第40話 魂の絆
「ジン、私も貴方達のパーティへ加えてもらえないだろうか?」
「フラウにはエルフの里での仕事があるんじゃないか?」
「もともと私は単独で動いてきた。里の方には他の戦士たちもいる。問題はない。それに私が、ジンたちに恩を返したい。」
「わかった。でもまずは里に報告するんだ。議長たちも心配していた。僕たちはフラウが戻るまで王都にいるよ。ユアン、魔導車で同行頼めるか?」
「任せろ。」
「ありがとう。では少し待っていて欲しい。行ってくる。」
………………
ここは天界。
『ほう、早くも「魂魄干渉」を覚えたか。どんなものかと彼奴を見ておったが、桁外れのセンスじゃな。聖龍にも動きがありそうじゃし、あれも案外早いかもしれんのう。』
………………
急なことだった。
王城の一室を王に頼んで用意してもらえた。
エリーが明らかに苦しんでいるのだ。
ルシファーの話では魂の定着がない肉体は死へと向かうらしい。
中央の天蓋付きベッドにエリーを寝かせる。
エリーの横に座り左手を握る。時間がない。
「エリー、今行くよ。」
「魂魄干渉」
晴れ渡る空に僕は、、浮いている?
街並み、、。
あれは、、、立派な建物だな、、、
ヴィンセント商会、、、これは、、、エリーの、、過去の記憶?
庭に、ベンチ。
泣いている、。、あの子は、、青い髪に青い瞳。。
エリー?
どうしたんだ。泣かないで。
そして急に背景が変わる。
血。
一面が血の海。
その中を白いワンピースを着て裸足で歩くエリー。
目はうつろで、顔にも生気がない。
どこへ行くんだ?こっちだ。エリー!エリー!
僕は追いかける。転んでも立ち上がり、必死で追いかける。
エリーが止まる。ゆっくりと沈んでいくエリー。
だめだ、間に合え!
エリーが頭の先まで沈み、さっきまでエリーが立っていた血の海に波紋だけが残る。
僕はその波紋の中心に向かって飛び込んだ。
次の瞬間、エリーは真っ青な水の中へと沈んで行くのが見えた。
必死で泳いでエリーの手を、、、掴んだ。
とても深いところまで来てしまった。
すでに真っ暗な水中で、
エリーを抱き寄せ水面を仰ぐ。
一点の光の筋が僕らを照らした。
その光に吸い込まれるように上へ上へと浮上していく。
そして抱き合ったまま水面へと二人で登っていった。
……ン!……ジン!!…ジン!!
目を覚ますと僕を揺するエリーの顔が見えた。
「やあ、エリー、、おかえり。」
「ただいま、ありがとう、、ジン!」
僕らは何かが繋がった気がしてそっと唇を重ねた。
[称号「魂に触れるもの」を獲得しました。称号「命を繋ぐもの」を獲得しました。これにより「最高神の使徒」の権利を獲得しました。]
天啓さんの声を聞き終え、僕はまた意識を失った。
『お熱いとこ、悪いのう。』
「え、ん?、、え、嘘だろ?また?え、死んだ?!」
『残念、ハズレじゃ。まだ死んでおらんよ。』
「え、女神様?どうなってるんですか?」
『いや、お主、成長が早いのじゃ。まあ悪いことではないがのう。しかしこの世の理なんじゃが、命や魂に関わるスキルは基本的にはわしの専売特許での。その行為ができるものを人としておくわけにはいかんのじゃ。』
「、、、ついに化け物ですか?」
『残念、ハズレじゃ。お主は「使徒」になる。』
「しと?、、なんですか、それ。」
『まあ、神でもないが人でもないと言ったところかの。まあ、分類の話じゃの。今までと大して変わらんが空は飛べるぞ。イメージして念じてみろ。羽根が生えるじゃろ。』
言われた通り背中に羽根をイメージする。
バサッ
『そう来たか。まさかのう。これは笑える。』
確かに羽根だが片方は純白、もう片方は漆黒の羽根だ。
『いやいや、予想はしておったが、使徒になってすぐに堕天の証とは、、まあ、片方だからこれでは半堕天だがな。』
『堕天?堕天使のあの堕天?」
『ああ、そうじゃ。お主の中には悪魔が二人もおるからのう。そんな気はしておったわ。しかしながら初めてじゃ。その羽根で天界におった奴は。まあ、堕天の使徒とはお主らしい。呼び出してすまんかったの。楽しめたぞ。2度目の天界の門じゃ。いや?堕天かのう?」
笑う女神にまた下界へと落とされた。
………………
「ジン!?大丈夫?」
デジャヴか?こんな短時間に?
いやいや、女神の仕業だ。
「大丈夫だよ、エリー。ちょっと天界に行ってただけだから。」
「は?天界?死んだの?」
「いや、女神にも同じ質問したよ、僕も。」
「笑えないわよ、もう!心配したんだから!ていうか女神様と話せるの?」
「いや、一方的に呼び出しくらっただけ。あと本格的に人じゃ無くなったみたい。あと、飛べるようになった。」
「え?は?嘘でしょ?」
そのあとは説明とツッコミのやり取りで二人で笑いあった。
エリーが帰ってきてくれて本当に嬉しい。
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