第32話 太古の真実
現在から遠い昔、太古の時代。
龍族の王、何代も前の光神龍クリスタが炎爆龍、氷結龍、風刃龍、土鎧龍を従え、七大悪魔の率いる魔王軍との最終局面を迎えていた。
炎が渦巻き、氷の槍が降り、風の刃が舞い、岩盤の柱が突き上げる。一方で闇の力が猛威をふるい、圧倒的な悪意の塊が全てを蝕む攻撃。空が裂け、海は割れ、地は砕けた。
魔族の統率者、ルシファーは疑問に思っていた。
この争いに終焉はあるのか。何を得る事ができるのか。
龍を滅したところで次はヴァンツァール大陸?その先は?何が。
虚無。
どうすればこの無益な行為は終わる?
一強の先には何もない筈だ。
何をしても憎き「神」には届かない。何もない。この戦いも「神」の企みなのか。
種族を超えた共生の先にはまだ何かあるはず。
魔族をも気づかせず停戦に持ち込む。
一度、龍族を鎮めるにはこちら側に付けるしかない。
そして、懐柔と洗脳の行為が始まった。
五大龍の内、炎、氷、風、土の四体は魔宝珠への封印ができた。大半の龍族を魔核埋め込みにより邪龍へと。光の龍と残された僅かな龍族はヴァンツァール大陸への敗走を確認。
この先、調和を求めるものが必ず現れる。
今はこうするしかない。
その時まで。
…………………
『これが嘘偽りない私たちの過去です。』
ルシファーの話を聞いた。
エリー達が驚いていた。
「お伽話じゃなかったのね。そしてルシファーは調和を望んでいる?」
「どうやらそのようだね。」
『そこにおられるクリスさんのご先祖様と我々は争い、そのお仲間を封印してしまった。申し訳なく思います。しかしソドム群島にまだ彼らの魔宝珠があるのです。そしてその封印を私は解く事が可能です。さらにそのためにはジンさんやクリスさんが必要なのです。』
【俺はお前に騙されてたんだな、まあ、どうでもいいけど。】
「勝手に出てくるなよ。ミニアスモデウス。」
エリーがミニアスモデウスの首を子猫のように掴む。
「でもかわいいじゃない、ミニモデウス。」
【おい、誰がミニモデウスだ!放せ!】
ルシファーもマジマジと見る。
『本当に可愛らしくなりましたね、アスモデウス。』
【ヤメロ!】
「とにかく僕らはソドム群島に行くべきなんだな。」
『そうです。しかしいわば敵陣です。それなりの覚悟が必要です。』
「ルシファー、お前の力、詳しく教えてもらえないか?」
『もちろんです。主君。』
【うぇー。主君だってよ、、、】
「アスモデウス、頼みがある。」
【な、何だよ。】
僕はアスモデウスに向き合う。
「お前も召喚封印の契約を結べないか?」
ルシファーもアスモデウスの前に立つ。
『私もその案に賛成です。』
「お前の力も貸して欲しい。」
アスモデウスは後ろをむき、答える。
【まあ、どうしてもってんならいいけどな、、。眷族も俺の意思で召喚できるんだな?】
『はい、ただし契約上、反乱は起こせませんよ。』
【そんなことはしねえ、アイツらには何も伝えてなかったからな。説明の機会は有ってもいいだろうが。】
こいつも仲間意識とかあるんだよな。悪魔への先入観はよくないな。
「ありがとう、アスモデウス。さっそく契約更新だ。」
その時、クリスが何かを感じ共鳴したように言葉を発した。
『ナカマ、イキテル。』
「!!」
「そうだよ、クリス!助けに行こう。」
………………
ソドム群島のある島の火山。
紅く光る魔宝珠が静かに震えていた。
「我ラノ王。新シイ王ガ覚醒シタ。」
………………
『ハッハー!アスモデウス様の復活だぜ!』
召喚封印の契約をし、アスモデウスが初めての召喚を体験した。
『ジンよ、俺の眷族を紹介してやる、来い、我が眷族よ!』
目の前にあの黒い煙が立ち上り、中から2人の悪魔が現れた。
『お呼びでしょうか。アスモデウス様。』
とてもグラマラスな魅力ある女性の悪魔。こちらがサキュバスだろう。
『存在の感知が途絶えていましたが何かございましたか?』
まさに男前。モデルかと思うほどの完璧な容姿。こっちはインキュバスか。
『急に途絶えて悪かったな。色々あってコイツが俺のボスになった。わかったか?』
「もう少ししっかりと教えてやれよ、、、。」
インキュバスが顔を顰める。
『そちらの人間が?アスモデウス様のボスと?色々と納得し難いですが、アスモデウス様の御命令とあれば承知致しました。』
サキュバスは煙となって消えたかと思えばまた煙となって僕の真横へと現れ腰に手を回す。
『なかなかいい男ですわ。アスモデウス様、この方は味見しても良いのですか?』
慌てる僕を見てアスモデウスは呆れて言う。
『やめとけやめとけ、一応「ボス」だからな。』
後ろで見ていたエリーがぐいっと間に入る。
「アスモデウス!コイツ何とかしなさいよ!」
『妬くなよ、エリー。おい、サキュバス。やめてやれ。』
「や、妬いてない!」
『あら、またね〜ボス❤︎』
エリーはご立腹だ。
「ジンももう少し嫌がりなさいよ!」
なんだか賑やかになったなあ。
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