第二章
第41話 新しい旅立ち
王都のギルドは受付のカウンターも広く、ホールにはたくさんのテーブル、それを囲む様に飲食店やカフェの様な店まで並んでいる。まるでフードコートと役所が合わさった様な所だ。
但し、冒険者がウヨウヨいるので殺伐とした空気感もある。
エリーと一緒に行動していると彼女目当てに色々な冒険者から声をかけられる。
「お姉さん、冒険者?俺たちのパーティに入らない?」
「ごめんなさい、もうパーティに参加してるの。」
「そんなヒョロヒョロじゃ頼りないでしょ?」
ん?まあまあ、落ち着け、僕。
エリーが凛として答える。
「大丈夫よ、私たち弱くはないから。」
「そうなんだ、でも俺たち★3だよ?パーティも10人編成だし。この前もアントライオンを倒したんだぜ!」
「あら。凄いわねー。じゃあ先日の王都襲撃戦でも活躍したのでしょう?」
「あー、アレね。、、アレは大変だったよー。なぁ、みんな?」
うわー、目が泳いでるよ。
「へぇー、この人達、見かけた?ジン。」
「いや、こんな奴ら見てないね。」
「なんだと?おい、お前には話してねぇんだよ、なめてんのか?」
僕の襟を掴んで引き寄せるナンパ野郎。
その時、そいつの首に見覚えのある巨大な斧がピタリと添えられる。
「なんですか?コイツらは?」
持ち上げられたまま僕は手を振る。
「あ、フラウ、おかえりー。」
フラウが殺気立った目で問いかける。
「うちのリーダーに何か用でも?」
ナンパ野郎の取り巻きたちがざわついた。
(おい、フラウってあのフラウか?)
(「褐色の悪魔狩り」の?)
(ヤバいぞ、★4だろ?奴は。)
エリーがフラウに駆け寄った。
「うちのってことは登録済んだのね?」
「はい、里で完了しました。」
あれ、ナンパ野郎が白目だ。
「フラウ、とりあえず斧下げてあげて。もう戦意喪失してるから。」
「了解です、リーダー。」
「ユアンもご苦労様、おかえり。」
「おう、朝飯前だ。」
周りで見ていた他の冒険者達もざわつき始めた。
「あれが噂の【刻印の刃】か?」
「嘘だろ、フラウまで加入?」
「王家の紋章を下賜されたらしいぞ。」
「なんだか居心地が悪いし、場所変えて食事にしようか?」
僕らはその場を後にして、中心街のテラスがあるレストランへ。
「ここから更に東に行くと港町のヨースがあって、そこにはすでに王家からもらった船と船員が待機しているとのことらしい。船も国王軍の軍艦だと。」
「でも凄いわね、至れり尽せりって感じ。」
「まあ、船に関しては調達しなきゃって思ってたけど、軍艦だとは思わなかったよ。」
フラウが少し聞きにくそうに口を開いた。
「それよりもリーダーは人じゃ無くなったとエリーさんから聞きましたがどういう意味ですか?」
「あー、それね、、エリーの魂を元に戻したんだけど、その時に女神様しかやっちゃいけないことをやってたらしいんだよね。その結果、神ではないけど人でもないって位置付けにされちゃって。天界で、女神に。」
「なんですか、それ?」
「んー、なんか【使徒】って言ってたね。」
「使徒!?本当ですか?凄い事ですよ。」
「そんなに凄いのか?」
「エルフが長寿というのはご存知だと思いますが、その昔、エルフの里ができた頃、エルフの里の創始者と呼ばれる方が1万歳になった時に女神様から使徒への誘いがあったと聞いています。しかし悟りの境地に差し掛かっていた開祖は結局お断りをしたと。」
「おぉ、そうなのか。あ、でも僕は【堕天の使徒】らしいよ。初めてだってさ。」
「堕天の使徒??」
それを聞いてミニルシファーが出てきた
『私と同じとは嬉しいですね。』
「あ、ルシファー。なんだかお前たちのせいらしいぞ。でも半堕天らしいけどな。」
『それは申し訳ございません。しかし半堕天とはまた珍しい。』
フラウがミニルシファーに驚いている。
「彼はあの時の魔王ですか?」
「うん、召喚獣のくせにたまに勝手に出てくるんだよ。フラウと戦ったアスモデウスもたまに出てくるぞ。」
『呼んだか?ボス。』
「ほらな。」
フラウが急に跪いた。
「お久しぶりです、師匠!」
「「「『師匠???』」」」
「な、どういう事?フラウ?」
「いえ、私は勝手ながらアスモデウス様の強さに惚れました。アスモデウス様を師匠とし、弟子になるつもりです。」
『弟子だと?勝手な事言ってんじゃねぇよ!』
「なるほどね、いいじゃないか、アスモデウス、弟子にしてあげなよ。戦闘スタイルも似てるし。」
『マジかよ、勘弁してくれよボス。そいつ仮にも「悪魔狩り」を名乗ってたんだろ?おかしいだろ、それ。』
「いえ、今は一介の冒険者、【刻印の刃】の新入りです。お願いします!師匠!」
『おいおい、断れねえ空気出すなよ、、、。わかったょ。まあ、たまには手合わせしてやるよ。』
「よかったな、フラウ。」
なんだかんだでいい奴な気がしてきたよ、アスモデウス。
「それじゃ、新生刻印の刃、ヨースに向けて出発しようか!」
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