第37話 襲撃と誘拐
ガイアーノで過ごす事7日間。
クリスも街の子供達と仲良くなったようで今日が最後と聞いた街の子供達の中には泣く子もいたほどだ。
エリーは最高の剣。
ユアンは防具一式とたくさんの素材。
僕は硬化魔法と刻印作成スキル。
その他いろんな物を得ることができた。
「ありがとうございます。また必ず戻りますよ。」
レンチさんとゲンノウさんが見送りに来てくれた。
「いつでも寄ってくれたらいいよ。ゲンノウがここまで出てくるなんて滅多にないことだよ。よほど気に入ったんだろう。兄貴にも顔を出すよう伝えてくれ。」
ゲンノウさんは相変わらずだ。
「ジンくんは研究に欠かせないピースのひとつなんだ。必ず戻れよ!」
「はい、いろいろありがとうございました。」
僕たちは感謝しながらガイアーノを後にした。
ガイアーノを出る少し前にダークエルフ、フラウさんの話を衛兵から少し聞けた。
大きな戦斧を肩に担いだダークエルフを何日か前に見かけたと。ガイアーノには寄らずにそのまま王都に向けて進んで行ったようだ。
ここから王都へは魔導車であと2日はかかるらしい。
夜までかなりの距離を走ったが、そろそろ夜営の準備をしなくては。ちょうどいい開けた場所を見つけたのでここで一泊を決めた。
夕食を終え、明日の工程を話し合っていた時、ルシファーから警告の言葉が発せられた。
【主君、警戒してください!強い魔力を感じます!】
[!!!]
【上です!!】
ドガッッ!!
3人とも咄嗟に避けたがそこには刃の大きさが1メートル程はありそうな両刃の斧が地面を割っていた。そしてその斧を持つ褐色の肌のエルフが土煙の中から現れた。
明らかに正気ではない赤く光る目でこちらを睨む。
クリスが威嚇の姿勢で唸っている。
「クリス、下がって。この人は多分フラウさんだ。」
【主君、明らかに操られています。この魔力はベルフェゴールの物。高度洗脳術式と思われます。】
[もとに戻す方法は?]
【ある程度のダメージを与え、制圧、拘束しないことには難しいと思います。】
かなりの戦闘力だと肌でわかる。しかも操られている彼女をあまり傷つけることは避けたい。
どうする。
すると次の瞬間、戦斧を振りかぶったままこちらへ突進してくるフラウさん。速い!
『硬化!』
咄嗟に右腕を硬化させ斧を受ける。
とてつもない衝撃に吹き飛ばされる僕。
来る!
追撃に備えようと態勢を立て直すと、何故か真横に飛ぶフラウさん。
その先には、エリーが。
「エリー!避けて!」
剣を構えていたエリーに斬りかかると思いきや、懐に入り込み斧の柄でエリーの腹部へ一撃。予想外の攻撃に気を失うエリー。ユアンが短剣を片手に飛びかかるが斧で一閃。吹き飛ばされる。そのままエリーを肩に担ぎ闇に消えるフラウ。
「待て!、、エリー!!」
どういう事だ?なぜエリーが?
ユアンは?大丈夫か?
追うか?!だがユアンも心配だ。
【お待ちください。エリー殿の生命はまだ感知できています。今、私の従魔の梟を追尾させています。一度建て直しましょう。】
[すまない。ありがとう、ルシファー。]
「ユアン!大丈夫か?」
「う、、うん。、」
肩から出血している。
「シル!ユアンの手当てを!」
即座にユグドラシルを召喚。
『了解しました!』
クソ、油断していた。狙いは僕だと完全に思い込んでいた。しかしなぜエリーを?
だめだ。エリーを失いたくない。
大丈夫だ、落ち着け。絶対に救い出す。
………………
ルシファーの従魔、白梟の目が王都の中心を見つめる。
ここはフラウが幽閉されていた地下の一室。
しかし今回は磔にされているのは蒼髪の剣士、エリー ヴィンセントだ。
目の前には高そうなハイバックの椅子に足を組んで座るリヴァイアサンの姿が。
「う、うん、、。はっ!」
ガシャ、と目を覚ましたエリーが鎖の音を響かせる。
『おはよう、お嬢さん。』
「な、これは何?あなたは?誰よ!」
『そんなに興奮しないで、お楽しみはこれからなのよ。』
「解放しなさい!」
『してあげるわよ、私が「中」に入ったらね。あー、ゾクゾクしてきましたわ❤︎』
「!?」
立ち上がりエリーの頬へ手を添えるリヴァイアサン。そのまま身体を撫で回す。
「やめなさい!やめろ!」
『あはは、もっと、抵抗しなさい!良いわね、あなたの属性も私とピッタリよ。スタイルも申し分ないわ。あら、あの兄さんの事、好きなのね、あーわかるわ、あなたに触れれば触れるほど伝わってくるもの。』
リヴァイアサンの指先から触手のような魔力がエリーの体を絡め取っていく。
「うぁ、あぁ、や、やめて、、、」
リヴァイアサンの身体がゼリー状になった瞬間、エリーの身体へと染み込んでいく。
『あぁー、素晴らしいわ。最高よ、アナタ。』
「や、、、や、め、、、、、」
リヴァイアサンが完全に入り込んだ瞬間にエリーを繋いでいた鎖がガチャリと外れた。
………………
[梟は王都を指しているんだな。]
【はい、結界のため中までは追えなかったようです。】
[わかった。王都へ急ごう。]
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