第27話 ソドム群島と龍の親

舞台は変わりここはあるダンジョン最下層。


「そろそろ世界樹が朽ち果てて、行き場を失った魔力が溢れている頃か?」

禍々しい玉座から声を掛けるバルマス。


玉座の横で黒いローブに腰の曲がった老人が答える。


「そのような報告はまだ入っておりません。」


「あのトカゲめ、まだ闇に飲み込まれてないのか。」


「しかしバルマス様の魔力をそのまま込めた魔核を撃ち込まれてそこまで足掻けるものでしょうか?」


「確かに時間がかかり過ぎているな。」


その時、玉座の間の床から黒い煙が吹き上がり中から更に黒い身体と紅い角を持つ魔人が現れた。


「どうした、アスモデウス。」


「バルマス様、どうやらワイトキングを灰にしたものの情報がわかりました。」


「ほう。」


「そのネズミ、『彫師』のようです。今回の世界樹の件もそいつによって失敗した模様です。」


「『彫師』と?これは面白い報告だな。」


「私めに駆除させていただけますか?」


「許そう。」


「御意。」


そしてまた煙の中へと姿を消したアスモデウス。


「彫師とはな。これも何かの縁か。」


………………




ゆっくりと走る魔導車の中で卵を抱える僕。


「エリー、そろそろ代わってくれない?」


「わかったわよ、ゆっくり渡しなさいよ。」


「ありがとう。じゃいくよ、よっと、、」


「ちょ、近、どこ触ってんのよ!」


「いや、わざとじゃ、、しょうがないだろ?」


「うるさい、運転の邪魔。」

ユアンに怒られた。


やっと山脈の峠を越えたところで、さすがに手が痺れてきたのでエリーに卵を渡した。


「ホントにとんでもないものを頼まれたわね。聖龍なんてお伽話でしか知らないわよ。」


「そうなのか?」


「そうね。その昔、この世界に大陸が二つ存在していたの。一つの大陸は人族のいない土地だったらしいわ。その大陸には魔族と龍族しかいなかったって。龍族と魔族は争っていて、おとぎ話では龍族の中で魔族に操られたり、寝返ったりする者たちがでたの。それを邪龍と呼んだそうよ。

人族やエルフ族や獣人族、ドワーフなどが暮らすこちらの大陸に僅かながら退避して来たのが今の聖龍らしいわ。」


「それじゃあ、もともとの数も少ないんだね。」


「そう聞いているわ。」


「今でももう一つの大陸には魔族たちが?」


「実は今、その大陸は無いの。その大陸は魔族と龍族の戦争の際に幾つにも割れたと言われていて、たくさんの島になったの。現在はソドム群島と呼ばれているわ。」


「大陸が割れて?!ん?そういえば議長のしてくれたベックさんの話にも確かソドム群島って出てきてたな。」


「そうなの?まあ、それはそうと大陸が割れるほどの争いだったってことよね。。。はい、交代。」

と卵を渡してくるエリー。


「え、もう交代?!」


………………


帰り道は速度を出せなかったので4日もかかってしまった。

結局ほとんどの行程で僕が卵を抱えていたけど。


「やっと着いたー!」

衛兵さんたちの敬礼がはっきりと見え始めた。


「おかえりなさい、みなさん。」


「警備ご苦労様です。ただいま戻りました。」


今夜は久々のマイグラトリーバードだ。


「あら、おかえりなさい、ジン、エリー、ユアン!」


「ただいま戻りました。」


エリーもユアンも疲れただろう。ギルドへはまた明日だなぁ。


「とりあえず、今日は休もうか?」


「そうしましょう。ふぁー、眠い。」


「ユアンも寝る。。。」


「じゃあ、また明日〜。」


さすがに疲れた。

部屋に入ってまずはベッドに卵を置く。


お風呂に入ろう、、、


カタカタカタカタ、コロン。


ん、卵、動いてる!!??



ピシっ!


あ、嘘でしょ?孵る?!


パキ、パキパキッ!


「キューン」


鳴き声と共に青白いドラゴンが産まれた。


「マジか、、、すげぇ。ホントにドラゴンだ。」


神聖な命を目の当たりにした感覚。

吸い込まれそうな瞳。

確かに尊い。


すぐにふらふらと飛び上がると僕の胸に飛び込んできた。


「キューン、キューン」


おいおい、、、可愛すぎるだろ。こいつ。


本当に聖龍クリスタの子なんだよな。

とにかく無事に産まれてくれて良かった。

クリスタ、しっかり産まれたよ。


顔にスリスリしてくる。

たまらん。


「かわいいなー!よし、お前は「クリス」!今日からクリスだ!」


「キューン!」


気に入ってくれたようだ。多分。


そして天啓さんの声が響く。

[称号「ドラゴンナーチャー」を獲得しました。]


ドラゴンナーチャー? 龍を育てる者ってことか?


[[天啓さん、聖龍クリスタの属性とかってあるのかな?]]


[「聖龍クリスタ」…属性 「光」⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

  龍族の中でも1種1属の希少種です。成長と共に他の龍族を眷族として従える傾向にあります。聖龍クリスタ「クリス」の現在の状態はジン様を「親」と認識しています。]


眷族?親?マジですか。


、、、まあ、、とりあえずお風呂入るか、、、


「クリス、お風呂入るぞー。」


「キューン!」


………………


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