狐』は一瞬にして少年との距離を詰め、目線を合わせると、


「お前の責任だ。どう責任を取るべきか聞いている」


「・・・私自身の手で、助けに」


「お前に何ができる?お前には、私の1割もの力すら与えていない」


 少年は悔しそうに俯き、唇を噛んだ。


「・・・仕方ない。他に方法もないし、私が」


「元はと言えば、あなたの余計な行動から始まったことですよね?しかも、これはあなたにどうにかできる問題なんですか?」


 言われ、『二口女』も俯く。


「・・・私が責任をもって助け出しますよ」


 『九尾の狐』は言った。

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