第26話 世界樹のタネ

「樹海魔法。この里で生まれた物ですか?」


「はい、正しくはベック様が生み出したと聞いています。ベック様はまだ人族との交易が確約されていない頃からよくして頂いてました。そして世界樹の管理などの際にもお力を借りていたのです。そしてある時、ベック様から世界樹の種を分けて欲しいとの要望がありました。」


「タネを?」


「ベック様はその種を調べ、研究し、この刻印を手に入れたと申しておりました。」


まじまじと刻印を見るとどうやら土魔法ベースの刻印のようだ。世界樹の種と土魔法の合成だろうか?ということは特別な物質と魔法も合成可能なのか?試してみる価値はある。


「すみません、僕にも世界樹の種を分けていただけませんか?」


「ええ、もともと少ないので、数粒程度で宜しければお譲り致しますよ。」


「ありがとうございます。」


ともかく「樹海魔法」。

[[天啓さん、こういうものでも取り込むことは可能かな?]]


[はい、刻印として成立している文様はリストへと加えることができます。登録しますか?]


[[お願いします]]



ひとつ面白そうなことを思いついていた。


土傀儡魔法と世界樹の種の合成だ。

パペット的なことができそうな気がする。


その前に、まずは樹海魔法をその場で彫り込む。

宴の場を少し離れた広場で樹海魔法を試す。


小規模の発動調整をしてみた。発動した瞬間に地面から勢いよく背丈ほどの木が生えた。

イメージの仕方次第で自在に形作ることができる。コレは魔力量の調整で攻防どちらにも使えそうだ。


そして刻印合成だ。

[[天啓さん、土傀儡魔法と世界樹の種を合成]]


[「土傀儡魔法」「世界樹の種」、合成開始します。…………成功です。召喚魔法「ユグドラシル」の刻印を入手しました。これに伴い、召喚魔法の使用と刻印作成が可能になりました。「神樹の加護」を獲得しました。]


え、召喚??マジで?予想と違っていた。。。そして「神樹の加護」?


土傀儡から、木傀儡へと変わるものかと思っていたが世界樹の威力なのか。。あ、パペットは土傀儡と樹海魔法で可能だったか?

世界樹はやはり種まで凄いな。

これもすぐに彫り込もう。


左手の甲にユグドラシルの文様を掘り込む。

まさに世界樹の形の文様で上部は幹と葉、下部は広がる根を表している。


そして発動。


緑色の魔法陣が現れ、その魔法陣から髪の長い可愛らしい少女が現れた。

「あなたがご主人様ですか?」


「あ、あぁ、そうなるかな?」


「はじめましてご主人様、世界樹の精であり、世界樹の分身、ユグドラシルと申します。宜しくお願いします。」


「ご主人様はちょっと、、ジンでいいよ、、よろしく。ユグドラシル、、んー、長いからシルでも良いかな?」


「分かりました、ジン様。シルとお呼びください。」


そのまま少しシルと話してから、エリー、ユアン、議長にシルを召喚した事を説明し、紹介した。


一番のリアクションはやはり議長だった。


「な、な、ユグドラシル様、、、これは現実でしょうか、、!」


「おお、これはエストクス殿。いつも我が母体の管理、ありがたく思います。」


「私の名を、、ありがたきことこの上ございません。ユグドラシル様にお会いできるとは。」


「こちらこそ感謝しております。」


「ユグドラシル様、僭越ながら此度の功労者、ジン様に是非とも神樹のご加護を。」


「もちろんです、ジン様は私の召喚者。我があるじ、ご主人様なのですから。」


「なんと、左様でございますか!それではこれからはジン様の石像もご用意して我が里をあげてジン様も御神体として、、、」


「議長!やめてください!……あ、シル、それと「神樹の加護」とはなんなんだ?」


「神樹の加護があると負傷の際、回復がある程度まで継続的に行われるのですが、ジン様は祝福の契があるようなので傷を負うたびに体力が高速で超回復します。」


なんだって?!凄すぎる。


エリーも引いている。

「それって、、すごい事じゃない??召喚も驚いてるけど。」


「ジン、バケモノ。召喚もできる生きてるアンデッド。」とユアン。


ひどくない?確かにバケモノじみてるけど。


そしてその後、議長からベックさんの訪れたであろう土地の情報をいくつか教えていただいた。


………………



「議長、本当にありがとうございました!」


「ジン様こそ本当に助かりました。是非またお越しください。聖龍クリスタさまのお子様もよろしくお願いします。先ほど話したベック様の軌跡を辿ってみるのも参考になるやもしれません。あちらのギルドにもよろしくお伝えください。」


「お任せください。」


ユアンが魔導車を起動させる。

「ジン、出発。」


「了解、卵があるし慎重にたのむ。」


僕らはゆっくりとエルフの里を後にした。

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