第5話 夜が明けて


 目を開けると、薄汚れた天井が目に飛び込んできた。


 小さく開けられた窓からは陽の光が細く入ってきている。


 布団の上で身を起こし、両手を上にあげて大きく伸びをしていると、


「あ、起きたかい。おはよう」


 先に起きていた『二口女』はにっこりと笑う。


 昨晩のことが嘘のようだ。


「よく眠れたかい?」


「あ、はい・・・お陰様で」


 実際は気絶したのだが。


 まぁ、言わないが。


 そうこうしている内に、布団から引き離され、無理矢理着替えさせられ、朝食。


 質素に、おにぎりと味噌汁だった。


 静かに頬張っていると、トントンと、戸が2度叩かれる。


「はいはいはいはいはいはいはいはい」


 数えきれないはいとともに『二口女』が迎えたのは、


「おはようございます。よく眠れましたか?」


 爽やかな笑みを浮かべた『九尾の狐』だった。


「おはようございます・・・まぁ、それなりによく寝れました」


 言って味噌汁を啜る。


「それで今日からどうします?」


 私と『二口女』、それから『九尾の狐』の3人で囲炉裏の3方向を囲むようにして座る。


「神界。その手筈を整えるよ。まずは取り敢えず、黄泉平坂だね」


「では、あそこを渡る必要がありますが・・・方法とかは考えてますか?」


「全く。今から考えるんじゃないか?」


 話が全く見えてこない。


「えっと、つまり・・・」


「つまり、サクラは気にせずついて来ればいいのさ。面倒なことは、こっちで考えるから」


 『二口女』は胸を張って見せる。


 『九尾の狐』は頼もしくないですね、と呟いた。

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