第31話 堕天
ゴブリンの討伐から数日が経った。
今、僕たちはとある山中に生活の拠点を置いている。
アスモデウスから聞いたマモンの話を警戒してのことだ。もし街中での襲撃が行われた場合、被害を受けるのは町の人達だ。
それは避けなければならない。
僕らは以前から考えていた移動式のコンテナハウスのようなものをアンドレ商会に頼んでいたのだ。そのマイホームができたので今は街の北側の山中に住んでいる。
この生活で役立つのは収納刻印だ。
野菜や果物、肉などを入れておくといつまでも劣化しない。時間の進行がないのだ。冷たいまま入れておけばいつまで冷たいし、以前入れた火焔石もずっと熱いまま。スープも冷めない。
素晴らしいよね。
移動式のコンテナハウスは魔導車に牽引もできるし、広さもそこそこある。快適だ。
「ジン、これ焼け。」
ユアンが今日の晩飯を獲ってきた。
「ウサギ。解体済み。」
「ありがとう、ユアン。」
そんな時、またアスモデウスから話しかけられた。
【小僧、客だ。マモンじゃないが。】
[何?誰だ。]
【俺の苦手なヤツ、ルシファーだ。】
[!?]
黒い結界のような膜が僕を覆う。外界とを遮断されたような感覚。
直後、地面から黒い天使の羽を備え、湾曲した角をはやした妖艶かつ美しい悪魔が現れた。
『はじめまして、ジンさん。傲慢の罪、堕天使ルシフェル、今は魔王ルシファーと申します。』
「くっ、何の用だ。」
『そう構えないでください。私はバルマスの手下ではございません。』
「なんだって?」
『今、貴方の「中」にアスモデウスがお邪魔して居るかと思いまして。彼共々、同盟をお願いしにきた次第です。』
【なんだと?同盟だ?】
[どう言うことだ、アスモデウス。]
【まあ、アイツがバルマス様の手下ではないってのは本当だがな。】
『聞こえているのでしょう?アスモデウス。その封印は貴方の力では破れない。最後まで奴の傘下に加わる事を拒んでいた貴方だからこそ持ちかけているのですよ。』
すると僕の首に彫られたアスモデウスの刻印からマンガの悪魔のようなミニアスモデウス?が飛び出した。
「うわ、何だこれ?」
【うるせえヤツだな、ルシファーよ。俺になんか用か?】
『おや、随分と可愛らしくなりましたね。貴方ならご協力願えるかと思っていたのですが?』
【おい、俺に何の徳があるんだよ。】
『マモンに追われているのではなくて?マモンに対抗するには私の力は不要かしら?』
話が読めないが勝手に進められても困る。
「ちょっとまて、お前はバルマスの敵なのか?」
『仲間ではございません。しかし奴の行いには賛同していない。つまり貴方達の味方になりうると思っております。』
どういう事だ?七大悪魔のひとりが同盟?
確証は無いが騙そうとしている気配は感じられない。
「話を聞こう。」
『ありがとうございます。まず私からの提案です。私の了承の上で私の召喚主になりませんか?尚且つそれを召喚封印の形としていただいても構いません。』
「なんだって?それこそお前に徳はないだろ?何を企んでいる?」
『とにかくバルマスの行いを阻止する事が私の望みです。奴の計画が進めば魔族以外の繁栄はなくなるのです。私はそれぞれの共栄を望んでいます。』
「僕らとの共闘でバルマスを止められるというのか?お前の力はそれほどと?」
『私の罪は「傲慢」。大天使の頃は明けの明星と呼ばれていました。その力は星をも動かし、重力すら操る。その傲慢さは神をも越えると。』
星?重力?確かに傲慢を名乗るだけある。
戦力としては申し分ないだろう。
[[天啓さん、召喚封印にデメリットはあるのだろうか?]]
[召喚封印の形を取ることは対象の承諾があれば可能です。この場合、通常は封印状態、呼び出しによる召喚で顕現する契約になります。召喚主は絶対的な存在になるのでデメリットはなきものと思われます。]
天啓さんの話では安全性に問題はないか。
「わかった。話を呑むよ、ルシファー。」
『聡明な返答、ありがたく思います。』
アスモデウスは落胆の声が漏れる。
【おいおい、マジかよ。ルシファーと共闘?ハァー、、、滅入るぜ。】
僕らを覆っていた結界が解ける。
突然消えた僕がまた突然現れて、エリー達が驚いていた。
そして事情を説明し、エリーとユアンにもルシファーを紹介した。
話を聞くとルシファーは元々天界での最高位の大天使であったこと。神に背き堕天されたこと。どうやらその神さまは僕が会ったことがある女神様だった事。そして全ての種族の共存を望んでいる事。堕天され悪魔に成り果てたとはいえ、まだ天使に似た感情は持ち合わせている事。
「それじゃ、始めるよ。」
『お願いします。』
「召喚封印刻印化」
ルシファーが戦力として加わった。
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