第39話 魂の在処
メテオを全身に受け、穴だらけとなったベルフェゴール。
とどめを刺す為に近づくルシファーの前に、突然炎の渦巻きが火柱を上げ、フェニックスが舞い上がる。
そのままフェニックスがベルフェゴールに突っ込み、立ち上る炎と共にベルフェゴールが消えた。
『やはり逃げられましたね。』
ルシファーも片膝をつく。
一方でアスモデウスはそこそこに手を抜いていた。
(殺さずに引き付けておけって、難しい事いうなよな。)
戦闘になる直前にジンからそう言われていたのだ。
(あー、いっその事殺した方が楽なのに、、、アイツ、俺の力貸してるのにまだやってるのかよ。)
『私の身体、、あんなに相性がいい、私の、、許さないわ、許さない。』
リヴァイアサンは形を変え、大きな海蛇の姿へとなった。
魔法陣が展開され、大量の水と恐ろしい牙と爪を持つ形相のマーメイドたちが何匹も召喚された。
静かに立つ僕は怒りを超え、何の音も聞こえない無我の様な状態を冷静に迎えていた。
ただ一つ、全力で目の前の奴だけは許さないという気持ちだけで。
顔を上げ、一切の無駄のない動きで、迫り来るマーメイドを何体も切り伏せる。
それに怯えたのはリヴァイアサンだ。
(何だ、この感情は、、まさか恐怖?)
『グラビティ』
海蛇はとてつもない圧で地面にめり込む。
(グゥ、、、こっちにくるな、、やめろ、、)
声も出せずにゆっくりと歩み寄るジンに怯えるリヴァイアサン。
燃え盛るレイピアをリヴァイアサンに刺し、ジワジワと割いて行く。
声にならない悲鳴を上げながら、
重力の強さに身悶えることも叶わず、
永遠とも思える苦痛の中、
リヴァイアサンは息絶えた。
アスモデウスがその姿を横目で観る。
『おぉ、怖っ。やるねぇボス。』
フェニックスに乗り王都の上空へと逃げ仰せたズタボロのベルフェゴール。
『クソ、ルシファーめ、次は必ず仕留めてやるのだ。』
負け犬の戯言が終わるか終わらないかの瞬間、一筋の冷気の波が押し寄せフェニックス諸共、ベルフェゴールを凍り付かせた。
丘の上のスナイパーはその醜悪な悪魔を見逃さない。
ベルフェゴールの死の瞬間、洗脳が解け、フラウも気を失う。
『あー、やっと終わったぜー、ダル。』
アスモデウスは早々に刻印へ帰った。
『お見事です。君主。私も一度戻ります。』
ルシファーも刻印へ。
力が抜け、額のツノも粉々に消えた。
シルの元へ駆け寄りエリーの容体を聞く。
「シル、エリーは大丈夫なのか?」
『傷はほぼ問題ありません。しかし意識が戻らないのです。』
「そうか。とりあえず様子を見よう。」
僕はエリーを抱き抱え、ストーンゴーレムにはフラウを運んでもらい、魔導車に戻りユアンとも合流した。
………………
翌日、王都は大混乱になっていた。住人や衛兵、議員、その他いろんな人々100人以上が一晩で消えたのだ。まるで蒸発した様に。
ベルフェゴールの使い魔にすり替わっていた人々は奴の死と共に消滅したのだろう。
エリーとフラウが目覚めないため、シルを残し、僕たちはまず王に謁見をしてもらえるよう城に向かった。
王城内も混乱しており対応は待たされたが、★4ランクの祝福持ちということで何とか謁見を許された。
昨夜の出来事を細かく王に説明し、全ての顛末を伝えた。
王はひどく落ち込んでいた。
「それに気づくこともなく、ワシはこの国を終わらせてしまう所だったのだな。申し訳なかった。ジン グレゴールとその仲間たちに心から礼を申す。」
「ありがたきお言葉、感謝致します。」
そして僕らはその場にいないエリーを含む3人とも★5ランクへと王の権限で昇格。
更に身分証に王家の紋章を追加。
そして渡航許可だけでなく大型の船、国家直属の船員までもが与えられた。
一連の報告も済ませたし、疲れがどっと出た。とにかく一旦、魔導車に戻ろう。
………………
マモンは怒りに震えていた。どいつもコイツも役に立たない。
しかも裏切り者とニンゲンごときに魔王が2人もやられた。
バルマス様は今はまだ休眠状態の日が多い。
しかし数日後にはまた目覚め、お叱りを受けるだろう。
サタンはこちらのことなどお構いなしだろうし、ベルゼブブは誰とも組まないだろう。
ズーラに何か言われるのも癪に障る。
そろそろ自ら仕掛けるべきだろうか。
………………
フラウが目を覚ました。
「今回の件、本当に申し訳なかった。」
どうやら全てのことを覚えているらしい。体の自由のみが奪われていたようだ。
「あのアスモデウスという悪魔、本気で戦っていなかったですよね。」
「わかるのか?」
「はい、彼が本気でやっていたら、今の私は死んでいたでしょう。」
また勝手にミニモデウスが出てきた。
『バレてたんなら、俺もまだまだだなぁ。』
「勝手に出てきて偉そうだな、、、」
『いやいや、この姉ちゃんはもっと強くなるぜ。あの一戦で気づいたが、コイツこそ全力を出しきれてない気がしたんだよ。』
「そうなのか?フラウ。」
「操られていたのでいつもよりは動きに無駄があった気はしますが、、」
『ほらな、さすが俺だろ?』
「でもエリーはかなり強くなっていた様な気がしたけどな。」
するとミニルシファーまで出てきた。
『勝手に出てきて申し訳ございません。多分操作と憑依の差だと思われます。』
ルシファーまでデフォルメサイズで可愛らしくなってた。
「憑依か。なるほど、外から操るのか、内から動かすのかということだね。」
『エリーさんがまだ目を覚まさないのもそれが理由です。今、エリーさんの魂は強制的に席を奪われて帰るところを探している状態なのです。』
「どうすれば良い?どうやってエリーを目覚めさせることができるんだ?」
『魂への干渉。その力があればエリーさんを呼び戻すことが可能かと。』
どうやってその力を得られるんだろう。
[[天啓さん、魂への干渉をするには何が必要かわかりますか?]]
[現在の状況から検索致します。、、、、可能性の段階ですがよろしいですか。]
[[教えてください。]]
[エリー様の魂はエリー様の中に存在しているものと思われます。但し、固定すべき座標に無く、遊走中の状態です。その座標を指し示す為には光による誘導が効果的である可能性が大きく、精神干渉魔法、及び光魔法の融合、合成が必須要項だと判断致します。]
精神干渉魔法と光魔法。
光魔法はクリスの属性か。
精神干渉魔法は、、、
「アスモデウス!精神干渉魔法は?」
『俺の代名詞みたいなもんだぜー、それがどうしたんだ、ボス?』
「必要なんだ!教えてもらえないか?」
『教える、、ちょい待てよー、、ほら、これでどうだ?』
頭の中に刻印としてのイメージが入り込んできた。正確には刻印としてでは無くそのイメージや構築様式が刻印へと変換された感じだ。
いける。
「クリス、頼みがある。」
「キュ?」
そのあとクリスも「召喚契約」を結び彫り込んだ。その副次的なものとして光魔法を獲得。
あとは合成だ。
[[天啓さん、お願いします]]
[はい、「精神干渉魔法」「光魔法」の合成を開始します。成功しました。「魂魄干渉」を獲得しました。]
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