第46話 砂漠の動く山

みんなと合流し、ドルマを紹介した。

よく見ると鱗の隙間からマグマのような光を放つ姿に畏怖の念を抱く。


『ジン様ノ御仲間方、炎爆龍ドルマト申シマス。我々ノ王クリス様ヘノ御厚意感謝イタシマス。』


ユアンが近づきドルマに触れる。

「熱くない。クリスと同じ。」


『熱ハ抑エル事ガデキマス。御安心ヲ。』


エリーも近寄り撫でる。

「よろしくね、ドルマ。」


フラウはやはり敬意を持って見つめていた。


ヴァンフォート号へ戻りながら天啓さんに聞いてみたいことがあり呼びかけた。


[[天啓さん、刻印作成はどこまで可能なのかな?]]


[【刻印作成】につきましては物質系、魔法系、空間系、時間系と様々な理を操ることが可能とされています。作成には知識とイメージが必要です。]


なるほど、それならアレはできるかもしれないな。


「よし、「刻印作成」」


イメージは音、空間、画像、対象特定。


[成功です。【伝達魔法】の刻印を獲得しました。]


まあ、刻印のデザインはベタだけどスマホみたいなマークにした。よし、簡易的スマホが出来たぞ。これは革新的だ。


ボートからヴァンフォート号に乗り移り、ヒースさんたちにもドルマを紹介した。そして【伝達魔法】の説明だ。


「みんな、聞いてくれ。刻印作成で新しい魔法を作ったんだ。これがあればいつでも意思疎通ができる。まあ、実際にやってみるのがわかりやすいと思うけど、、、いいかな?」


「何それ?すごそうね?でも必要なのよね。」


「まあ、毎度のことだけど少し痛いよ。」


僕、エリー、ユアン、フラウと更にはヒースさんにも耳の後ろに刻印を施した。


ヒースさんは見かけによらずかなり痛がってたけど。


「よし、出来た。じゃあみんなはそこにいて。」


僕は船首にみんなを残し船尾まで走る。


船尾に着き【伝達魔法】を発動した。


[みんな、聞こえるかい?]


!!!


「すごい、聞こえる!」


ヒースさんは周りを見渡してる。

「これはジン様の声ですね、、。」


[最小の魔力で通話できるようにしてあるから、少し魔力を流して話してみてくれない?]


[あ、あー、エリーでーす。]


[そうそう、その調子だよ。じゃあ今度はその状態で手のひらを内側にして手をかざしてみて。]


みんなが手をかざす。するとそこにスマホ大の画面が現れ、僕の顔が映った。


「「「おぉ!!」」」


ユアンが画面にもう片方の手で触ろうとするがすり抜ける。

「すごい。」


[こうやってその場の状態を映して送ることもできるよ。]


この世界初のテレビ電話の完成だ。


この魔法を使えば、戦略にも幅が広がるだろう。そして早くクリスの仲間たちを解放しなければならない。


次の島、吹き荒ぶ島を目指す。


………………


ここは吹き荒ぶ島、風の砂漠。


砂漠に似つかわしくない山がひとつ。

しかしその山は移動している。


その動く山にはよく見ると何本ものツノのような突起がある。


彼はベヒーモス。

かつてはリヴァイアサンと対をなす獣の王と呼ばれた者。


その咆哮は大地を揺らし、ツノは空を割る。

サイと牛を合わせたような筋肉の塊。


到底生き物とは思えないサイズの彼は待っている。

リヴァイアサンを滅した者を。


………………


次の島までは、また数日はかかるという。移動中に空と海より魔物からの襲撃を何度も受けるが、フラウが修行としてほとんど退治してくれている。その横にはミニアスモデウスが付きっきりだ。

なかなか良いコンビじゃないか。


僕は刻印の研究に時間を使う。

魔導砲の原理を応用して「銃」の制作を試みていた。中でも狙撃が可能な物を作りたかった。


少し専門的になるが、固形の弾丸を真っ直ぐ飛ばすにはライフリングという螺旋を描く溝が銃身に加工されている。これにより弾丸は捻りの力が加わり回転しながら直進性を保って飛んでゆく。


魔導弾にもやはり回転の力を加えて直進性と貫通力を与えたいのだが、その仕組みに手間取っていた。


その時後ろから声がした。

「何か悩んでる。」


ユアンがあまりに部屋から出てこない僕を心配して様子を見に来たようだ。

そうか、、、ユアンに相談しよう!


「うーん、これならどうだ。」

ササッと描き出すユアン。


ユアンの描いた図案には銃身に風魔法の刻印が3つほどついているものだった。


ユアンは図を指差しながらいつもより流暢に説明した。

「この刻印は120度ずつずらして銃身の元、中、先に螺旋状になるよう銃身の内側へ配置する。刻印発動の向きも銃身に対して45度の角度だ。3段階で弾となる魔法に回転を加える。どうだ?」


プロだ。早いしすごい。さすが魔械師。


「ユアン、天才だな。」

感動した僕はユアンを尊敬の眼差しで見る。


「もっと褒めろ。」

胸を張るユアン。頼りになる仲間がいて良かった。


あとは魔力で倍率が変わるスコープを設計して、イメージを具現化するために頭の中で全てを構築する。


[[天啓さん、このイメージで刻印化は可能でしょうか?]]


[通常は材料や正確な図面が必要となります。しかしジン様の場合は創造者と祝福の契の補正が働くため可能です。刻印作成しますか?]


[[お願いします!]]


[作成します。……成功しました。【魔導狙撃銃】の刻印を獲得しました。]


よし!成功だ。


「ユアン、ありがとう!成功したよ!」


「ユアンにも欲しい。」


「いや元々ユアンのために作ったんだよ!」


「そうなのか?嬉しい。」


ユアンが作った携帯型魔導砲はいささか大きすぎるのが難点だった。ユアンの命中率には信用がおけるし、これで狙撃もできるはずだ。

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