第29話 アスモデウス

「誰だ、お前、、、」


『我が名はアスモデウス。バルマス様に忠誠を誓う者だ。』


「な、、バルマスだと!」


こいつはヤバい。なにかが違う。

[[天啓さん!アスモデウスとは?]]


[魔族の七人の王の1人です。罪の名は色欲。攻撃力はさることながら、狡猾で幻惑を使います。眷族はサキュバス、インキュバスです。非常に危険な悪魔の1人です。]


でしょうね、なんとなく聞いたことのある名前ですよ。


『マモンからこれだけの数のゴブリンを借りてきたのに、あっけなく片付けてくれたなあ。これなら我が眷族を差し向けた方がマシだったか?』


「なんのために来たんだ?」


『害虫駆除、かな。』


そう言って一瞬で僕の目の前まで移動し、右手で僕の腹を貫いた。


「!!、、ぐふっ、、、」


その瞬間エリーが奴へ飛びかかり剣を振るう!

「ジンから離れろ!!!」


ガキン!!


アスモデウスは避けもせずエリーの剣はあっけなく砕けた。


「!!嘘でしょ、、、?」


『小蝿もいるのか?』

僕から抜き取った手で振り払われたエリーが吹き飛ぶ。


意識が遠のきそうだ。

「エ、、リー、、、、」

ユアンが僕の方へ駆け寄る。


その時、天啓さんの声が頭に響く。

[生命維持のため超回復を発動します。]

体の隅々まで生命力に満たされる感覚。


消えかけた意識が爆発的に蘇った。左手に魔力を込める。

「シル!!エリーの回復を!!」

「かしこまりました!」

ユグドラシルを召喚し、エリーの元へ。


『ほう、面白い。』


「挨拶にしては乱暴だな!」


樹海魔法発動。


アスモデウスの周りから高速で大樹の槍が何本も襲いかかり、一瞬で木の塊が奴を封じ込める。


ユアンにクリスを預け、下がらせる。

「ユアン、クリスを頼む!」

「わかった。」


ミシ、ミシミシッ……


大樹の牢獄が軋む音が聞こえる。


『面白い、面白いぞ!』


メキメキっという音と共に真っ黒な手が牢獄を引き裂いて現れる。まるで紙でも破るように。


そう簡単にはいかないか。

考えろ。今の手札で何ができる。誰かを失うことは絶対にしたくない。彫師、、、刻印、、、魔法、、、封印?

[[天啓さん!アスモデウスを刻印として封印するにはどうすればいい??]]


[相手の了承なく刻印化する場合、拘束が必要となります。また、ジン様のレベルに合わせたキャパシティの問題も発生します。更にジン様のリストに入れることなく表皮へ強制的に掘り込むことになり、施術後の副作用も考えられます。大変危険な行為です。]


[[不可能ではないんだね。]]


[おすすめはできません。]


それでも今はそれしかないか。

とにかくアスモデウスを拘束するためのスキを作る。


来る。


大樹の牢獄をバキバキと出てきたアスモデウス。首をコキリと鳴らすと手を前に突き出した。手のひらから波動のような黒い衝撃波を連続で撃ち出す。


瞬時にゴーレムを作り、盾にする。

一撃で崩れ落ちるストーンゴーレム。

何体も何体も出しては崩れ落ちるゴーレム。

防げない波動は躱しながらゴーレムで防御。


ヤバい、ジリ貧じゃないか?

そしてゴーレムが崩れたすぐ後ろにアスモデウスの姿があった。

これはダメだ。躱せない。



「キューン!!」

え、クリス?!後方にいたクリスから光の矢がアスモデウスに向けて放たれた!


「グォッ!!」

アスモデウスの左目を貫く光の矢。


今しかない。高密度、高強度の樹海魔法を練り上げワイヤーのようにアスモデウスを拘束。奴の顔を両手で挟み、叫ぶ。

「強制刻印化!!!」

アスモデウスの体が光に包まれる。

『なん、、だ、と、、ゥグァァァ!!』


その光が一点に集まり僕の首にアスモデウスの刻印を焼き付けた。

熱く、激しい痛みが襲う。

そのまま僕は気を失った。


[未登録の「アスモデウス」の強制刻印化、及び強制施術に成功しました。効果、副作用を現在分析中です。]


………………………


『やってくれたな。小僧。こうなっちゃなにもできんな。』


(これは、僕の中?)


『そうだろうな。よく俺を閉じ込めたものだ。』


(こうするしか思い浮かばなかった。)


『俺を取り込むってことはお前の体も心も共に侵されていくぞ。』


(どうなるんだ?)


『聞きたいか?俺の罪名は「色欲」、お前に起こることは性衝動の暴走だな。せいぜい頑張れよ。』


(ウソだろ、、、それは、ちょっと、、)


『だがな小僧、貴様には俺の眷族を使うことを許そう。』


(眷族って、サキュバス、インキュバスだろ?)


『まあそうなるな。とにかく今回は俺の負けだろう。しくじったわ。俺の性衝動は突然襲うからな。せいぜい気を張っておけよ。』


……………


目を覚ますと目の前に小高い丘がふたつ。

エリーの、、、胸?これ、膝枕、、?あの衝動が、、、!

今は、、マズイ。右手が勝手に、、胸に吸い込まれる、、、!

左手で必死に右手を押さえた。

その時、いつのまにか額から生えていた紅いツノが消えた。


「あ、目を覚ました!大丈夫?ツノが生えて気を失ったのよ。あ、ツノが消えてる。」


「あ、ありがとうエリー。」


「今、ジン、エリーのムネ、、、むぐぐー」

ユアンが余計なことを言おうとしていたので口を塞いだ。


良かった。エリーにはわかってないようだ、、、

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