第35話 女戦士フラウ
魔導車の性能が素晴らしいのは神匠の作品だからなんだな。バールさん、凄い人だとは思ってたけど「三神』なんて呼ばれてるとは。
でもバールさん、レンチさんは兄弟。もうひとりの「ゲンノウ」さんはどんな人なんだろう?
「バールさん、ゲンノウさんはどんな人なんですか?」
「ゲンノウですか?奴は、そうですな、一言で言えば変人。もしくは天才。ですかな。」
「変人で天才。凄そうですね。。」
「そういえば、、、ジン殿は彫師でしたな。是非アイツに会ってやってください。奴に一報入れておきます。ゲンノウは素材に魔力を混ぜ込む技術を研究していましての。お互いの為になるはずです。」
「なるほど、面白そうですね。」
エリーもユアンもガイアーノには興味があるようだ。
………………
三日後、エルフの里はまた温かく迎えてくれた。しかしすぐに議長に呼び出され、会議室へと赴いた。
「皆さん、お寄り頂きありがとうございます。」
「何かあったのですか?」
「はい、以前お話しした我が里の戦士の話なのです。その中で、今は少なくなったダークエルフの戦士がおりましての。人一倍この里のことを大切に思ってくれている者です。」
「ダークエルフの方がいたのですね。」
「はい、そのダークエルフの女戦士フラウが王都にいる同族から[王都に魔族が居る]との知らせを受けたらしいのです。」
「魔族?!」
「そしてまずは単身で調査に行くと言いだし、周りは止めたのですが、10日前から王都へ向かいました。あちらに到着したとの知らせまではきていたのですが、ここ数日で知らせが途絶えましての。こちらから精霊を使い呼びかけても反応がございません。」
「嫌な予感がしますね。」
「まあ、何かの潜入中なのかも知れませんし、皆様が向こうに着く頃には知らせもきているかも知れませんが、何かの際はお力を貸してはくれませんでしょうか?」
「もちろん、僕らで良ければ。」
「ありがとうございます。神樹のご加護がありますよう願っております。」
魔族が本当に居るのかはわからないけど確かに心配だろうな。僕たちも警戒しておこう。
「それでは僕たちは東に向かいます。ありがとうございました。」
「最近は魔物の数が増えていると聞きます。くれぐれもお気をつけて。」
………………
世界樹の森を抜けると草原が広がり、その先は荒地が続くという。
その荒地には所々にオアシスのような場所があり、そこに獣人族の村が点々とあるとのことだった。しかし最近はその村々をポイズンボアという大蛇の群れが襲うらしい。
魔導車が走る道はその荒地に近づいているのを告げるようにガタガタして来た。
大蛇ってだけでも少し苦手なのに、毒と群れって。。。
んー、アスモデウスあたりに頼もう。
【おい、めんどくせー事は俺にやらすのかよ。】
[うわ、聞こえてた?]
【当たり前だろ、お前の中に居るんだぞ。】
[いや、蛇は苦手でさ、、、]
【あんなニョロニョロしてるだけの奴らの何が怖いんだよ。ん、待てよ、でも蛇か。まさかとは思うがお姫さんが来てるのか?】
[お姫さん?]
【魔王リヴァイアサン、めんどくせー嫉妬姫だよ。アイツは元々は大昔の神獣だからな、同じ悪魔でも俺たちとは根本的に違うんだ。】
そういうものなのか?でも魔王を冠するやつの奇襲はあまり受けたくないし。
とにかく警戒あるのみか。
[ルシファー、その可能性はあるのか?]
【そうですね、蛇は全体的にやつの従魔です。あり得ると思います。探知しましたらすぐに伝えます。】
[了解、頼んだ。]
【リヴァイアサンの気配はまだしませんがポイズンボアは近づいてますね。数にしてざっと30。】
[アスモデウス!頼んだぞー。]
【しょうがねーなー。】
後部ハッチを開けアスモデウス召喚。
『オラオラ、かかって来いよ、ニョロニョロども!』
荒地を這う一匹20メートルはありそうな大蛇の群れ。鳥肌が立つ。
その太く大きな体躯を曲げながら魔導車に向けて口を開く。
次の瞬間、その口の中に黒い煙が現れアスモデウスの姿が。移動と同時にボアの口の上顎と下顎を掴み上下に引き裂く。
裂かれたポイズンボアがピクピクと崩れ落ちた。
『言っただろ、ただのニョロニョロだって。』
全てのポイズンボアが殺気立ち、一斉にアスモデウスに飛び掛かる。
煙の瞬間移動でヒラリヒラリと躱しながら次々と蛇の開きを作っていく。
魔導車の周りはユグドラシルに結界を張ってもらっていたがその結界に蛇の肉片や毒液が雨のように降り注ぐ。
見ているだけで吐きそうな光景だ。
近くの村の獣人も何事かと見に来ていた。
「あれは悪魔じゃないのか、、」
「魔人、魔王?」
ヤバい。騒ぎになりそうだな。
すかさず降りていって説明した。
「あれは僕の召喚獣ですので安全ですよー、、」
驚いた目で僕を見る獣人たち。
「あれが、、召喚獣??」
「はい、ああ見えて大丈夫な奴ですから。ハハッハハハ。。。」
するとひとりの獣人の子供が裾を引っ張る。
「じゃああの蛇もらっていいの?」
「ん、、いいけどどうするの?」
「食べるー!美味しいんだよ、あの蛇ー!」
マジか。食うのか、アレを。
静かになりアスモデウスが戻って来た。
『終わったぞー、もういいか?ボス。』
「あ、あぁ、ありがとうアスモデウス。」
アスモデウスが引っ込むと村人たちはナタのような刃物を持ちポイズンボアの開きを回収していた。
先程の子供が駆け寄る。
「ねえねえ、お兄さんも食べていくでしょ?」
「お、お兄さんはお腹いっぱいかなぁ、、大丈夫だよー。。」
エリーも向こうで他の子に言われてるけど、、、
うん、アレは断ってる顔だなぁ。
大蛇をこぞって解体している訳は日照りだからだそうだ。
どうやら水不足で作物も不作らしい。
ついでだからと、村に寄って井戸に水魔法の刻印を施した。
魔力のあるものが少し手をかざすだけで水が出るように調整して。
「おぉ、ありがたい。さすが天賦持ちのお方じゃ。助かります。」
村長に拝まれてしまった。
でも水は必要だもんな。
よし、ガイアーノへ向かおう。
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