第45話 創造者

なんという勢いだろう。

時空を切り裂く程の成長力。

いくら世界樹の種でもこの威力はおかしいくらいだ。魔法と魔力の相性があるのか?

樹海魔法も聖なる魔力で発動したら適合性が増して強くなる?


時間にして0.00001秒ほどだろうか。

【気付き】とはそのようなものだろう。

聖と魔の力を持つ。

堕天の使徒。

なんて多様な可能性だろう。




『お、おかえり、ボス。』


「ボロボロだな、アスモデウス。ありがとう、一旦戻って。」


『今頃出てきて呑気だなぁ、まあ、あと頼むわ。』

刻印に帰るアスモデウス。


マモンが目の前にゆっくりと近寄る。

『おやおや、契約不履行ですね。勝手に出てきて勝手な事を。』


「ルシファー、あのでかい奴、頼めるかな。」


『仰せのままに。任せてください。』

ゴブリンエンペラーへ向かうルシファー。

頭の中がやけにクリアになっていた。

魔力と聖なる魔力の大気中の流れすら見えるような感覚。

マモンの声など届かないほどに。



『貴方はバルマス様の前にお連れしなければならないのですよ。まあ、首だけでもいいですけ、、、、ど?』


僕の足元の世界樹の苗から真っ直ぐ伸びた枝がマモンの額を撃ち抜く。

その枝を導火線のように、聖なる魔力を流し込んだ。


『な、んだ、、この力、、は、、』


一気に流れた聖なる魔力を糧にマモンの内側から世界樹の枝が無数に伸び、マモンの魔力すらも吸収する。


「利息でこの地に墓標を立ててやる。」


大樹の一部となってマモンの魔力は消え失せた。


[警告。累積値として複数の魔王の殺害、消滅を確認しました。これにより【魔王戴冠】の権利を獲得しました。分類変更、【魔王】への変更を行います。………失敗しました。【使徒】の効果により実行不可能です。]


え、魔王だって?しかも失敗してるし。

どうやら【使徒】のおかげで助かったけど。


振り返るとルシファーも仕事を終わらせていた。


この灼熱の地に青々とした大樹が立つ、異様な光景で戦いは幕を閉じた。


………………


「みんな、すまなかった。怪我は無い?」


エリーが笑顔で近寄る。

「シルのおかげで大丈夫よ。」


「良かった。」

自然と抱き寄せていた。


「ちょ、ちょっと、、、」


ユアンが僕の肩を叩く。

「ジン、私たちも居る。」


ユアンの肩も抱き寄せ、頭を撫でる。

「ユアンも、フラウもありがとう。」


フラウにはミニモデウスがフラフラと出てきて何やら戦い方のダメ出しをしているようだ。


あいつもボロボロなんだから休んどけばいいのに。。。


ルシファーを召喚し、魔法珠の在処を聞く。


『あの先に見える火山の火口に洞窟があります。その最奥に炎爆龍の魔法珠があります。』


「よし、すぐに向かおう。」


険しい道になりそうなのもあり、クリス、僕、ルシファーで空を行くことにした。


エリーたちには魔導車を展開し、結界を張って待機してもらおう。


………………


火口へ、一直線に向かいすぐに洞窟の入り口に到着した。


中に入ると一層暑さを増した空気に、息をするのもつらい。


『ここですね、あれが炎爆龍の魔法珠です。』


「濃い魔力を感じるな。」


『邪神の種の時と工程はほぼ同じです。最後が聖なる魔力の注入に変わります。』


『ナカマノコエ、キコエル!』


「そうか。もうすぐだよ、クリス。」


『では始めます。』


また魔法陣が複数展開され、それぞれをルシファーが調整、操作して行く。

流石に封印した本人だけあってあっさりと解印が進む。

『主君、クリス様、お願いします。』


クリスの光魔法と共に聖なる魔力を注ぎ込む。


魔法珠に亀裂が入り、熱風と共に燃え盛る龍が咆哮を上げる。


グゥオオオオオオオオ!!!


大気が震え、周りのマグマが沸き立つ。


『光神龍クリスタ様、炎爆龍ドルマ、常闇ノ封印ヨリ、タダイマ戻リマシタ。』


『オカエリ、ドルマ。』


僕に向けて頭を下げる炎爆龍。

『アナタサマガ、ジン様デスネ。封印サレナガラモ、様子ハワカッテオリマス。我ガアルジヲ救ッテクダサリ、感謝シテオリマス。』


「こんなに遅くなってすまなかった。よろしく、ドルマ。」


そしてドルマはルシファーに向かい合う。

『ルシファー、オヌシノ行イノ、意味ト目的ヲ長イ間考エテイタ。仲間タチノ犠牲ハ双方ノコト。コノ場ニオイテ、和解トセヌカ?』


『寛大な心、感謝する。炎爆龍よ。』


ドルマに召喚契約を持ちかける。


『ジン様ハ使徒ニナラレタトノ事。更ニハ我ラノ王ノ親ニアタル方。我ラノ王ノ決断ニ従イマス。』


「ありがとう、ドルマ。」


契約を済ませ、炎爆龍の刻印をその場で彫る。

すぐに天啓さんの声が響く。


[【炎爆龍ドルマ】の刻印により【炎魔法】が【炎爆魔法】へと昇華いたします。これにより刻印の文様が更新されます。よろしいですか?]


刻印がランクアップされたのか?


[[はい、お願いします。]]


すると指先にある炎魔法の文様が手首まで伸び始め、手首を一周する炎のブレスレットの様な文様となった。


[また、追加要項として、称号【炎を宿す者】を獲得しました。これにより【炎爆刀】の刻印を獲得しました。熟練度を獲得しました。「刻印魔術Lv.10」「刻印理解度Lv.10」最大値に到達しました。要件を満たした為、2件の項目を統合、昇華し「創造者Lv.♾️」となりました。「刻印作成」に加算値が発生します。]


一気に情報が押し寄せたな。

【炎爆刀】?武器を生成できるのだろうか?


それに最近ではレベルの情報は聞き流してたから気が付かなかったけど、最大値まで上がったんだな。

【創造者Lv.♾️】ってなんだ?

前にギルド長が彫師を創造職って言ってたけど、このことだろうか?


とにかく一度みんなと合流しよう。


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